第3話 出会い、そして、始まり ③
美月 - side -
「はぁ~」
ずっとため息が漏れてまう、わかってんねん、大事な講義やっちゅーのにまったく頭にはいってけーへん
なんで、集中できへんのか、そりゃ、決まっとる
スピカはんや、出会ってからがほんま、濃かった、内容が濃すぎる…
未だに信じられへん、でも、あんなことをさらっとやられたらもう、そら、信じるしかないんやけど
ちゃうねん、それ以上に信じられへんのが
うちが、あんなに惚れたら、身も心も捧げるくらいに、ぞっこんになるなんて、もう一途過ぎて見てられへんくらい、誰どう見ても愛に溺れるあかん女やん!!
ホストに貢ぎまくる女性とか小ばかにしてたけど、もう馬鹿にでけへんわ~、知ってもうたもん
愛する人にだったら何をしててでも振り向いてほしい、傍に居て欲しい、自分だけを見て欲しい、自分が居ないときでも自分のことを考えて欲しい!!
そんな感情がずっとずっとずーーーーーっと!グルグルと頭を走り回ってるんや!!あかん!もう完全に愛欲に溺れてる!しっかりせなあかん!!
うちがスピカはんを養うんや!!
それが、間違ってるちゅーねん!!!しっかりせぇ!!!完全にたらしこまれとるやん!!!!
冷静になれ!冷静になるんや!!!
あ~でも、スピカはんって胸板たくましいなぁ、腕も鍛えこまれてて男って感じやし、何よりも、ものすっごいイケメンやしなぁ、それでいて紳士的やし
初めてのアレも凄い優しくしてくれたし、初めてって痛いゆーやん?不思議と痛くなかったし、経験した子がいうには次の日は痛いってゆーてたけど
あんなにしても痛くないしなぁ…あ、相性がええってことかな!?かな!?
って、ちゃうやろう!!冷静に思い出すなや!!愛欲に溺れとる!つま先から頭のてっ辺まで浸かりきっとるわ!!愛欲に!!
考えがこんがらがっていると、誰かに声を掛けられる
「みーつき!講義おわったよ?」
よく同じ講義をうけとる千早っちが声をかけてくれる
「ぁ、ああ、そか終わったんやな」
カバンにノートや筆箱をしまっていく
「今日はもう講義終わり?」こういう時は何処か遊びにいかへん?の誘いの時やな、
今日は~うん、おとんからバイトに出てくれって言われてへんし、掃除もしてくれいわれてへんから予定はない、ないけど…
早く帰りたいスピカはんにご飯作ってあげたい、抱きしめてもらいたい、頭撫でてもらいたい、あ、あれもしたい・・・・
そうか、これが友情破壊と言われる彼氏が出来てしまったが故の友情置き去り感情ムーブ!!
「ぁーだんまりだー講義ないけど何か用事あるでしょー!!」
ぅぐ、ぅ、何気に長い付き合いやからなーうちの行動パターンよー把握されとる。
「バイト?コーヒーレディの?」
千早っちに嘘はいいたく、ないなぁ
「…あんな?そのな、その」
頬を赤らめてもじもじとしていると
「はっはーん、春が遠すぎて天涯孤独を決め込むゆーてた美月にもとうとう、とうとう!出来たのねー好きな人が!!」
はぅん、驚くほどすぐバレてまうやん…
返答に困っていると
「ぁー図星やーん、何処の学科の人?美月って影ではモッテモテやから何処のどいつが美月のハートを射止めたん?」
ニマニマと嬉しそうに…うん、ここやと誰の耳があるかわからへん、現状、ヒモみたいな関係やし、変な噂が流されても嫌やしお茶でもしながら話そう!
駅に行く途中にあるスーツ着たおっさんどもがたむろしとる、コーヒーが美味しくてお気に入りの喫茶店いこ!!
「ここじゃあれやしさ、サテンいこや、な!?」
千早っちの肩を掴んで有無を言わせないようにすると話しにくい相手なのかとすぐに理解し
「おっけーおっけー、せやね、うん、いこいこ!」
嬉しそうに先に歩いていく。
はぁ、何処まで話したらええんやろかなぁ、全部は言えんし、
うーん、あれってどう見ても逆ナンやん?うっわぁ軽い子やと思われそうで嫌やわぁ…
長い付き合いの千早っちなら、うちが軽い女やないってわかってくれるやろうけど、付き合いの浅い人やったら軽蔑するやろなぁ…
はぁんもう、でも後悔が無いのがスピカはんの凄いとこやわー
むしろ、あの時に声を掛けて強引にでも居酒屋連れ込まんかった方が、一生後悔するレベルやわーって感じれるのがほんまにスピカはんの凄いところやわぁ、、、
あかん、これもう、べた惚れやん。頭の中では挙式どうしようかまで考えとったわ!!
門に向かって階段を下りていく最中もよくわからないもう、顔すら覚えられへんような烏合の衆をあしらっていく
もうええちゅうねん、何回誘いにくんねん、うっとぃのーいかんて合コン、もう入らんてサークル、無理やゆーとるやろ!連絡先なんて教えるわけないやろがぃ!
段階踏めや!いきなり本丸踏み込んでくなや!なんやねんなもう!おまえらに構っとる場合ちゃうねん!!
少しイライラとする、普段だったらこの程度くらいでイライラせんのも
どっかで、ええ男に巡り合えるんちゃうかなーって淡い期待を持っていたからで
もう世界最高のこれ以上のない男に出会ってもうたら、そりゃーもう、この辺にいる男なんてみんな、ガキやガキンチョや!
下手すると人としても認識でけへんわ、犬なんて可愛い表現や、あんなヤることしか考えてないなんて猿やさる。
大阪にちなんでな!天下の木下さんってか!…いや、それはちゃうな天下人を卑下するもんやないか…
ううん、上手い表現がでてこんなぁ、こういうボキャブラリーが無いのがうちの悪いとこやな~
そんなことを考えていると少しイラつきも収まり、進んでいく。
門がある方に向かっていく、なんや騒がしいな?なんやの?新入りコンパとか勧誘とかのシーズンちゃうやろ?
不思議そうに遠くを見て門に近づいていくと、とある話題が耳に聞こえてしまった
「あれって、たまに駅前で座ってる外国の人だよね?やだー近くで見たけどすごくイケメンやぁんジャ〇〇〇も真っ青やでー」
心がひやりとする、脳みそが一瞬でも出してはいけない映像を出してくる
スピカはんが見知らぬ女と仲睦まじく話している姿を
その想像だけで膝をついて泣き出しそうになる、だが、それは想像!ちゃうちゃう!スピカはんがこの大学に来る理由があらへん、うちがどこの大学にいってるとか教えてへんもん!!
ぁ、そうや、スピカはんやったら、何でもできるやん、うちらとは違う原理を操れるやん?うちの居場所くらい一瞬で特定できたりする?
するやろなぁ!!あかんで!!そのイケメンはうちのや!誰にも触れさせへんで!!!
急に速足で歩き出すと千早っちが驚きながらも付いてくる
ごめん!千早っち!うちもう、あかん!千早っちを気遣う余裕があらへん!!
集団に囲まれている中央を見ると背が高いからすぐにわかる!やっぱりスピカはんやぁん!!!!
スピカはんもこちらに気が付いたのか、周りにいる人達に声をかけながら道を開いてもらいこっちに向かってくる!!
あかんもう、これだけで涙出そうや!!うちを見つけたら真っすぐ来てくれるなんて!これ以上の喜びがあるか!?いやない!!!
スピカ - side -
ふむ、もうじき3時か、そろそろ美月の講義が終わるだろう
さて、何処かで座って待たせてもらうのがいいのだが、ふむ、見た限り誰が入っても文句は言われ無さそうだな。
では、遠慮なく門から入らせていただこう
門から入って少し歩いた場所にベンチなどがあるので、取り合えず、そこに座らせていただいて、何も手に持っていないと不審者だと思われるので
街をうろついている間に買った語学の本を開きながら、ソナーをうつ、美月には魔力のピンを打ってあるのでソナーを打てばすぐに反応が返ってくる
ああ、いたいた、どうやら少し離れた建物の3階かな?その辺りで動かないでいる、っということはまだ講義とやらが終わっていないのであろう
だったら、買った語学の本でも読んで待つとしよう、むやみやたらと街ゆく人々の記憶を盗み見るのは、まぁ、普通に考えればよくないことだからな。
自分で調べれる方法を得た、今であればこうやって本を買って読めばいい。
文字などや言葉などの最低限必要な部分は読み取らせてもらったが、深くまで知識を得たわけではないからな。
本を読みながら美月の動きをチェックする、うむ、まだ動き出す感じではないな、まぁゆっくりと待とう。
今日はもうすることがないからな、仕事の種になりそうなこともなかったけどな…
そこはもう、美月に頼ろう、この世界の法とか俺が一から調べるよりも美月に相談する方が的確だろう。
本を読んでいても、ずっと気になるな…
何故だろうか?駅をぶらついて見る物もなくなったので駅前でも同じように本を開きながらベンチに座っているときは視線を感じないのに、ここでは色んな方向から視線を感じるな。
ううむ、女性しか入ってはいけない場所ではないはずだしな、理由がわからない。
普段見ない人がベンチに座っているから話題にでもなっているだけだろう。
ピンが動き始めた、っということは、美月が動き始めたことになるな、では俺も、立ち上がって、迎えに行こうと、すると
「あの!」
見知らぬ女性に声を掛けられてしまう、ここは美月の学び舎、迂闊な態度は美月に迷惑が掛かってしまうので紳士的に対応せねばな
「はい?如何なされましたか?」
にっこりと輝くような微笑みで声を返すと
「ぉぉふ」
よくわからない声で後ずさりするので、どう対応すればいいのか、これが美月だったら背中に手をまわして支えてあげればいいのだがなぁ。
そんなことを見られでもすれば…終わる、確実に終わる。この土地の人は一夫多妻制ではないからな。
適当にあしらうか
気が付くとドンドン人が増えていく、がっつり囲まれてしまったのだが?あと、普通に腰とかに手を触れないでもらってもいいかな?目撃されるとあらぬ誤解を生む
どうやって抜け出そうか迷っているとこちらに向かって美月が走ってくるので
「すまない、待っている人がこちらに来ているので失礼するね」
困り顔で尚且つ、口元は笑みを浮かべ爽やかにかき分けて美月の元へ駆け出す
「美月!」
手を上げ大きく振ると真っすぐにこちらに向かって走ってくる、どうやら、元々、俺が見えていたみたいで真っすぐに来てくれる、助かった
「スピカはん!!」
胸元にばっと抱き着いてくる、情熱的じゃないか、優しく受け止める。
二人で少しの間、抱き合い二人だけの世界を構築していると、周りから【ぇ?うそ?やだぁ】っと色んな悲鳴が聞こえてくるが知ったことじゃない
俺の腕の中に居ていいのは美月だけだ
「ちょいちょいお二人さん、この状況説明してほしいんやけど?」
む?見知らぬ女性が美月の肩を叩いている、美月は…駄目だ顔が人前で見せれる顔をしていないので脳内に直接!
『美月、知り合いが呼んでいるぞ』美月が普段考えているような感じで脳の中で声を響かせると
「ぁふぇぁ!?」余りにも驚いたのかこれまた、人前で出してはいけない声が漏れてしまう。
「ぁ、は、ぇへぇ?ぁごめん千早っちのこと完全に忘れてた、堪忍してな?」
抱き着いたまま顔だけを千早っちさん?の方を向いて話しかける
千早が苗字でちが名前かな?ふむ、この土地に無い響きだから、この土地ではなく異国の方なのだろう。
しかし、フルネームで呼ぶのはこの土地では珍しいのでは?
「って、うわ、ホストさん?ぇ?ぁーそういうことねぇ」
俺を見るなり軽蔑したようなまなざしで見てくる、うん?初対面だと思うが、うむ、要らぬ誤解が生まれた可能性が高いな済まないが関係を良好に保つために読ませてもらうぞ、その思考!!
思考を読んだのでわかる、この人は勘違いをしている、どうやら俺はホストと呼ばれる女性から全てを略奪するろくでなしだと思われたのだろうと。
失礼な!誰が強奪者か!そのようなモノに堕ちた覚えはない。誤解は解かねばなその為にも
「初めまして、美月と仲良くさせていただいております田中と申します。えっと、美月のお友達でいいのですか?千早さん?」爽やかに挨拶をする、相手の懐に潜り込むために。
いきなり下の名前で呼ぶのは距離を詰めすぎだからな。
「ぅ、ぐ、な、なんやこの胸の高まり!?イケメンパワーか!?私は美月のようにほだされへんで!!」少し頬を赤らめながら警戒心が緩む、うむうむ、初手は良い感じではないか。
その一連の流れをみて美月が俺の俺の腹の皮膚を抓るようにする、まったく痛くないのだが、痛がってあげないとな、反応がないのは辛いからな。
「いたた、美月さん?お腹を抓らないでもらえますか?」片目を瞑って痛がるそぶりを見せると
「敬語!色目!きしゃー!」っむ、敬語を使ったのが嫌だったのか、美月の友人であれば礼を尽くすのが常識だと思っていたが、色目?
「すまない、友人の前だから、しっかりと挨拶をするべきかと思ってな愛しい人に恥をかかすわけにはいかないだろ?」素直に状況を説明すると
「いと!?」ぼっと耳まで真っ赤にする美月、本当に初心だな、少しの言葉で照れるその素直な心、っふ、滾ってしまうな…
「うわ、人前で褒め殺すとか最近のホストは手口がえぐいなぁ…」っむ、さっき少しだけ距離が近づいたと思ったら離れたな、誤解を解かねばなるまい
「先ほどは、挨拶の途中ですまない、美月がちょっかいをかけてきてな、許してほしい」
敬語を使わないで微笑みながら挨拶の続きをすると、またも、お腹を抓られる
「いたた、美月?どうしたんだ?」痛くは無いのだが相手をしてあげないと美月がかわいそうだからな
「ため口!色目!きしゃー!」ん?ぁぁ、そういうことか!美月に対しては敬語を使うな、知り合いには敬語を使えと言うことだな!
色目?いろめ…ん?なんだろう、まだ知らぬ言葉だな色が付いた目?目の色を変えろと?人前で?変えれるが何を意味する?
取り合えず青からこの街に住む人たちに会わせて黒にするか、美月を見つめながら瞬きをすると同時に目の色を変えると
「っぶ、ちゃう!そうやないってもう、スピカはん、笑わさんといて!!」
目の色が一瞬で変わったことに驚きを通り越して笑ってしまっている。どうやら、言葉の意図を履き違えたのだろう。
「色目、ちゃうちゃう!そうやないってもう、お茶目さんやなぁ」
よっぽど面白かったのか腹をぺしぺしと手のひらではたいてくる。う~ん、いろめ?
「はえー、美月ちゃんがこんなに笑うの珍しいなぁ、そろそろ紹介してくれへんか?出来れば違う場所で」
そうだな、周りの視線を独り占めしているぞ?俺は構わないが悪目立ちすると学童として面倒なことになるのでは?
「あはは、せやね、せやね、サテンいこいこ」
美月が俺の手を握り進んでいくと周りから色々なやっかみの声が聞こえる、その声を聴いて美月はますます上機嫌になっていく。
後ろから付いてくる千早さんは照れくさそうに顔を俯かせて歩いて付いてくるな。
ん?後ろを振り向かなくても見えるのかって?っは、誰にものを言うておる、魔術を通した第三の目くらい扱えて当然よ。
っふ、俺の心の触れるこの感じ懐かしいな、つい立ち止まって天を見る
月は出ていない、だが、月から視線を感じる、俺が歩んできた道はまだしっかりと残っているのだな、感謝するぞ巫女よ
お前の視線が通るということは時空は開いている、後はどのようにアクセスするかだな。
袖をくいくいっと引っ張られるので視線を引っ張られた先に移すと頬を含まらせている美月がいる
「誰をみてるの!!」涙目で睨むな睨むな、嫉妬深いのは俺を愛しているからで俺しか見ていないからだ、悪い気はしない。
「誰もみていないよ、今の時刻を月の位置や太陽の位置で把握しようとしただけさ」
頭を撫でて誤魔化すと「な、なるほど、うちにはでけへん芸当やわ…」
どうやら納得してくれたみたいだ。また、近いうちにな巫女よ、お前であれば俺の心に触れることを許そう…
…これは浮気じゃないからね?過去の女だからね?これくらいは許してくれるよな?美月
美月についていくと駅前に向かう途中にある喫茶店と呼ばれる場所で、確か、食事や待ち合わせなどに使われることが多いのだったかな?
中に入って奥で食器を磨いているマスターに挨拶をするとスタスタと店の奥に進んでいき、とあるテーブルの奥側にあるソファーに腰を下ろす
「ほらほら、二人とも座って座って」言われるままに手前のソファーに座ろうとしたら美月がじとーっと睨んできたので美月の隣にいくと表情が一気に笑顔に変わる。
その表情がコロコロ変わる仕草に千早さんは笑っていた。
美月が手早く俺の分も飲み物を注文してくれる、正直言えば非常に助かる、何故ならこの星の飲み物は把握しきれていない、水はわかる、コーヒーとか、紅茶とか、名前だけではどういったものなのかわからぬ、こういった気配りが出来るのも良い女だと実感が湧いてくる。
千早さんも飲むものを決めたみたいで注文をしている。
飲み物が到着する前から美月がなりそめを千早さんに順を追って説明していく、一部、ぼかしたり話してはいけない内容は伏せている
どうやら、俺はこの街にふらりと立ち寄った旅人ということになった。うむ、間違いではない。
「そういうわけなんで、宜しくお願いしますね千早さん」にっこりと改めて挨拶をすると
頬を膨らませてじとーっとこっちを見てくる美月、うん?ちゃんと敬語で話しているぞ?どれがどれを間違った?
「はぁはぁ、イケメンが間近くで微笑まれるとこんなにも破壊力があるんやね」
千早さんが心臓を抑えながら視線を明後日の方向に向けて呼吸を乱している…チャームは使っていないが?ううむ、この星の女性は惚れやすいのか?
ただ、微笑んだだけだがな?…っは!!そうか いろめ とは相手に微笑むなっということか!?いや、それはさすがに失礼ではないか?
相手の印象を下げる行為は良くないだろう?ううむ、嫉妬ゆえか?
それであれば、しょうがない嫉妬を受け入れよう!
相手に失礼をする方が後々、美月の立場がよろしくない結果になるからな!っであれば、美月の嫉妬を全身全霊で受け止めるが男の矜持!
テーブルに置かれる黒い液体、ふむ、どうやって飲むかと同じものを頼んだ美月を見ているとカップに入った白くて四角い物を一つ入れて、温められた、これはミルクだな、それを入れて一緒に添えられるように出された小さなスプーンでかき混ぜて、飲むのか、なるほど、特に作法とかは…周りを見渡しても堅苦しい雰囲気ではないので、なさそうだな。
美月と同じようにして口に含むと
「…ほぉ、香りが良い」
口の中に広がる酸味と苦みが程よく心地が良い、先ほどの白くて四角いやつは恐らく砂糖か?甘味がある、ミルクも良い、一番いいのが、この独特の香りだ。
この星の食べ物や飲み物は素晴らしい、うむうむ、洗練されていてとても好ましい。歴史を感じるな。
「スピカはん気に入った?」俺の反応が嬉しいのかニコニコと笑顔で此方の様子を伺っているので素直に感想を述べると
「よかったぁ、うちなここのコーヒーがいっちゃん好きなんよ、気に入ってくれて嬉しいわぁ」
そういいながら俺の左腕に頭を擦り付けてくる、その仕草を見て目の前に座っている千早さんが呆れた顔をしているぞ?
「そんなデレデレな美月をみるの初めてやわぁ…はぇ~女って恋するとこんなに変わるんやなぁ…」
その呟きに「っでっしょ~?千早っちも恋しな?ええで?とぶで?世界がかわるで?」ふっふ~んと俺の腕に自慢気につかまりながら甘えてくる
「ぐぎぎ、そんなイケメン捕まえれたらさぞかし気持ちがええやろなぁ…」
悔しそうにしている、ふむ、やり取りを見ている限り二人の仲はかなり気の知れた相手なのだと伝わってくる。
っであれば、愛する女の為に俺が出来ることは、ただ一つ
何も言わないで流れに身を任せることだ、女同士の会話に割って入るのは良くないからな。
…嫉妬深い美月の機嫌を損ねるのは得策ではないだろうしな。
終始、にこやかに二人の弾む会話に耳を傾けながら、店内の状況をじっくりと観察する。
カウンターと呼ばれる席の奥で先ほど頂いたコーヒーっという飲み物を作っていたのが入ったときに食器を磨いていた口の上に整った髭を生やした初老の男性だ。
落ち着いた雰囲気がこの店と非常にマッチしている、よその世界でもこのように全体の雰囲気が綺麗にマッチしている店はない。
非情にセンスが良いのだとうかがえる。
良いな、この世界は本当に優雅で洗練されている、俺が生まれた世界でもここまで食や飲み物、全てにおいてここまで、洗練されていない。
種族全体が絶望的な滅びを運ぶ相手と闘争を繰り広げているわけではない、だからこそ、戦う以外に人生の全てを注ぎ込めるのだろう
我ら戦士が戦うことだけを人生として全てを捧げるのに対して、この星の人達はそれ以外の己がしたいことに全力を出せるのだろう。
平和だからこそ、というやつだな。
魔力が乏しい星、生命の樹もない、だからこそ、星喰いに見つかっていないのだろうな。
永遠に見つからずにいて欲しい物だな、星喰いは魔力の乏しい星に興味は無いと、思いたいがな。
そんなことを考えていると袖を引っ張られるので美月の方に視線を向けると
「スピカはん、退屈?」悲しそうな顔で此方を見てくるので
「いや、まったく、この店の雰囲気を堪能しつつ、二人の会話に耳を傾けているから退屈とは思わないが、気を遣わせてしまってすまない」
心配してくれる美月の頭を撫でると嬉しそうな顔で甘えてくる
「あーもう!ごちそうさまや!そろそろ私はお暇させてもらいます!」美月の甘える仕草に苛立ったわけでは、なさそうだな、席を離れるきっかけを探していたのだろう
千早さんの仕草も理解しているのか冷静にカバンから時計を取り出し時刻を確認している
「ほな、うちらもいこか?」
美月が立ち上がるので、俺も立ち上がりソファーから移動する、美月がすっと何か書かれた紙を手に取って初老の男性の方に向かっていく
「いつも美味しいコーヒーありがとな!お会計お願いします」すっと紙を渡すと「あ、私の分は自分でだすよ~」千早さんが慌てて美月の近くに行く
ふむ、どうやら料金の支払いをするようだな、ポケットの中にある朝に貰ったお金はまだまだある。
先ほどのメニューを見て料金は確認しているので
「ここは、俺が出してもいいか?」ポンポンっと美月の肩を叩くと「ぇ?あるん?」どうやら美月からすると朝に渡した一万はとっくに使い切っているのだと思っているようだ
「大丈夫、まだあるから」ポケットからお札を取り出し初老の男性に渡すとお釣りを渡されるので受け取る
「あ、私の分いくら?」財布を取り出して待ち構えている千早さんに「いえ、高い物ではないですのでここは、俺が出しますよ」にっこりとほほ笑むと
ほえーイケメンやなぁっと呆けている千早さんを見て「色目!きしゃー!」またも、美月を嫉妬させてしまったみたいで涙目で俺の腕を抓られてしまった。
お店から出た後、店前で千早さんと別れた後は二人で手を繋ぎながら食材ないから買いに行こっと美月に誘われたので付いて行くことに
食材が売っている店に行く途中で唐突に美月が
「スピカはん、よぅ、お金残ってたね?っていうか、一万でよーその服買えたなぁ」
服?…ああ、なるほどそういうことか、朝っというか、出会ってからずっと一緒の服装をしていたのだが、街を見て回っているときに、美月の部屋に転がっていた雑誌の名前を憶えていたので書店でその雑誌に書かれている服飾をチェックしてトイレで服をその服飾に変形させただけなんだがな。
そう、俺が来ている服は、俺の世界では有り触れた服でな、魔力を通せば己が思い描いた服に変形する。
当然、防御力も各種耐性も非常に高く、これと時渡の鎧がなければ時空の狭間を通るのは不可能なほど、防御力が高い。
「美月よ、驚かずに聞いてほしい」そっと美月の耳元に口を近づけ「本を見て創った」っと言うと「っは?ぇ?嘘やろ…そんなこともできるん?」
驚きの表情をする美月にこくりと頷くと
「はぁ~えー、それは反則やわぁ…ええか?スピカはん、その服ってな、めっちゃくちゃ有名なブランドで上下合わせると軽く10万いくんやで?」…む、そんな高級な服飾だったのか!?
「そんなビシっと決めてる人なんて、この街ではそうそうおらへんもん、ホストみたいやなー」
ホスト?ん?女性を食い物にしている強奪者はこういった服を着るのか?
「むぅ、そうか、ホストとは悪い人のことを言うのだろう?以後、気を付けよう」反省していると
「ぇぁ?ちゃうちゃう、ホストみたいでかっこええって意味やから、そんな悲しそうな顔せんといて…」
…ん?情報の祖語があるな確認しよう
「俺の知っているホストは女性を食い物にして全てを奪う強奪者と認識しているが?」俺の言葉に美月は驚いた表情で
「ちゃうちゃう!ホストっていうちゃんとした職業があるんや!そういう経験をした人もいるやろうけれども、それは夢を買っただけや、甘い一時を高い値段でこうただけや!」
なるほど!高級男娼のようなものか、他の世界でもそういうのにハマってしまった貴族が根こそぎつぎ込んだっという話はよくあるからな。
偽りの愛で偽りの夢の中にどっぷりと漬け込んで現実に返さないようにする、その分、楽しい思いをしてもらったのだから、当然それ相応の対価をいただくっということだな。
なるほど、よろしくない方法で根こそぎ強奪するってわけではないのだな、なら、悪い意味ではないのだろうが、最初に見た時は悪意を感じたのだが?
っとなると、そういった悪いやつもいるってことだな、どの世界でも自分さえよければ良いという考えを持った自分都合の人はいるものさ
悪とは言わないが、運が悪いと因果応報だったかな?先ほど読んでいた本にその様な内容が書かれていたな。うんうん。
「では、美月はこの恰好を良しとする?悪とする?」美月の好みであれば続けよう、違うのであれば変えればよい
「…むっちゃ似合ってて最高やとおもいますぅぅ」耳まで真っ赤にして目線を下に下げるほど似合っているのであれば、良しとなるな。うむうむ。服装を変えてよかったよかった。
その後は、二人で仲良く夕飯の材料を買って家に帰る、そう、二人の愛の巣へ…
朝日が俺に差し掛かる、もう朝か早い物だ。
それにしても、寝ずに続けてするなんて、久しぶりだな女を覚えたての頃を思い出す。
美月は限界がきて寝てしまったが、あまり無理をさせすぎないようにせんとな
回復魔術を使って美月の体を癒す、ついでに疲労が取れるやつも使用して、念のために魔力を必要としない体でも魔力を軽く流す…
ん?魔力を受け止め貯留する臓器はあるのか、ただ、魔力を精製する臓器が退化しただけ、ってことか?
…そう考えると祖は何処かで繋がっているのかもしれないな
古の教えでは人という種の原点であり頂が居たのだと言われている、眉唾ものだがな…俺が教えてもらった時魔の一族からの古い言い伝えだと
星喰いと人の原点が幾億年戦い続け、人の原点が星喰いに敗れ、その遺伝子をありとあらゆる世界にばら撒き様々な世界で人という種が発展したのだと
なので、人の形を成しているモノ全てが原点は同じだと言う、っふ、確かめようもない歴史だ、そういったロマンを俺は良しとする。
納得できる部分もあるからな、人という見た目が同じだけで全く別の種であれば、別の種同士では子を生さない、だが、俺の子は数多くいる。
つまり、祖は同じで何処かしらの繋がりがあるからだろう。
人類創成期ってやつだな
だから、俺と美月も今までと同じようにきっと、俺の子を産むだろう。
美月と一緒に育みたいものだな…そのためにはこの世界で稼ぎ養わないといかんな。
やはり、仕事を探さないといけない、美月が起きたら相談しよう。
今は、気持ちよさそうに俺の太ももを枕にしているのだ、寝かせてやろう、後3時間もすれば目覚ましがなるからな、確か今日は8時に起きるのだったかな?
差し込む朝日を浴びながら俺は明日を願う、それは、たった一人の男として、家族を守っていく、愛する女と共に歩むと決めた
けれども、与えられた使命は絶対に忘れない、忘れるわけにはいかない。
星喰いはたとえ、魔力のない世界でも
容赦なく種子をまくからだ
破滅の種子を…
希望的観測なんぞに頼らぬ、俺は俺の手で未来永劫、愛する妻を守り切る。
その為には 星喰い 貴様という存在は生かしておくわけにはいかない、いずれ、降り注ぐ厄災となるのであれば、接近する前に摘み取るまで!!!
この宿り木を守るために、俺は、一族の使命ではなく俺が人生の使命として全うするまでよ!!!
…そんな、熱い思いを抱いていた時期が俺にもあったなぁ
気が付けば、何年経つ?っふ、数えたくないものだな
新聞をたたみ、ふかしていたタバコの火を消す。
タバコをいくら肺に入れたところで俺にニコチンやタールは排除されるので何も意味をなさない、なので、俺が吸うのは香りを楽しむフレーバーが強いタイプのタバコだ。
海外にしかないので、わざわざ飛んで買いに行っているのさ。
フルーティーな香りが良き
さて、仕事と研究に没頭するかな。
妻からの仕事の依頼が来るのは昼過ぎだからな、それまでしっかりと己に課せられた使命を果たす為に今日も研究だ。
祖国から渡された使命を胸に旅立ち、異世界を渡り使命を果たす!憎き怨敵を討ち滅ぼすまで! TF @gatf
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