10/22 夢を紡ぐ者たちは 3

私は見ていた。私たちはふたつの分岐点を通り過ぎた。そして、過去の概念を取り戻すことを選んだ。君たちの前に新たな道が拓ける。この先は長いが、心配はいらない。私は願う。この先の道の安寧を。然してなにかの危険に身を於く事になった場合の助けになるだろう。

地図が追加された時のような意味の分からない文言を高澤は律儀にメモし、それぞれの強撃を確認した。

"高澤 増撃 自分を増やし、八方から同時に攻撃を行う。20秒で分身は消失する。

中村 絨毯爆撃 自分の目の前に火の壁を作り、敵に向かって火の壁を前進させる。

宮石 ダイアモンドの礫 鋭いダイアモンドを取り出し、敵に持続的なダメージを与える。

山田 動物園の檻 敵のまわりに幕を貼り、敵がそれに触れた時に大ダメージを与える。

城守 音の波 敵に対して人体に影響する程度の音波を当て続ける。音波を浴びている間、敵は弱くなる。

山本 扇動 味方に継続的な強化を与える。

吉宮 キーフレーム 自分が作ったものを軌道を定めて動かす"

「これでなんか気付いただろ、涼」

「なんかこれ、ゲームみたいだな。不自然だ」

「その通り、これはゲームだろう。でもなんのゲームか?それから抜け出す方法は?なんで僕たちはここにいる?」

「私はこう思うんだけど、これはゲームなんかじゃない。一応現実だと思う。そしてどこかで、夢を見ている。」

なぜなら、と山本は言う。

「深い傷を負っているにも関わらず、普通に起こり得るだろう反応が起きない。痛みはあるけど弱いし、意識も飛ばない。」

「たしかにそうだ。それならこの夢から覚める方法を探そう、僕は涼にキーがあると踏んでるけどどうだろう」

「は?」

「涼だけ能力の種類がおかしい。異様に強いんだ。ゲームや小説の主人公補正とやらがこの夢にも反映されてるんだとしたら、涼がこの夢の主人公だろう。それなら、鍵は主人公にあると考えるのが妥当だと思う」

「でも夢なんだろ?」

「確かに夢だが、これが夢にしてはおかしい。全員が同時に同じ夢を見て、同じ場所で話すか?これは夢だが夢じゃない、世界が夢を見ている。そして奇しくも僕たちが取り残された。そして夢だとしても小説だとしても想像の産物だろ?主人公補正があって当然だ」

よく分からないがそうなんだろう。

「で、それは置いといてどうするさ」

中村が会話をぶった斬る。

「とりあえず、駅に行こう。マップがなんでか反応している」

高澤は地図を見ながら答える。

ビルが溶け始めた街の中、僕たちは歩く。駅に着いたが何も起こらない。とりあえず駅を隅々まで調べる。ホームに降りた時に、僕たちはそれの意味を知る。祭谷と北宮を結ぶ線路に、見慣れない車両が止まっている。それは1両しかなく、とても奇抜な形をしている。

「うーん何があるか分からないし明日にしよう。駅にホテル入ってるしそこに泊まろう、どうせ誰も見ないしいっその事スイート入るか?」

僕らは歓喜し、いそいそとカウンター裏に置いてあった鍵を形ばかりの謝罪を添えて拝借する。適当に作った食事をかきこみ、2日ぶりに悲願の入浴を達成し(汗で大変なことになっていた)、僕たちはいつもより少し長く感じる1日を終えた。

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