主人公が亡くなった妹を探すために様々な地獄を旅する冒険譚です。物語は主人公が妹の無実を信じ、地獄の入り口を見つけるところから始まります。八天街の神社で地獄への入り口を発見した主人公は、そこで出会った恐山菩提寺からきた巫女と共に地獄へ向かいます。
物語の舞台となる地獄は克明に描写されており、圧倒されるようなビジュアルが思い浮かびます。針山が林立し、焼けた鉄岩が散乱する灼熱の等活地獄、無数の青白い人魂が漂う不気味な空間、獄卒たちの食堂に散乱する生々しい人の手足など、緻密な描写によって、地獄の恐ろしさを体感することができます。
また、この物語の魅力の一つは、ユニークなキャラクター設定にあります。地獄マニアを自称するほど地獄に詳しい一風変わった主人公ですが、その知識を妹探しに活かそうとする健気さが心を打ちます。もう一人の主人公とも言える巫女は、死者を弔うために地獄を旅する不思議な存在です。彼女の天然としたズレた一面と優しさが、シリアスになりがちな物語に絶妙な安らぎをもたらしています。二人のコンビは飽きさせません。
そして、この物語にはいくつもの謎が用意されています。巫女の正体や目的、主人公の妹が本当に冤罪なのかどうか、そしてなぜ地獄へ落ちたのかなど、これらの謎が好奇心を刺激し、物語に引き込む要因となっています。
主人公たちの関係性や心情の機微を丁寧に描きながら、想像力をかきたてるダークファンタジーの世界観を作り上げています。法華経などの仏教の教えを下敷きにしつつ、そこに現代的な解釈を加えた地獄の設定も興味深いものがあります。今後の展開が気になる、ワクワクするような冒険活劇だと言えるでしょう。