まずは、347,577文字の長編を書き上げた作者に賞賛を。
長編は、書くのも読むのも「旅」だと思っているのだが、
この物語はまさに、主人公と共に、長い、長い旅路を行くこととなる。
作者が一体どれほど、一人一人の人物の感情とバックグラウンドに寄り添い、
この物語の旅の終わりと、更にはその先に向けて、心血を注いだか。
熱いエネルギーに、同じ物書きとして撃たれた。
多くの文献や資料を基に描かれた、鮮やかなサーカスの場面。
主人公と共に深みが増していく、クラウンとしてのパフォーマンスのディテール。
訪れる国々の情勢と人々、それによる主人公の心の変化。
正直、泥くさい主人公である。
器用にたち振る舞うことなどできず、汗と涙と、時には血を流し、地べたに這いつくばりながら、文字通り泥まみれになりながら、
生きるとは何か、人と関わるとはどういうことかを、
読み手にこれでもか、これでもかとぶつけてくる。
旅すること
人と出会うこと
愛すること
生きることって、
どんなに熱くてどえらいことなのかを教えてくれる、とある旅の物語。
熱の塊を受け取ったような読後感である。