第27界 トモトシテ

#1

Connect ONE本部付近を進む謎の航空機の隊列、その対策のために防衛ラインを起動した。


「これは威嚇だ、まだ対象に攻撃の意思があるかは分からんっ……」


防衛隊長も冷や汗を流しながら迫る未確認飛行物体を見つめている。


「っ……」


未確認飛行物体が飛ぶ轟音だけが耳に響く。

嫌な緊張感が辺りに漂っていた。


「何者か、応答せよ」


指令室ではオペレーターが無線を繋ぎ通信を試みる。


「応答ありません」


しかし何も返っては来なかった。

ただ無言で近づいてくる未確認飛行物体に一同は怯えるばかり。

時止主任も同様だった。


「何をしてくる継一?あれには何が乗ってる……?」


巨大な貨物部分のようなものを見つけた彼は嫌な予感を抱いた。

そしてその時はやってくる。


「ハッチが開くぞっ」


防衛ラインの寸前で未確認飛行物体は全機ハッチを開いた。

そこから現れた何かが地上に降り立つ。

それらは七体の巨大な人型のモノだった。

ロボットのような生物のような異様な姿をしている。


『ヴヴヴゥゥン……』


謎の音声を放ちながらその七体はゆっくりと防衛ラインへ足を踏み入れたのだった。


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『XenoMessiaN-ゼノメサイアN-』

第27界 トモトシテ







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ゆっくりと歩みを進めていく存在。

一機残った飛行物体の中から快はその様子を見ていた。


「(レギオン達が動いた……!)」


まさにその人型の存在こそレギオンの機体なのだ。

先ほどまで快と共にいた人々が搭乗している。


『ヴァァァァ』


防衛ラインに踏み込んでいくレギオン部隊。

本部は無線を通して最後の警告をする。


『止まれ!これが最後の警告だ、これ以上踏み込めば敵とみなし攻撃する!』


出来ればConnect ONEの一同は戦いたくなかった。

ただでさえ本部付近で災害が起こり巻き込まれたというのにそんな状態で得体の知れぬ相手と戦闘になるなんて。

しかも相手は新生長官かも知れない、唯一頼りのTWELVEが上手く戦えるかも不安だ。


「くっ……」


警告してもレギオン部隊は止まらず遂に最後の一歩を踏み出した。

もう仕方がない。


「すぅぅぅ……撃てぇぇっ!!!」


防衛隊長の叫び声と共に一斉に防衛システムの固定砲台たちが火を噴く。

前方の砲台から有りっ丈の攻撃が放たれた。


『ヴヴヴ……』


爆炎に呑まれレギオン部隊は一時的に見えなくなる。

一同は固唾を呑み込み様子を見ていた。

すると……


『ヴォアァァァンッ!!!』


突如爆炎の中から一体のレギオンが飛び出して大ジャンプをする。

そのまま勢いよく着地しそのまま固定砲台を一つ破壊した。


「なっ⁈」


そのレギオンは何処か嗤っているように見えた。

そして背後の爆炎から次々とレギオン達が飛び出してくる。

勢いよく着地し一度並んだ後、それらは一斉に攻撃を始めた。


『ヴォオオオッ!!』


まるで日頃の鬱憤を晴らすかのように、憎しみを爆発させるかのように嗤いながら固定砲台を次々と破壊していくレギオン達。

爆発に巻き込まれ傷付こうがお構いなしに力任せにどんどん攻撃していく。


「何だコイツら……っ⁈」


本部から見ている一同はその恐ろしさに身震いしてしまった。

しかし現在指揮を担っている田崎参謀は何とか冷静さを保っていた。


「闇雲に撃つだけじゃいけませんっ、至近距離で思い切り撃って下さい!」


その指示を聞き緻密な操作をする事になる。

レギオンが破壊しようと近づいたタイミングを狙って至近距離で食らわせるといった作戦だ。


『ヴォッ……⁈』


見事にカウンターが決まりレギオンの一体が吹き飛ばされる。

右腕を欠損させる事が出来た。


「よしっ」


しかし喜んだのも束の間、すぐに別のレギオンが横からその砲台を破壊してしまった。


「何度も使える戦法ではありませんねぇっ……」


流石の田崎参謀も冷や汗を流した。


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一方で心配されているTWELVE隊員たちは外で起こっている戦いに目を向けられなかった。

特に新生長官を信頼していた者は自室で縮こまっている。


「蘭子ちゃん、やっぱ新生さんの差し金なのかな……?」


「うっさい、考えたくないのっ」


特に落ち込んでいる蘭子は部屋のベッドで横になっている。

竜司はドア越しに声をかけるが彼女は目を背けたままだ。


「でももっと近付いたら俺らも出動させられるよ、覚悟決めて準備しとかないと……」


すると勢いよく瀬川と名倉隊長がやってくる。

どこか焦っているような様子な瀬川とそんな彼を隊長は気にかけてているようだった。


「行きましょう、出動させてもらうんです」


ソワソワしている瀬川。

すぐにでも出動したいらしい。


「まだ要請がないだろ」


「だからお願いするんですよっ」


上からの指示がなくとも彼はやる勢いだ。


「でも蘭子ちゃんが落ち込んでて……」


「え……」


そう言われて瀬川は扉を見る。

この状況を察し蘭子に声をかけた。


「行きましょう蘭子さん、俺たちがやらなきゃ」


しかし蘭子は無視をする。


「快は利用されてる、救い出すんですよ……!」


その言葉で蘭子は心を更に乱す。


「あんたには分かんないでしょ、あたしには新生さんしか居なかったの……っ」


結成された時の事を思い出して語る。


「新生さんが救ってくれた、心の支えだった。あんたに親友がいるみたいにね……っ」


瀬川と自分の違いを語る。


「あんたの親友はまだ救いようがある、でもあたしは根っから裏切られたの!もう二度と御免だと思ってたのに……っ」


かつてゲーマーだった時代の仲間に裏切られた事と重ねてしまい落ち込んでいるのだ。


「っ……」


「居場所になるって言ってくれたのに……っ!」


まるで嘘をつかれたと言うように嘆く蘭子の声を聞いて自分の行いも思い出してしまう。



『俺がヒーローになるのを支えるって言ってたじゃん……っ』



快にヒーローを辞めろと言った時にこのような返事が来た。

あの時の快は今の蘭子と同様に裏切られたと感じていたのだろうか。


「ぁ……」


「どうした瀬川……?」


突然様子が変わり暗いオーラを放った瀬川に名倉隊長が問う。


「親父たちが漬け込んだ快の弱み、それを作ったのは俺だ……」


蘭子の言葉を聞いて遂に理解した。

自分も罪深かったという事を。


「この状況を引き寄せたのも俺か……?」


信じたくない、自分は快の傷付く様子が見たくなくて辞めろと言った。

しかし快にとってはヒーローである事が心の支えだったのだ、自分の都合を優先してしまった。


「あぁ、俺のせいなんだ……」


そう呟き瀬川は一人でその場を去った。

他の誰もその後を追う事は出来なかったのだった。


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トボトボと本部内の廊下を歩く瀬川。

所々あるモニターには激戦の様子が映されている。

その光景を招いた要因の一つが自分だという事実が耐えられなかった。


「(俺に快を救う資格なんてあるのか……?)」


目的だったはずの親友を救う事すら烏滸がましいものなのだと思ってしまう。

そして気が付くと職員たちの流れに乗って格納庫前まで来ていた。


「あ……」


視線の先には整備されているゴッド・オービスの姿が。

しかし今の瀬川には申し訳なく思う気持ちしか抱けなかった。


「アイツ……」


整備している職員たちは瀬川の存在に気付き少し不満そうな顔をする。

それに気付いた瀬川は更に申し訳ないと思った。


「(みんなも嫌だよな、こんなヤツが崩壊を招いた親友を救おうとしててそのための整備なんて……)」


そのように落ち込んでいるとある人物から声が掛かる。


「抗矢くん、居ても立ってもいられなくなったか?」


名前を呼ばれ振り返るとそこには時止主任が立っていた。

整備の指揮を執っているらしい。


「時止さん、俺……」


「どうした……?」


瀬川の先ほどまでの雰囲気と違う様子に何かを察し時止主任は話を聞く事にするのだった。






つづく

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