ep6「配信デビューは、修羅の如き無双と共に *ラヴィ視点」

 徹夜作業で、走馬灯を見たのは随分久しぶりだった。

 けれど、それだけ頑張る価値が、彼女にはある。


「奏さん、配信開始まであと10分ですが、

 準備は大丈夫ですか?」


「もちろん、抜かりはないです」


 彼女からの返事にサムズアップをして

 私は、自分のSNSアカウントを確認する。


 昨日、奏さんとのコラボ配信が決まった時点で、

 私は即刻、インターネット上で宣伝を開始した。


 1人でも多くの人に配信に来てもらうために、

 昨日は、人が集まりやすい深夜に雑談配信をして、

 視聴者からの、彼女についての質問に答えつつ、


 公開する情報を小出しにすることで、

 視聴者の期待が最高の状態になる様に誘導したり。


 他にも、配信用のサムネイルに力を入れて、

 配信の宣伝用に、短いCM動画も作って投稿した。


 そんな努力デスマーチのお陰で、SNS上では、

 奏さんに関するワードがトレンド上位を独占し、

 多くの人たちが、配信の始まる時を、

 今か今かと待ちわびている。


「さすがに、ちょっと緊張してきたかも……」

「それは困ります。この配信に、

 私の夢がかかっているんですから」


 そうだ、それは間違いない。


 今日のダンジョン配信で、

 わたしと奏さんが、これから、

 配信者として、成功できるかが決まる。


 そのためにも、徹夜で情報を調べて、

 奏さんの配信者デビューが、

 1番映えるダンジョンを厳選した。


 運命の舞台は、万博記念公園ダンジョン。


 のダンジョンで、

 出現する怪獣は、植物系がメイン。


 しかも、怪獣自体はそんなに強くないが、

 一度に現れる数が多いタイプの場所。


 炎の拳による無双劇には、

 まさに、うってつけのダンジョン。


「そろそろ時間ですね。

 先にダンジョンに入っているので、

 合図を送ったら、カッコよくお願いします!!」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 一旦のお別れを告げて、

 わたしはダンジョンの入口へと潜り込む。


 空間に浮かぶひずみのような、

 銀色の輪を潜り抜けると、

 万博記念公園のメインゲート前に出る。


 周囲を見渡してみると、

 ゲートの手前に怪獣はいなかったが、

 その先では、事前に聞いていた通りの、

 植物系の怪獣たちが、数多く徘徊していた。


 これから、取れ高に変わる怪獣たちに、

 心の中でそっと黙祷を送り、

 そして、配信開始のボタンに触れる。


 配信の旅にお世話になっている、

 自動追尾もしてくれる撮影用のドローンが、

 わたしの体を、画面に映し出した。


「こんラヴィ~!! お待たせしました!!

 今日はこれから、特別な配信を始めるよ~!!」


”待ってたぞぉぉぉぉ!!!!”

”今話題の魔法少女が、ここで見れると聞いて来ました!!”

”めっちゃ楽しみで仕方がないんだが!!”


「私も、みんなに紹介できるのを

 昨日からずっと楽しみにしてたよ!!」


 コメント欄の盛り上がりは上々。

 同時接続者数も、かなり上振れた数字を叩きだしている。


 スタートダッシュは、まぎれもない大成功。

 ならば最早、すでに勝ったも同然だ。


 視聴者みんなの熱が1つに集まって、

 配信のボルテージが、加速度的に高まっていく。


”あの魔法少女はいつ登場するの??”

”なんか奥の方にある、

光のドームは何なんだ......?”

”ていうか、もしかしてここ万博? 

なんか倒れてるけど、後ろに太陽の塔見えるし”

”いや、実はすでに彼女の手によって、

怪獣が全滅させられてるのでは......!?”


 まさに、計画通り。


 彼女を求めてやまない皆の目には、

 きっと、彼女の姿が鮮明に焼きつくだろう。


 そして、魂に深く刻まれるのだ。


「それでは、みんなも待ちきれないみたいなので、

 彼女に登場してもらおうと思います!!」


 ここから始まる彼女の配信者デビューは、

 決して目を離してはならない、

 伝説の幕開けに他ならないのだと。


(奏さん、最高の無双をお願いします!!)


 外で待つ彼女に、メッセージを送り、

 私を映していた撮影用ドローンを、

 ゲートの奥、怪獣のひしめく場所に送り出す。


 最初は、突如侵入してきた謎の物体に、

 怪訝な表情を浮かべていた怪獣たちだったが、


 直後、ドローンがどうでも良くなる程の

 圧倒的強者の覇気に、その全てが空を見上げる。


「――さぁ、殲滅の時間だ」


 そして、万博記念公園ダンジョンに、

 一条の隕石が叩き込まれた。


「「「GYAAAAAAAAAAAAAAA!?」」」


「今日は、本当に珍しく気分が良いんだ。

 ハレの日の祝いに、1つ付き合えよ」


 高みからの位置エネルギーに後押しされた、

 恐ろしいほどの威力を秘めた獄炎の拳が、

 ダンジョンに大きなクレーターを刻む。


 拳が直撃した怪獣。

 その衝撃に巻き込まれた怪獣。


 残りの怪獣の全員が、

 そいつらと同じ末路を迎えるだろう。


 彼女の、華々しいデビューと共に。


「獄炎の魔法少女改め、

 ダンジョン配信者、シュラ。

 その初陣を、脳に焼き付けやがれ!!」




――――――――――――――

【後書き】


「魔法少女がダンジョン配信をする世界で彼女は最強」を、

 最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!!


 今回は、お試し版の投稿となるため、

 ここで一旦完結となりますが、

 皆様からの反応次第では、続きの執筆も考えております。


 もし、続きを読みたいと思ってくださった方がいれば、

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魔法少女がダンジョン配信をする世界で彼女は最強【序章までのお試し投稿】 @ricca248010

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