#2

一方でConnect ONE本部に残された者たちはやるせない気持ちで過ごしていた。

特にTWELVE隊員たちは何も出来る事がなく不安が募るばかりだった。

他の職員たちが瓦礫の片付けや怪我人の手当をしている中、彼らも手伝おうと試みるが上手く出来ない。


「これ、あそこに運んで!」


「えっと、どこに……?」


指を指す職員の言う場所が瀬川にはよくわからず何度も聞き返してしまいイライラをさせてしまう。


「ホラ、あそこ!」


「は、はいっ!」


渡された荷物を運ぶが行きかう人々にぶつかって互いの荷物を散らしてしまう。


「あぁ、すみませんっ……」


「もういいから、休んでて」


呆れたように言われてしまい普通の仕事の出来なさに自分が嫌になった。

落ち込みながら休憩室に向かうと他のTWELVE隊員たちもいた。


「あれ、みんなも……」


「お役御免だとよ」


少し皮肉めいた口調で竜司が言う。

他の隊員たちも同様だろう。


「僕たちは戦うためだけに集められた、それ以外の事はさせてもくれなかったから今更上手く出来ないよ……」


「それが一部からよく思われていないのもな、今になってまた初期に戻ったようだ……」


陽と名倉隊長も口を開く。

瀬川はそれに対し思った事を言った。


「まぁこんな状況だしみんなピリピリしますよね……」


すると蘭子が文句を言う。

貧乏ゆすりをして明らかに不満が溜まっていそうだ。


「だからってねぇ!蔑ろにされたらムカつくっつーの!」


そして瞳を潤しながら呟いた。


「今まで一緒に戦って来たじゃん……っ」


震えながら気持ちを少し吐き出す。

それは他の隊員たちの気持ちも代弁したような言葉だった。


「そうだな……」


名倉隊長がそう言うと休憩室に何者かが入って来る。

それは自衛官からなった職員だった。


「おいおい見ねぇと思ったら相変わらず休憩かよっ、少しくらい手伝ったらどうだ?」


その一般職員“小林”はTWELVEの存在を未だに疑問に思っている者である。


「手伝ったさ、その上で戦力外だとよ」


冷静に返す竜司。

すると小林は更に腹を立てた。


「じゃあ何もしねぇのかよ、誠意くらい見せろって」


「でもあんたら迷惑そうにするでしょ……」


縮こまりながら言う蘭子。


「チッ、何でこんなになっちまった……」


小林は組織全体の現状を嘆く。


「こんな状況になって、長官と参謀も出て行って……!みんな不安なんだっ、お前らだけじゃない……!」


両手を広げて不満をぶちまける小林。


「少しは頼りにしてた、戦えるのを示してくれたから!でもそんなお前らがこんなんじゃ……」


項垂れながらも懇願した。


「頼むからしっかりしてくれ……っ!」


そう言って小林はこの場では休憩せずに去って行ってしまった。

取り残されたTWELVE隊員たちは考える。


「どうすれば良いんだよ……っ!」


全員が揃って頭を抱えてしまった。


___________________________________________


我慢ならず廊下に出て自分に出来る事を探す瀬川。

しかし誰も自分を歓迎していないのが雰囲気から伝わる。


「あ……」


気が付くと唯一自分に出来る事、機体が置いてある格納庫までやって来てしまっていた。

メンテナンス中の自らの機体、マッハ・ピジョンを見て葛藤する。


「(ゴッド・オービスじゃ何も出来なかった……)」


先日のゼノメサイアと大天使ルシフェルの戦いを思い出す。

凄まじかった、この世の理を超越しているとさえ思えた。

自分に出来たのはただ見ているだけ、そして巻き込まれないようにする事だけだ。


「(もう俺、必要ないのかな……?)」


親友の夢の支えになると言ってもあの領域まで行かれてしまえばもう何も出来そうにない。

凄すぎて萎縮してしまったのだ。


「……?」


そんな風に悩んでいると近くから職員たちのものと思わしき話し声が聞こえて来る。

気付かれないように壁に隠れて耳を傾けてみた。


「やっぱりあの宗教家二人は信用ならなかった!」


「マトモなのは田崎参謀だけだったな」


「でも信用して着いてきた参謀も参謀だろ……」


元自衛官たちによる組織のトップへの不満だった。


「ライフ・シュトローム?インディゴ濃度?その宗教的なモノ使って最初からそうするつもりだったんじゃ……」


主に新生長官の悪口になっている。

すると瀬川の背後に竜司がいた。


「あ、竜司さん……」


「あんな風に言われてるし実際捨てられたように感じたけど俺、新生さんのこと嫌いになれないんだよな……」


職員の彼らとは違った思いを語っていく。


「孤独だった俺に歩み寄って居場所を与えてくれた、その感謝は忘れらんねぇんだよ……」


複雑な感情で組織に残るTWELVE隊員たち。

大好きな恩人が悪く言われるのは耐えられなかった。

すると職員たちはまた何か言う。


「あの宗教家が連れて来たTWELVEも怪しく見えてきたな……」


「おい、アイツらは一緒に戦って来ただろっ」


「だから不安なんだよ。もう何も信じられない、裏切られるのが怖いんだ……」


その言葉に他の職員たちも同情してしまう。


「でも言いたい事は分かるぜ、瀬川参謀だっけ、いきなり息子を引き入れてさ。アイツらに都合が良すぎねぇか?」


そこで一番複雑な感情を抱いている父親の話が出て瀬川は反応してしまう。


「親子で何か計画立ててそうでさ、怪しく思えちゃうんだよ……」


その言葉を聞いた瀬川と竜司。

竜司は冷静に瀬川を心配した。


「いや、コイツは親父さんを……」


しかし当の瀬川本人はこれまでの様々な不安によるストレスが募りに募ってもう我慢できなくなっていた。


「俺が親父と……?そんな訳ねぇだろ……っ」


「おい、落ち着けよ……っ?」


隣で竜司も嫌な予感を抱く。

しかし瀬川はもう止められなかった。


「違うっ!俺は違うッ!親父なんかと一緒にしないで下さい!」


とうとう出て行って職員たちに想いをぶつけてしまった。


「俺はただ親友のためになりたかっただけで親父とは……っ!」


そこで自分のしている事に気付き冷や汗を流してしまう。


「~~っ」


「おい待て!」


そのまま走って出て行ってしまった。

竜司も後を追いかける。


___________________________________________


廊下で走る瀬川を竜司は呼び止める。


「はぁ、はぁ……お前速すぎっ」


そして廊下の真ん中で二人で話す。

しかし瀬川は竜司の方を一切見なかった。


「親父、何してんだよ……」


正直に父親への怒りの感情をぶちまける。


「快は苦しんでるのに無理やり連れだして……っ!神がどうとか言う前にアイツは人間で俺の親友だっ!」


「瀬川……」


「許せねぇ、弱ってる所に漬け込んでよ……人を人だと思ってねぇのかよ!」


その言葉を聞いていたのは竜司だけではない。

廊下を行き来していた他の職員たちも聞いていたのだ。


「俺、やっぱ快を助けたい……」


「え……」


「ここで何も出来ないなんて嫌だ、あのクソ親父から快を取り戻すっ!」


その言葉を聞いた竜司。

瀬川の肩を叩いて告げた。


「よし、俺も手伝うぜ」


「竜司さん……!」


「それが上手く行ったら新生さんにも辿り着けるはずだ、他の隊員も乗るだろうよ」


信頼できる笑顔で言ってくれる竜司に思わず瀬川も口角が上がる。

他のTWELVE隊員たちにも伝える事を決めた。

そしてここは快が連れて来られた謎の崩れた施設。

新生長官の話を聞いた快は廊下を歩いて施設内を見て回っていた。


「(ここで何があったんだ……?)」


明らかに異様な崩壊をしている施設に疑問を抱いていると声をかけられる。


「やぁ創 快くん」


振り返るとそこにいたのは瀬川の父親である参謀だった。


「瀬川のお父さん……?」


「少しばかり話をしないか?」


今までとは違う、少し自分を憐れむような眼で見て来る瀬川参謀に違和感を覚えながらも快は話を聞くのだった。






つづく

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