おすすめのヤンデレ小説はありませんか
オーダマン
おすすめのヤンデレ小説はありませんか
※この作品はフィクションです、実在する小説とは一切関係ありません
「クソ、結局純愛モノじゃねえか!」
俺は思い切りスマホを投げ捨てる。
思い切り、といっても壊れては小説が読めなくなるから
ベッドの上の掛布団の上に、投げ捨てた。
俺の名前は籔島 冴太。
趣味で小説書きをやっていた。
といっても、最近では事情があって書けずにいるんだが。
俺はつま先の先に飛んでいってしまったスマホを見る。
スマホはベッドの淵ギリギリまで飛んでいき、
壁に当たって止まっていた。
「おーい、スマホ取ってくれ~!」
俺は同居している彼女、優江を呼び出す。
彼女は俺の幼馴染兼彼女。
家が隣で、よく昔は窓を飛び越えて家に来たもんだ。
今では彼女の家の部屋の一室が
俺の部屋となっている。
階段を上がる音が聞こえてくる。
扉を開けて部屋に入れば、飛んで行ったスマホを拾い上げて
中身を覗き始める。
「またヤンデレものの小説探してたの?」
つい、と指で画面をなぞる。
きっと今、視聴履歴欄を見ているのだろう。
「ああ、でもこれといって当たりは無かったなぁ」
はぁ、と溜息をついて愚痴をこぼす。
そう、俺はここ最近、ヤンデレものの小説にハマっているのだ。
といっても使えるものは無いので、
ヨムカクやなれる系作品ばかり閲覧している。
しかし、ヤンデレでタグ検索してみても
中身はヤンデレ特有の束縛、メリーバッドエンド、
もしくはサスペンスな要素が無いものが多い。
どちらかと言えばヤンデレヒロインを魅力的に描く物が多いのだ。
「でも、なかなか面白いものもあったけどな」
「へえ、どんなのがあったの?」
単純にストーリーが面白いものもあれば、発想が面白いものもあった。
「そうだな…例えば…」
俺は優江に読んできた様々なヤンデレ小説の感想と解説をしていく。
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No1:
男嫌いな幼馴染を助けたらヤンデレと化した件について
トラウマの内容が実父からの性的虐待な幼馴染のヒロインと男主人公の話。
幼馴染のためトラウマの内容を知っているから、距離を詰めれないでいる所に
強盗が幼馴染の家に押し入る。
主人公が助けに入った所をきっかけに幼馴染がヤンデレ化。
今まで毛嫌いしていた幼馴染に好意を寄せるようになり
距離感が掴めなくて攻撃的になったりする魅力的なヤンデレヒロイン描写。
最終的には純愛に落ち着く。なんでや。
No2:
いつも1人の時間を邪魔する後輩に彼女がいると告白してみた結果
タイトル詐欺、だが面白い。
ウザ可愛い系の後輩がヤンデレ化するかと思いきや
彼女、幼馴染、そして3人の過去から都市伝説の話に繋がり
最後は後輩が記憶を取り戻したおかげで都市伝説を封じる事が出来るという
感動できるエ〇ゲみたいなシナリオ。
面白い、でもヤンデレじゃないよねこれ。
No3:
ヒロイン達が好感度反転後に記憶が戻ったらヤンデレしてた件
ちゃんと病んでる話。
話は既にハーレム形成している主人公とハーレムメンバーで構成されている。
ハーレムのヒロイン達は敵の策略により好感度反転し主人公を長期間に渡り罵倒。
主人公が原因解決した所、ヒロイン達の好感度が元に戻るが
好きだった主人公に行った非道な行為の記憶が残ったままで見事に全員ヤンデレ化。
発想が天才。ただファンタジーモノの為、俺の欲しいヤンデレではない。悲しい。
あと先月から更新が停まっており、続きが読めない。残念。
No4:
彼女作りたいと言ったら幼馴染がめっちゃ邪魔してくる
主人公がめっちゃアホな無自覚ヤンデレ系。
アホの前ではヤンデレすら無力。
ヒロインが主人公を拘束したり、暴力を振るったりするが
なんやかんや幼馴染想いな主人公が素敵なおかげで命は助かっている。
すごくおもろい。でもコレじゃない。
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「まぁこんな所かな、面白かったのは」
俺は食事を持ってきた優江に続きを聞かせていた。
「そう、素人投稿といえど、意外と侮れないのね」
そんな話を嬉しそうに頷いて微笑みながら、
優江は俺の口にスプーンを近づける。
俺の好きなクルトンの乗ったスープだった。
冷ましてくれたから熱くない。
俺は口を開けてスープを受け入れる。
しばらく味わって、飲み込む。
「美味しい」
「そう、それはよかった。
あ、さっき、スマホを投げたのはどうして?」
思いついたように質問されれば、俺は首を横に振る。
「そりゃぁ素人でも投稿できるから…
ひどいものもある。なんでこんなのが3桁もいいねされるのか謎ってのが」
「へえ、どんなの?」
首を傾げる優江、手はスープをかき混ぜて、温度を整えていた。
「あんまり面白い話じゃないけど…」
俺は渋々ながらも、ひどかった小説を解説していった。
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No1:
毎朝起こしにくる幼馴染に寝たふりを続けてみた結果
1話がクライマックス。
寝たフリしていた結果、子種を奪われた主人公。
…あとはなし崩しにゴールインまで持っていかれる。
しばらく読んだけど、ヤンデレ行為に逐一主人公がツッコミ入れるせいで
ヤンデレというよりギャグ系だった。
最後まで読まずに途中で止めた。
No2:
どれだけ幼馴染が復縁を迫ってこようがもう遅い
口悪い幼馴染に対して絶縁宣言する所からスタート。
復縁をあの手この手で申し込もうとするが、ことごとく拒否され、
さらには彼女を新しく作られる…という話なのだが、
作者がありとあらゆる新作に手を出している結果、
1話1話が20行ほどしかない。
ひどい時は新作出します、更新しますのコラムが本編を超えた事があった。
話は面白いのに、すごい残念。
No3:
超人気女性V配信者のマネージャーになったら元カノだった
エロ小説。
ヤンデレと性描写は遠からぬ縁があるのだが、
離縁前の関係が性的にドロドロ関係だった為、
そういう描写がことある毎に発生している。
あとヤンデレというよりバカップルだった。
No4:
女上司がヤった事を会社にぶちまけていた
ギャグとエロが混在しているタイプ。
あとこれもエロ描写が多い。女上司ヒロインが求めすぎて
非常階段とトイレがヤリ部屋になっていってる。
これも途中でやめた。読んでてつらい。
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「…で、最後に読んでてスマホ投げたのが…
『幼馴染に監禁されてますが幸せです』ってタイトルで…」
人差し指で頭を抑え、思い出しながら話す。
中身としては、ヤンデレな幼馴染に監禁される。
それこそ、手錠で手首をベッドに拘束され、世話にいたっては全て幼馴染頼り。
「最終的には…友達に助けられて監禁が解かれるんだけど
そこから幼馴染と復縁しだすんだよなぁ…」
普通に考えて、監禁して拘束していた相手と、
どうして再び仲良くしようとなんて考えるだろうか。
「だから、純愛モノじゃねえかって怒鳴ってたんだね」
聞こえていたのか。
「まぁな…さて、そろそろ風呂に入りてえな」
「まぁまぁ、身体拭いてあげるから我慢ね」
彼女がそう言えば、俺の服はゆっくりと脱がされていく。
そして、持ってきていたボディペーパーで俺の身体がくまなく拭かれていく。
清涼感のある石鹸の香りが、身体に広がっていった。
「…ねえ、冴太」
「どうした…?」
身体を拭きながら、優江が話しかけてくる。
「読んでるヤンデレものって、幼馴染が多いね」
「…ああ」
理屈はわかる。
長い間、それこそ小さい頃から抱いていた恋心が
何故気付かれないのかと怒りの感情が混ざり、心が病んでしまう。
そういう話が作りやすい属性なのだ、幼馴染というものは。
「…でも、なんだか嬉しい」
ふと、優江が微笑みながら話す。
「どうして?」
首を傾げて優江を見つめる。
「だって、幼馴染同士の恋って、皆が夢見てくれてるんでしょう」
「…」
「私と…冴太みたいな恋愛を…皆が…ふ、ふふふ…」
「…あはは、はっはっは!」
思わず笑いだす。
…小説と、現実は違う。わかってる。
俺がどれだけ現実をこいつに見せたくても、
彼女はフィクションとして見るだろうな。
だけど、俺は見せなきゃいけないんだ。
こんな…こんな恋愛は間違えてるんだぞって!
「じゃあ…おむつ、取り換えるね」
優江が大人用の紙おむつを俺に取り付ける。
どこの…どこの純愛に、彼氏のおむつを取り替える奴がいるんだよ!
右手を手錠でベッドに繋がれて、
トイレでクソも出来ない彼氏のおむつを!!
こいつは喜んで取り替えてやがるんだ!!
「あはは!あっはっは!」
笑いが止まらない。
皆が夢見てる?こんなのを!?
馬鹿馬鹿しい!俺がヤンデレ小説を読んでいるのは…
現実で、
胸糞悪くて、
幼馴染に監禁されてて、
飯は全て彼女からの「あーん」!
満足にクソもできず、
誰も幸せにならないエンディングを描いている!
そんな小説をこいつに見せて、
ヤンデレじゃあ誰も幸せにならないって
教えてあげなくちゃいけないんだ!
他の誰でもない!
俺が!
「…冴太…愛してる」
「俺もだよ、優江」
手錠に繋がれた右手は動かない。
だから、精一杯、左手で優江を抱きしめる。
俺が、俺が真人間に戻してやるからな、優江。
嗚呼、これを最後まで読んでいる…誰かへ…
どうか、こんな俺と彼女に…
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