零細企業の会社ロゴ、絵を飛び出して異世界謳歌!
ぽろん
第1話 リュウ
『よし、出来たぞ!このロゴかっこいいだろ!この龍の様に、会社も業績が鰻上りしていく様にと願いを込めたんだ。』
そう言って、僕は作られた。
名前は特に無いが皆んなリュウと呼ぶ。
この零細企業は中華系の飲食店を経営している。
三店舗ほど飲食店を運営しており、地元では少し知名度もあるらしい。
しかし、僕には一つだけ物申したい事がある。
僕の絵が書いてある看板、もう少し綺麗にはならないだろうか?
確かに僕は描かれて30年くらいは経つよ。
看板はそのくらいが一番味が出て良いのかもしれないが、リュウって威厳のある生き物だと聞いた事があるから、消えかけのリュウはカッコ悪いと思うんだ。
だけと、僕はあくまで描かれた絵。
人間にそれを伝える事も出来ないし、動く事も出来ない。
唯一あるとしたら、物には魂が宿るという。
現に僕はこうして、物だけど思考を持っている。もしかしたら並の人間より頭がいいのでは無いかと思う。
そんなことをぼんやり考えていると、
なにやら天気が悪くなって来た。
ゴロゴロ...
雷が鳴っている。
雨も降るのかな。僕は濡れるのが凄く嫌なのに。とリュウは凹む。
まあ、いつもの様に時が過ぎるのを待てば自ずと止むだろう...とリュウは眠りに着こうとしていた。
すると...
“ガッシャーーーン!!!!!!!”
リュウの看板に雷が落ちてしまったのだ。
熱い、熱いよ...誰か助けて。
雷の衝撃で看板は黒焦げになってしまった。
リュウは僕もここまでか...と気を失うのであった。
ん...
リュウは何故か目覚めた。
あれ?僕は雷で黒焦げになって、もう物としては存在しないはず...
なんでこうして物事を思考出来ているのだろうか。
リュウは自分の置かれた状況がイマイチ理解出来なかった。
あれ?
なんか僕、体があるのか...?
感じたことの無い感覚がする...と試しに体を動かしてみると、なんと立体的な体になっていた。
リュウなので長い胴体があり、見た目も綺麗なエメラルド色だ。
そして何より口も動くようになって、話せる様にもなった。
『僕、話せる様になってる!体もちゃんとある!凄い、凄いよ!!』
リュウは感動していた。
今まで動けなかったもどかしさや悔しさが全て解消されていく。
『でも、僕はどこにいるんだろう?誰か事情がわかる人は居ないかな...?』
リュウは辺りを見回すが誰も居ない。
『なんか凄い岩がいっぱいあるところだなぁ?ここでは人は流石に居ないか?』
リュウはこの30年間で、多くの人間がいろんな事を話している様子は聞こえて来たので、意外と物事の知識はあるのだ。
『ここって、所謂崖ってやつかな...?
そしたらかなり危ない場所じゃないか?』
リュウは気づいた。
自分が崖の上にいる事に。
そして、そんなリュウにある影が迫っていた。
続く
零細企業の会社ロゴ、絵を飛び出して異世界謳歌! ぽろん @091121
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