明晰夢
呼んでいたかのように僕はそこに吸い込まれていった。そのあと岬さんがどうなったのかは僕には分からない。ただ気がつくと、僕は広大な宇宙の中をさまよっていた。しかし徐々に引力に
引かれて、白に包まれた惑星に落下する。落ちたのに痛みもない、息もできる。自分がどういう状況か理解が追いつかなかった。
そして僕はその真っ白の惑星で、白い柴犬に対面している。それは僕に、
「ようこそ私の世界へ、君をここへ呼ぶのは苦労したよ。私はこの場所で君とずっと遊んでいたい。ずっと一緒にいたい。私の頼みを聞いてくれるかい?」と言った。
到底受け入れられるような内容ではなかった。「帰りたいです。元の場所へ」
僕は正直に返した。
「やっぱりそうだよね。私は憧れていたんだ。生まれ変わる前の君に、今は亡きあの姿に。だから君をその人に近づけたくて、きっかけを与えた。案の定、君はそれを利用して、こんなにたくましくなったんだ。もう思い残したことはない……か」
なにがなんだか分からなかったが、少し分かった気がした。白い犬、いや君とはまたどこかで会える気がする。
「また逢う日まで」
白い犬は最後にこう言い放った。
「もし叶うなら、私は生まれ変わって人間になりたい。君によく似た人が私に言ってくれたんだ。『お前は体が真っ白だから来世は人間に生まれ変わるぞ!』って。だからさ、今度は同じ人間として。また逢おうね」
そう言い放った途端、ふらっと
目が覚めると僕はベッドの上にいた。そのまま横になってぼーっとしていると、下の階から母に呼ばれる。
「ゆっちゃん!起きてー!遅刻するよー!」
僕は帰ってきたんだと感じた。連絡先を確認しても岬さんの名前はなく、日付は昨日の朝と同じだった。つまり僕は長い夢を見ていたんだろう。ただそれはあの犬の"明晰夢"で、僕の夢じゃない。もう時間は無駄にしない。僕はさっさと準備をしていつものように学校に向かう。そして今日も道の途中であるもの……いや、人に思わず目を惹かれた。
"色白で可愛らしい、一人の女子高生に。"
明晰夢 飴。 @Candy_3
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