10/22 夢を紡ぐ者たちは 2

僕は耳が敏感だ。生まれつきそうなのである。他の人は気にならないようなちょっとした雑音に邪魔される。だから僕はヘッドフォンを着け、雑音をかき消すために音楽を聴く。少なくとも、それは雑音より綺麗な、整った旋律を奏で、僕の集中を切らさない。しかしそれは自分の外との交流を断ち、僕をより臆病にさせた。僕が聞く音楽はもっぱらj-popとVOCALOIDだけだ。彼らは僕の心を鎮め、奮い立たせ、勇気づけることが出来た。僕はリュックの底からしまっていたヘッドフォンとスマホを取り出しながら思い出す。ビルに近づくにつれ謎の音が聞こえはじめた。最初に聞こえたあの音を、より不快に、より惨めにMIXされたような音だった。僕はヘッドフォンを頭につけ、お気に入りのプレイリストを再生する。全てを覆い隠すような激しいイントロがかかる。違う、今はその気分じゃない。次の曲にすると、それは世紀末的な、近未来的な印象を与えるインストだった。一曲リピートで再生する設定をして、スマホをリュックに戻す。それは今の北宮の街並みに最も似合っていると言って過言ではなかった。雑音は消えた。周りから音が消えた。僕は自分の中の世界に引き込まれる。

これからどうするかはもう話し合って決めているから問題はない。なにか話す時だけ音楽を止めよう。

ビルの林の隙間を縫うように進む。僕たちは入口に辿り着く。それは横倒しになったビルの屋上である。僕たちはそれをよじ登り、中に入る。光に向かって進んでいくと、それが中空に浮いているということ、その下に円形闘技場のような場所があるということがわかった。

「あーこれ」

「ああ...」

「明らかにボス戦の雰囲気...」

「そりゃそうだよな見るからに重要そうな雰囲気醸し出してるし...しかし何が来るんだ」

全員の雰囲気が通夜に落ちる。しかし進まないわけにも行かない。僕はヘッドフォンの音量を上げる。テンションを上げる。前に進む。闘技場のような場所に登ると、が現れた。

台のまわりのビルが崩れる。瓦礫が浮き上がる。尋常じゃない量の瓦礫が中央に向かって集積する。僕たちはその大量の瓦礫の攻撃を避ける。そして、瓦礫が集積し、爆発が起きる。爆風の中心には、人が立っていた。

飛び散った瓦礫を制御下に置き、人でありながら人ならざる者は3つの大型の瓦礫の塊を生み出す。僕は急いで防御を固める。中村は、大量の「花火」を放ち、順当に岩を崩す。そうしたら、敵は瓦礫をひとつひとつに分解し、追尾弾のように発射する。間一髪で避けつつ、僕は「理解」する。しかしそれは、【第一人型機構EE-12000-001】と表示されたきり沈黙する。

「機械だ!」

僕は叫び、電撃銃を放つと、事実それはしばらく沈黙した。しかしすぐに回復すると、憤怒の形相で猛撃を仕掛けた。僕は避けきれず、もろに攻撃を食らったが、シールドのおかげで切り抜ける。棒を握り、大鎌を起動し、小柄な身体を使って懐に潜り込み、大鎌で切りつける。それは半分くらい切れ込みを入れたところで止められる。人を模した傀儡は僕を投げ飛ばす。城守が敵に衰弱をかける。山田も鈍足をかけ、山本が僕たちに増幅をかける。しかし、敵は強かった。いくら攻撃してもビクともしない上にすぐに反撃を行い、疲弊させる。しかし、畳み掛けるような攻撃にはついに耐えられなかったらしい。高澤の斬撃、僕の大鎌、山田の花火、宮石の「追撃人形」を四方から食らった敵は倒れ、消えた。それと同時に雑音が消え、上の光も消えた。そしてビルはゆっくりと消失を始めた。とりあえずその場でへたりこんだ僕達のホログラムが飛び出す。僕たちはそれを見て浮き足立った。「強撃」解放を示していた。

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