第9話 事務所にて

「んで?」

「んで、ってお前、本当に大変だったんだよ。あの後も憲兵隊に絞られてさ」

「まあよかったじゃねえか、無事に無罪放免でさ」

「あのな、ハルキ。いつも言ってるだろ、ちゃんとまじめにやってれば見てる人は見てるんだよ」

「誰の話してんだよ」

「誰のってお前、俺の話に決まってるだろ。ちゃんとまじめに働いて、な」

「ちゃんとまじめに働いてる奴は憲兵隊に捕まるようなことにならねえよ」

「なっ?! おっまえほんとひどいな」

 イレイサー事務所では、釈放されたツノダとハルキが話している。


「で、結局何だったの? あの事件」

「あんたほんとにいい加減だな。ツノダさんが見た女はナツメが見せた幻影だよ」

「幻影? え? ナツメ? ナツメってあのナツメ? んなバカなあ。だってナツメはあん時死んだはずじゃあ」

「ああ。だけどありゃあナツメだった。ナツメだったんだよ、ツノダさん」

「いや、でも。って、お前、それニッタは?」

「言えるわけねえだろ」

「だよなあ。んじゃあやっぱカタデリーの奴らの仕業だったって事か。しっかしひどいことするなあ。ん? でもさ、またねって言ったってことはニッタの前にも現れるかもなんじゃ?」

「ああ。そうだな」

「ああそうだなってお前、どうすんだよ?」


「どうしようもねえだろ。出てきたらイレイスする」


「まあ、それは確かになあ」


 そこにニッタが荷物を両手に抱えて事務所に戻ってくる。

「ハルキさーん、買ってきたっすよ、最近流行りのアレ!」

「なんだよ、アレって。頼んでねえぞ?」

「こないだ下のおばちゃんが言ってたんすよ、アレが流行ってるって!」

「だから何なんだよ、アレ」

「まあまあ食べてみたらわかるっすよ。あ、そういえば、なんか旧神聖国のアルマムってとこに変な噂があるらしいっすよ」

「ん? やめろ、聞きたくない」

「えー、ハルキさん聞いてくださいよお」

「お前が噂してると、ろくなことにならねんだよ。んじゃあな」

 ニッタから紙袋を受け取るとハルキは一人、出ていった。


(完)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

イレイサー:File10_プロデューサーの危機:指令があれば「憑きモノ」を「ないモノ」に消します。 UD @UdAsato

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ