第4話 星降る宙に願いを 煌めく未来に希望を
美月はぶるりと身を震わせた。
「寒いか?」
「うん、少しだけ」
突如、後ろから穂高の逞しい腕が美月の肩にまわされその腕の中に包み込まれた。
「これでどうだ?」
「う、うん。あたたかい・・・・・・」
穂高の予期せぬ行動にどぎまぎする美月は、うわずった声で返答した。
美月の肩に顔を埋める穂高。
「・・・・・・いい匂いがする・・・・・・」
穂高の熱い息づかいが美月の首筋に伝わり、甘い囁きが耳に響いた。
「あっ・・・・・・」
敏感な美月は身体をピクリと震わせ、思わず吐息を漏らした。
その様子に微笑を浮かべる穂高。
「ここ・・・・・・弱いのか?」
美月の心臓は早鐘を打つ。
穂高の意地悪な質問になんて答えたらいいか困惑した美月は、視線を彷徨わせた。
「もう、穂高ったら・・・・・・」
むくれ顔の美月も可愛い。
「美月、天の川だよ」
穂高が、満天の星を指さしそう言った。
「天の川を見るのは初めて。
「今夜は月が早く沈むから、いつもよりたくさんの星が観測できるんだ」
山頂から眺める星は、手を伸ばしたら届きそうなくらい近く感じて、耳を澄ませば瞬く星たちの囁きが聞こえてくるようだった。
その時、宙一面に無数の流星が次々と降り注いだ。
「わぁ・・・・・・!」
歓声を上げた美月の瞳は、夜空の星に負けないくらい輝やいていた。
その瞳に映し出された流星はキラキラと煌めき、それは美月の美貌と重なりとても美しかった。
「ペルセウス座流星群だよ」
「流星群?」
ペルセウス座流星群。八年ぶりの好条件の今日、二十二時には月が沈むため月明りを気にせず一晩中観測を楽しめる。
しかもここ、日本が誇る唯一無二の山頂から望む三百六十度の大パノラマは圧巻だった。
「これを君に見せたかった。僕が君と一緒に見たかった景色だよ」
「穂高・・・・・・」
美月は肩にまわされた穂高の腕に己の手をそっと重ねた。
二人いい感じの雰囲気に包まれたその時、美月は慌てた様子で言った。
「あっ!私、星に願い事するの忘れてた。穂高は何か願った?」
「したよ」
「ずるい!次こそは私も・・・・・・」
どうやら、美月には叶えたい夢があるらしい。
先程から、流星を逃すまいと夜空とにらめっこしている美月が愛らしい。
そんな美月を見ているだけで、穂高は幸せだった。
穂高は、美月と初めて出会った時から心に決めていた想いを吐露する。
「美月・・・・・・大学を卒業したら、僕と結婚してくれないか」
あまりにも唐突なプロポーズに、美月の思考が追いつかなかった。
美月は、驚きの表情で穂高に向き直る。
「今・・・・・・何て、言った・・・・・・?」
柔らかな眼差しで微笑む穂高。
「二人で幸せにならないか?」
穂高は真っすぐに美月を見つめそう言った。
「いいの?私なんかで、ホントにいいの?」
「まだ信じてくれないの?それじゃあ、君が信じてくれるまで、何度だって言おう」
「僕は君を愛してる・・・・・・」
「自分でもよくわからないけれど。出会う前からずっと、君を探していたんだ」
「初めて君に出会った時、思った。『やっと、出会えた』って・・・・・・」
その刹那、美月の瞳から星屑のように煌めく滴が頬に零れ落ちていった。
「信じて貰えないかも知れないけれど。聞いて。私もね、初めて穂高にあった時、同じことを思ったの・・・・・・」
美月の潤んだ瞳から止めどなく溢れ出る涙を、穂高はそっと拭ってあげる。
穂高はそんな愛おしい美月を見つめると、彼女の顎をゆっくりと引き上げ口づけを落した。
東の空が群青色と橙色のグラデーションを描く頃。
二人は山頂から東の空をじっと見つめた。
眼下に果てしなく広がる、幻想的な雲海のそのずっと先に、キラリと光を放った。
神秘的な程まばゆい光だった。
それは、希望の光。
二人は、煌めく未来に希望を抱いた。
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