#5
衝突した両者のライフ・シュトローム。
ゼノメサイアから放たれた凝縮された生命の雷、ゴッド・オービスからはパイロット達の生命。
そこに全員のインディゴ濃度による活性化も加わり辺りには凄まじいエネルギーが流れていた。
謎のコックピットの中で操縦桿を握りながら新生長官は感じていた。
「遂にバベルに侵されぬ純粋な生命が共鳴した、生命の樹も活性化する……!」
意味の分からない独り言と共に目を覚ます新生長官が搭乗する機体。
レギオンと似た人型ロボットのようなインペラトルは起動し発進した。
「さぁ行くよ、母さん!」
遂に夢が叶うと言わんばかりに新生長官は口角を上げた。
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一方旧支部で待っていた瀬川参謀は現状に驚愕していた。
世界の様子を見ながら震えている。
「まさか、種の一部を摂取していたのか……⁈」
流石に無いと思っていた、ゼノメサイアが種の一部を摂取していたなど。
以前の崩壊に残る謎も彼は察した。
「新生先生、貴方はどこまで……っ」
そして空を飛ぶインペラトルを見て絶望してしまうのだった。
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そして現場では閃光が晴れた後、ゼノメサイアとゴッド・オービスの両者がその場に倒れていた。
意識を取り戻した途端に両者は現場に流れる異様な緊張感に気付いた。
「え、何だこの感じ……?」
「嫌な予感がする……」
そんな中で瀬川は起き上がるゼノメサイアを見つけた。
まだ執念深く戦うつもりの様子が伝わって来る。
「快っ、お前まだ……」
苦しそうに立ち上がるゼノメサイアの足元はおぼつかない。
それでも意志の力で立ち上がる。
『オォォォッ……!』
そして力強く吠えた。
しかしやはり何か違和感を覚えたようで。
『ッ……⁈』
Connect ONE本部に何かがあるのかそちらを見つめる。
そのまま限界が来たのか倒れてしまった。
『グゥ……ッ』
「快っ!」
心配する瀬川。
すると蘭子が何かに気付いた。
「っ?何か近付いて来る!!」
ゴッド・オービスのレーダーに何かが高速で映る。
ソレはすぐに間近に現れた。
『ヴヴォオオオッ!!!』
華麗に空を飛んで来たソレはレギオンとよく似ていたが少しだけ姿と色が異なっていた。
これこそが新生長官の搭乗するインペラトルである。
「よくやった快くん!お陰で種は活性化したよ!」
無線から通信が届く。
それはゴッド・オービスの方にも届いていた。
「新生さんっ⁈」
このような状況でレギオンのような人型ロボットに搭乗して現れた事で裏切られた事をより深く実感してしまった。
「君たちもよくやった!既に役目は終えたというのに更なる恩恵を齎してくれたね!」
なんとゴッド・オービスにも感謝を告げた。
その事実にパイロット達は混乱してしまい何も言えなくなってしまった。
「君たちは新世界で最も偉大なアポストルとして語られるだろう!」
また知らない言葉が飛び出して来る。
するとインペラトルはゆっくりと降下し倒れたゼノメサイアに近付いた。
「や、やめろ……っ」
コックピットの中で手を伸ばす瀬川。
しかし機体は上手く動いてくれない、それだけダメージを受けているのだ。
「さぁ快くん、最後の大仕事だ」
そしてゼノメサイアの体を抱き上げそのまま再度飛翔した。
Connect ONE本部へ向かっていく。
『ヴォォオオッ』
そして思い切り着地し床を突き破り内部へと侵入した。
大きな損傷を受けた本部内では警報が鳴り響く。
「マズいですね、退避です……っ!」
田崎参謀は一同に伝えた。
内部にいる職員を始めとした人々は逃げ惑う。
『緊急!本部に残る人々は退避してください!』
そのようなアナウンスが流れる本部で愛里はフラフラと歩いていた。
「はぁ、はぁ……」
すると目の前で壁が崩れインペラトルの目が穴から覗く。
隙間から抱えられるゼノメサイアも見えた。
「快、くん……?」
腰が抜けて動けない愛里にも新生長官は一人で告げた。
「君にも感謝してるよ、彼に歩み寄ってくれた事……」
そのままインペラトルは愛里をそのままに進んで行った。
「っ……?」
取り残された愛里は誰かに抱えられる。
愛里を抱えて走り出した男は職員の小林だった。
「クソっ、最悪だ……!」
絶望した小林はそのまま救助ヘリに乗って愛里と共に脱出した。
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ここは生命の樹の種の保管庫。
そこへインペラトルが到達した。
『ヴォォォ……』
愛する者のようにゼノメサイアを抱きかかえ活性化する種を見つめる。
「遂に達成されるよ母さん……」
すると種にヒビが入り花のように開く。
異様な光景だが新生長官は動じずゼノメサイアをそこへ捧げようとした。
すると広い空間に声が響く。
「継一!」
そちらに目を向けるインペラトル。
その機体と比べると小さな存在がそこにはいた。
時止主任だ。
「ここまで来てしまったか……」
自分の不甲斐なさを悔いるように時止主任は言う。
そして救いたい親友に告げた。
「君は母親に洗脳されている。もう一度自分の意志でよく考えるんだ!コレをする事でどうなってしまうか!」
必死に洗脳に抗おうと言葉を連ねる。
『……』
黙っている新生長官。
そのまま時止主任は続けた。
「みんな死んでしまうぞ?そんなの何処が幸せだ!」
必死に彼の母親の思想を否定した。
そしてしばらくの沈黙。
「継一……?」
すると遂に新生長官は口を開いた。
『私は私の意志で動いているよ、勘違いはしないで欲しい』
そしてゼノメサイアの身体を花のように開いた生命の樹の種に苗床のように寝かせた。
「やめろぉぉぉーーーーっ!!!」
時止主任の悲痛な叫びも空しく、種はゼノメサイアを取り込み莫大な光を発した。
そして世界は衝撃の変化を遂げる。
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・
・
周囲からも放たれた光は確認できた。
その光の柱は天にまで届き以前と同じような“もう一つの地球”を上空に出現させる。
「あれはあの時と同じ……⁈」
ゴッド・オービスのコックピットからも見えていた。
嫌な予感がピークに達する。
『ぐ、がぁぁぁぁあああっ……!!!』
するとコックピットの中に悲鳴が響き渡る。
陽が驚きアモンに話しかけた。
「アモン!どうした⁈」
その悲鳴はアモンのものだった。
陽の脳内に直接響くため頭痛が。
『マズいっ、拓いてしまうっ!新世界がっ!!』
叫ぶアモン。
すると周囲でも異変が起こっていた。
「何だっ⁈」
先ほど撃破したはずのレギオン達の機体の残骸が突如として息を吹き返し立ち上がったのだ。
両手を大きく開き損傷した体で十字を描いている。
『オォォォオオオオン……ッ!!!』
光の柱に共鳴するかのように叫ぶ。
アモンもそれに共鳴しているかのように見えた。
「何が起こっている⁈」
焦るTWELVE隊員たち。
ヘリで逃げる愛里や職員たちもその光景に圧倒されていた。
『ヴッ、ビチビチッ……!!』
するとレギオン達はまるで脱皮するかのように、蛹を破り成虫に羽化するようにその表面を捨てた。
破られた表皮は死体のように倒れ、中から現れた異様な存在は完全に脱ぎ捨てた。
『アァァァアアアア』
その姿は真っ白で首のないマネキンのようであった。
とても生気の感じないただの“ヒトの素体”のような。
『バサバサッ』
そのヒトの素体は翼を生やし広げて禍々しい大空へ飛び立つ。
そして光の柱を囲み周囲を飛び回った。
そのまま新世界を拓く儀式が行われるのだ。
つづく
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