第125話「優しいお父さん?」
「美咲のお父さんって、どんな感じなんだ?」
彼女の家を目指して歩く中、気になったので聞いてみる。
「ん~?」
美咲は唇に人差し指を当て、天を見上げながら考え――
「私たちにはとても優しくて、まじめなお父さんかな?」
――と、意味深なことを返してきた。
「私たちには、ね……なるほどなぁ……」
「あっ、氷華ちゃんにも凄く優しいよ……?」
俺が呟いた言葉を敏感に拾った美咲は、顔色を窺うように補足をしてきた。
「わかってて言ってるよな?」
「な、何がでしょうか……?」
「それってつまり、俺というか、男にはかなり厳しいお父さんなんじゃないか?」
「…………」
美咲が誤魔化していた部分を言葉にしてやると、わかりやすく目を逸らされてしまった。
まぁ、元々聞いていた感じからわかっていたことではあるのだけど。
「ここあ、おこられる……?」
「あっ、いや、心愛ちゃんに怒ることはないよ……!」
心愛が目をウルウルとさせて怯えたように美咲を見ると、美咲は慌てて訂正した。
先程のは俺のことを話していたので、まさか心愛がこんな反応をすると思わなかったんだろう。
ましてや、男という話をしていたのだし。
というか――。
「よく考えたら俺、自分のことは何言われてもいいけど、心愛を傷つけられたり悪くもないのに怒られたりしたら、キレるかも……」
相手が美咲の父親ということで、何を言われても我慢する覚悟を決めてきたつもりだったけど、命より大切な心愛を傷つけられたら、我慢できる自信なんてない。
というか、我慢する気もない。
「大丈夫……! 大丈夫だから……! だから、私を捨てないで……!」
いったいどういう解釈をしたのか、またもや美咲は誤解を生むようなことを言ってきた。
おかげで、すれ違ったおば様方が俺たちを見ながら、ヒソヒソと話し始める。
気を付けないと、これを学校でされたらたまったものじゃないな……。
「いや、美咲こそ大丈夫だから……。たとえ美咲のお父さんと折り合いが悪くなっても、美咲に責任があるわけじゃないし、ちゃんとそこは切り離して考えるからさ……」
ただ、どう付き合っていくかは考えないといけないかもしれないが。
心愛に変な人を近付けたくないしな……。
「にぃに、たいへん……」
いつもなら美咲の味方をする心愛だけど、俺が厄介ごとに巻き込まれていることを敏感に察したらしく、珍しく俺の心配をしてくれた。
そう、お兄ちゃんは大変なんだよ。
そんなことを思いながら、美咲へと視線を戻す。
「まぁ、心愛に何かされなければ大丈夫だ」
「うん……さすがに、いくら私の彼氏の妹だからって、幼い子に酷いことは言わないはず……」
「あぁ、信じてるよ」
美咲と笹川先生のお父さんなわけだし、根はいい人のはずだ。
それこそ、笹川先生の件があったから、娘のためを思って反対しているだけだろうし。
ちゃんと話せば、わかってくれるはずだ。
そんな甘いことを考えていた俺は――
「帰れ」
――美咲の父親に、門前払いを喰らってしまうのだった。
玄関から出てこないので、顔も見たくないらしい。
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【あとがき】
いつも読んで頂き、ありがとうございます!
先程、新連載
『お嬢様学園に潜入させられた僕、知らない間に姫君たちに気に入られていた件』
を開始しました!
本物のお姫様たちにチヤホヤされる、ラブコメです!
猫系の獣人お姫様とか、エルフのお姫様とかも出ます!
(出さないはずがない!)
ということで、
↓のURLから読めますのでよろしくお願い致します!
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