蛮族、中ボスと対決する
そして、そんなジェネラルスケルトンの言葉に……ジャスリードは黙って考えていた。
話が早いのはいい。此方の聞きたいことについて明確に答えた上で、そのほかの可能性について言及したのも好感が持てる。
(上司。あのディバスとかいう魔族のことだろうが……一応確認してみるか)
「1つ聞く。上司の名はディバスか?」
「そうだ。面識があるのか?」
「ああ。勇者選定とやらの場で少しやりあった」
「ワァ……」
すでにぶつかってやがる。つーか人間ども、まさか蛮族を勇者にしようとしたのか?
え? 人類社会、蛮族を取り込もうとしてたの?
そんな気が遠くなりそうな……かなり勘違いの混ざったことをジェネラルスケルトンは思う。
もし蛮族が人類の頼れる味方として存在していたならすごくヤバい。逃げたい。けどまあ、勇者じゃないって言ってたし。そう自分を納得させると、ジェネラルスケルトンは武器を構え直す。
「さて……もう聞きたいことは聞いたな?」
「ディバスが何処にいるか教えてほしい」
「フッ……」
ドストレートに聞いてくるジャスリードに、ジェネラルスケルトンは顔に肉がついてたら引きつっていそうな笑みを浮かべる。
(流石にそこまで上司をダイレクトに売れるかボケ! ほんっとうに蛮族ってのはよお!)
「残念だが私が言えるのは次の『ゲーム』の待つ方向のみ。それすらも私を倒さねば教えられんがな!」
そう、流石に「上司のディバスは今あちらにおりますー」なんて蛮族を直接送り込むような真似を出来るはずがない。「上司がやったかもだけど違うかもなー」と「上司は今あそこにいます」とでは凄い違うのだ。流石にそこまでやったら、蛮族に殺されなくても魔族に殺される。
しかし蛮族を前に隠し事とかそれだけで死にそうなので、ルールということで押し通す。
(蛮族はルールとか誓約とか大好きだからな……これは通るはず……通る……通す……通れ……!)
人生最大のギャンブルをやっているような祈り方をするジェネラルスケルトンにジャスリードは「そうだな」と頷く。
「それがルールであれば仕方ない。その通りにやればディバスに辿り着くんだな?」
(通った……!)
流石にガッツポーズはしないが、これでジェネラルスケルトンは上司に向かう殺意を可能な限り減らしつつ任務も遂行したという結果にもっていけることが確定した。この後死ぬほど痛いかもしれないが勝利である。
「フフフ……気が早いな。私を倒せると思っているのか?」
「ああ、倒す。とはいえ、色々と教えてもらい恩義も出来た……ベルギアの戦士として正々堂々戦うこと、そして命は取らないことを蛮神グラウグラスに誓おう」
(よしっ! よしよしよしっ! ヨシッ! 生き残ったああああああああああああああ!)
「私はジェネラルスケルトン……将軍の名を持つ者として、誇り高き戦いをしよう」
あくまで冷静で誇り高き剣士を気取りながら、ジェネラルスケルトンは心の中でどんちゃん騒ぎである。命さえ保証されたなら、あとは本気で戦うだけだ。
だってもう殺さないって相手が誓ったし。蛮族が誓ったなら、もう絶対にジェネラルスケルトンは死なない。ならば万が一勝てれば丸儲けである。
「では、参る……!」
「来い!」
「うおおおおおおおお!」
盾を前面に構え、剣の軌道をなるべく読ませない形での突進。そして初撃は盾での打撃からの斬撃へ繋げるコンボ。面の広い盾での打撃は、それ自体が回避は至難……!
そして避ければ剣での一撃が待っている。無理に交わしても崩れた態勢で剣を回避するのはもはや不可能!
「この勝負、貰ったああああ!」
「ああ、俺がな」
しかし、ジャスリードは上へと跳んでいた。その凄まじい脚力で跳び、天井を足場にして一気に突っ込んでくる。
「な、なんとおおおおおお!?」
「でえええええいやああああああ!」
盾を天井へと向けて防ごうとしたジェネラルスケルトンの、その防御の上からベルギア刀の一撃が振り下ろされてドガアアアン、という冗談みたいな音が響く。
「う、うおおお……盾が、砕け……」
驚愕するジェネラルスケルトンは……ジャスリードが剣をひっくり返し刃のないほうを自分に向けているのに気付く。
「殺さないと誓ったからな」
ドゴン、と。兜をへこませる一撃がジェネラルスケルトンへと繰り出され、更にトドメとばかりに着地したジャスリードの蹴りがジェネラルスケルトンを吹っ飛ばす。
「ご、ごあああああああああ!」
机を吹っ飛ばし壁に叩きつけられたジェネラルスケルトンはそのまま「うう……」と呻く。
「み、見事……」
(嘘だろコイツ……殺さない攻撃でコレか? 蛮族ほんと怖ぇー……世代変わっても何も変わってないじゃないか……)
一応カッコつけるジェネラルスケルトンだが……ジャスリードはそんなジェネラルスケルトンにベルギア刀を突きつける。
「これで俺の勝利、ということでいいだろうか」
「ああ、何の文句もない。ならばこれを持っていけ……この「導きの宝玉」がお前を次の障害へと導くだろう」
ジェネラルスケルトンの差し出した手の平ほどの宝玉をジャスリードが手に取ると、何処かの方向を指し示すように光が伸びて……やがて、消える。
「なるほど、あちらか。感謝する」
「ああ。さっさと行くがいい」
これで終わった。しばらく有給取ろう。そんなことを考えているジェネラルスケルトンに……小走りでグレイスが近づいてくる。
「その、ありがとうございます。私ヒール覚えてますのよ。その怪我を治しても……?」
「アンデッド相手のヒールは超痛いからやめてくれ……」
勝手に治るからどっか行って、とも言えずにグレイスたちを部屋から見送って。
ちょっと砕けた頭蓋が治ってきているのを鏡で確認しながら、ジェネラルスケルトンはフッと笑う。
「……軍やめて、最果ての地の端でスローライフとかするかな……?」
まあ、お給料いいからまだしばらくやめないけど。明るい未来設計に想いを馳せながら、ジェネラルスケルトンは今日の災難を忘れようとしていた。
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