魔王軍ルート


 その日、魔王国は戦争に勝利した。


運命の審判ラッキーミス”によって呼び出された魔王の手によって、悪魔の王ソロモンは瞬殺され全てが終わってしまったのだ。


 強すぎやろ魔王。なんか原作よりも強くなってるし。なんか俺の知らん技を使ってたし。


 最後の最後で全ていい所を持って行ってしまった魔王によって、魔王国の勝利は決定的となった。


 と同時に、反乱軍の勝利も確定。


 これにて、原作ストーリーで胸糞展開を作り続けたリバース王国は消え去ったのである。


 捉えられた王とその親族、そして平民を人とも思わない貴族達は今頃民の制裁を受けている事だろう。


 権力によって守られていた王が、権力を失えばただの人に成り下がる。そして、国中から恨みを買っていた王は石を投げられ、罵詈雑言の嵐の中に身を置き、最後にはその首が掲げられることとなるに違いない。


 可哀想だとは微塵も思わない。むしろ、早く死んで欲しい。


 アランの未来を奪い、こんなにも楽しい魔王国を消した罪は重い。


 まぁ、この世界ではアランは笑い、魔王国は無事に存続しているので王からしたら“何を言っているんだこいつ”案件なのだが。


 そして、王女リーシャは死んでしまっていた。やはり悪魔の王を復活させたのは彼女であり、その手の中にはペンダントが握られていたのだ。


 プレイヤーからは滅茶苦茶嫌われていた存在であり、正直俺もかなり嫌いなキャラであったが、性格はかなり優しく聖女の名にふさわしい人であったのは間違いない。


 どうせ掴まって殺されていた運命の中で、民に石を投げつけられることも無くそこまで悲惨な死に方をしなかっただけ王女は幸せだったのかもな。


 願わくば、次の人生初平凡でなおかつ幸せな生を歩んで欲しい。


 滅びたリバース王国は、国が安定するまでの間レジスト公爵家が管理することになるだろう。


 王の存在は不要とし、この世界で初めて民主的な国ができ上がるかもしれない。


 魔王が暴れ、悪魔の王が暴れて全壊してしまった王都の立て直しから始まるだろうから、先は長いだろうな。


 ちゃっかり、恩を押し付ける形で魔王国が支援する事になっているのは流石である。


「終わった........これでようやく全部終わったな........」


 リバース王国を後にして、魔王国へと帰ってきた俺は誰も居ない魔王城のベランダで街を眺めながらつぶやく。


 この世界に転生してから11年。長いようで短かったメインストーリーは、遂に終わりを迎えたのだ。


 魔王国の周囲で勇者の職を持つ者は存在せず、四ヶ国に勝った魔王国に喧嘩を売る者は居ないだろう。


 またいつの日か戦争が起こるかもしれないが、少なくともその戦争は俺の知るものでは無い。


「思えば始まりはアランの性格を変えた所からだったな。アランの性格を変えて、村を守り、魔王国に行って戦争を勝ち、アランを救出してまた戦争。村を守ってからは一年しか経ってないのか。随分と駆け足で来たもんだ」


 メインストーリーでは、魔王国との戦いは七年も続いている。


 確か、アランが23歳の時に戦争が終わっているからな。まさか、本格的に魔王軍との戦争が始まる前にメインストーリーが終わるとは欠片も思ってなかったよ。


 もっと長期的にやるものだと思っていた。


「この先はどうなるのかね。DLCのラスボスも倒しちゃったし、ここから先は本当に分からないや。知識だけが、俺の使える手札になるのかな。ぶっちゃけ、戦力に関してはアランと魔王がいれば事足りるし。そうでしょ?魔王様」

「くははははははっ!!気づいていたか!!1人黄昏ておったから、珍しく空気を読んだと言うのに!!」

「後ろで物音が聞こえれば流石に分かるよ。どれだけ魔王様にイタズラされてきたと思っているのさ。どうせ、今もなにか驚かせようとしていたでしょう?」

「む?それもバレていたとはな!!くははははははっ!!今後、ノアにイタズラするのは大変そうじゃ!!じゃが、妾は知っておるぞ。お主はその場の流れに弱いということを!!つまり!!その流れを作ってしまえば妾の勝ちなのだ!!」


 正確に俺の性格を読み取るな。確かにそうだけれども。


 今後も魔王にとって、俺はいい音のする玩具なんだろうな。だが、そう簡単にやられると思うなよ?俺だって学ぶ生き物なのさ!!


 俺は、大きく息を吸い込むと、街に向かって大声で叫ぶ。


 魔王に勝てないのであれば、勝てるやつを呼べばいい。


 俺には、俺を助けてくれる頼もしい勇者と上司がいるのである。


「アラーン!!ニーナ!!レオナー!!魔王様に虐められるー!!助けてー!!」

「魔王様、許さない」

「ノアを虐めるとか、殺すよ?殺すよ?ぶっ殺しちゃうよ?」

「これは革命家の気配。共産主義の赤い革命」


 名前を呼んだ瞬間、部屋の扉を開けて入ってくるアランとニーナとレオナ。


 呼べば来てくれるとは思っていたが、既にスタンばっていたんかい。さては魔王がこの場に来た時点で呼ばれることを知ってたな。


「ファ?!待て!!妾はまだ何もしておらぬぞ!!」

「まだってことは何かしようとしていたということだろう?アラン。この場合は許されるのか?」

「もちろん“死刑ギルティ”だよね。ノアに酷いことをしようとする王なんて、この世界にいらないよ」

「トリ、ごー!!」

「カァー!!」

「えぇい!!相も変わらず姫の毒牙にかけられおって!!撤退じゃ!!」

「逃げた!!追うぞ!!」

「逃がさない」

「待てー!!」

「カァー」


 最初から殺す気マンマンの3人を目の前に魔王は速攻で逃げるが、もちろんそれを許す3人ではない。


 多分あっさり掴まってお仕置されるな。何もしてないけど。


「ノア、行くぞ」

「ノア、行くよ!!」

「にぃに、来る」

「はいはい。分かったよ」


 こういう世界を俺は望んだ。またいつの日か、この平和を脅かす驚異がやってくる時が来るだろう。


 だが、メインストーリーと言う神の試練を乗り越えた俺達に倒せない敵はいない。


 俺は、手を伸ばすレオナの手を握り返すと、ベランダから飛び降りるのであった。


 ━━━━━━━━━


 ??年後。


 平和となった魔王国で、最も広い広場。


 そこに、両手を握られた1人の少女がやってくる。


 彼女の両隣には金髪イケメンの青年と、どこか不思議な雰囲気を纏った可愛らしい美女。


 少女は、その広場に建てられている銅像を指さすと青年に話しかけた。


「あれは誰なのー?」

「あれは、この国の英雄にして僕達のお姫様だよ。そして、のパパでもある」

「パパ、なんでドレスを着ているの??」

「だって君のパパは可愛いんだよ。今は大分イケメンになっちゃったけど、それでも女装させたらすごく可愛いし、何より行動や仕草がとても可愛いんだよ。あー、思い出したら頭がおかしくなってきた」

「にぃ。一旦黙れ。レアの教育に悪い。私たちは、二人が居ない時の面倒役。レアが悪い方向に走ったら、にぃにに怒られる」

「あはは。人の事言えなくない?この前、共産主義と社会主義の本を読み聞かせてたでしょ」

「あの後、すごく怒られた。買い物の約束を無しにされてとても悲しい」


 レアの左手を握る美女はそう言いながら頬をふくらませるが、青年はちゃんと我が子の教育を間違えてない親友にひと安心する。


「隣はママ?」

「そうだよ。僕の上司であり、頼れる人。何故かスーツを着てるけどね。結婚式の時は面白かったなぁ........」

「あれはかっこよかったし、可愛かった。シスターマリアも泣いてた」

「カァ」


 姫の隣に立つは、スーツ姿のイケメン。しかし、その骨格はどう見ても女性のものであり、スーツを着るのは少々おかしい。


 何故ならば、その隣の姫はウェディングドレスを着ているのだから。


 父はウェディングドレス、母は白いスーツ。


 普通は逆のはずなのである。


「もう、3年も前の話か。時が流れるのは早いね」

「ん。にぃにとレオナの結婚式からもう3年。時の流れは早い」

「だね。レア、パパとママは好き?」

「大好き!!」


 一時の平和。その光景は、かつて理論上最強が挑み覆した結果の未来である。


 アランとニーナは、ノアとレオナの娘“レア”の元気な返事を聞いて、優しく微笑むのであった。



 完。



 後書き。

 これにて完結。個人的にはそれなりに綺麗に纏わられて満足しています。途中から私の性癖暴露大会になってたきもしますが、気のせい気のせい。

 さて、色々と語りたいことも多いですが、余韻をぶち壊したくないので簡潔に。

 ここまで読んでくださった読者の皆様。本当にありがとうございます。元々は、カクヨンコンクール用に書いた物語ですが、沢山の人に読まれてとても嬉しかったです。本当にありがとうございます。

 で、物語が終わったらどうなるかって?そうだね新作だね‼︎

 と言うわけで、また新しい物語が始まります。一日お休みを頂いて、木曜日の0時(水曜日の24時)に新作を投稿したいと思います。おねショタとショタショタは描いたから、次はオジロリ辺りを書きたい。

 では皆様。またどこかでお会いしましょう‼︎改めて、応援、ありがとうございました‼︎

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【理論上レベル1でも魔王を倒せる最強(笑)のネタキャラ】に転生したので、魔王軍ルートを開拓したい 杯 雪乃 @sakazukiyukino

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