第37話 『聖女』を受け入れられない理由
「
「……成る程ね。君の言う通り、評価にも
「はい。もし功績が正当に他者から評価されないのなら、その組織は
生前の俺が生きた動乱の時代なんて、まさにそうであった。
これまでの腐敗を洗い流すように、組織を根本から変革する時代だったからねぇ。
「
それに関しては、俺も同じように思う部分があった。
聖女と言うのがどれ程に尊く凄いのかは、正直言って分からない。
政治利用されるのは痛ましいが……。
テレジア殿の治癒魔法の腕前、魔力量、
どれを取っても、あの場に居た救護兵の中で飛び抜けていたのは事実だと思うから。
「ほ、本当は私に死者の蘇生なんて出来ませんので……。正当な自己評価かと思っています。それに……聖女様がいるから
成る程、死者蘇生の奇跡を成すのが聖女の条件だとして……彼女がいるなら死んでも平気。
そう皆に思われるのは、厳しいだろう。
俺に関しては――生前の魂が別世界から誘い込まれたようなものだろうから、聖女の条件としては別口だと思うしね。
「テレジア殿の仰る通りですな。テレジア殿は、まだ若い。段階を踏まず過剰な役割で若者を潰すのは、許せませんよ」
「ルーカスさん。改めて、ありがとうございます。……ルーカスさんの言葉がなければ私は、重圧から治癒魔法を過剰に使用して
本当に有り得そうだから、怖い。
己の魔力保有量を超えても治癒魔法を使い、テレジア殿自身が死にかねない。
それ程に、テレジア殿は献身的な人物だとこの短期間で察するものがある。
「まぁ……おっちゃんに対等に接してくれる、その深き慈愛の心。間違いなく――俺にとっての聖女様ではありますがね? はははっ!」
「も、もう! またおっちゃんなどと自称して、私を
うん!
やはり白銀に輝く良い笑顔だ!
この笑顔を護る為にも刃を磨き、心身を強靱に出来るよう俺も励まないとな!
いざという時に大切なものを護る為に武を振るう――武士道を生きる、サムライとして。
そして――若者の笑顔を護るべき、おっちゃんとしてな!
「テレジア、良い笑顔だ。帰って来て聖女としてゲルティ侯爵に
「――お父様!? い、いじめないでください!」
「はははっ! 仲の良い家族の
「ルーカスさんも
困ったように笑うテレジア殿は、とても楽しそうだった。
いかんね。
酒によったおっちゃんのテンションに、若者を困惑させては。
酒に飲まれないように、ちょっとだけ真面目な話をしようか。
全員が一緒に考え、発言が出来るような話題を――。
―――――――――――
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