第3話 ー月の雨ー

屋敷へ向かう途中

ふかふかの大きな虎の姿をした

かげさんに乗り初めて見る景色が目の前に広がっている。

今は夜のはじめ頃だろうか空を飛んでいるからか月の自然の光が心地よく綺麗だ。

そして気になっていた今から会う人のことを聞いてみることにした。


「あのー、守り神様ってすごい人なの?」


「あぁ!それはすごいと思うぞ!珠月みつき様って言ってこの世界のバランスを保っている守木の守り神なんだ。その昔、災害が訪れた時守木と共に世界を姫神様が守ったことから平穏が訪れてるって訳さ!まあその跡を継いでいるからこの世界にも詳しいだろ。きっと帰り方も知ってるはずだ。守り神とは知り合いだしスグ通してもらえるから安心するといいさ。」


「うん。」

話が壮大すぎて心の整理もできず不安な気持ちから自然と空を見上げていた。

見上げて後ろに傾いていた所を

かげさんは何も言わずにしっぽの先を私の頬に当て私の不安な見えない涙を拭いてくれているようだった。

進むに連れて気持ちのいい風が吹いて肌に何が触れる。


「冷たっ!」


光の粒がパラパラ雨のように降り出す。

雨粒のような感覚の丸い粒が体にあたり

それはとてももろく弾けてサラサラした

キラキラ光る粉に変わった。


「何これ!?触れたところがキラキラになった!妖精の粉みたい!かげさんこれすごい!」


腕に光る粉が引っ付き、まるで妖精の粉のようで全身に粉をまぶせば1人でも飛べそうなくらいドキドキしていた。

するとかげさんが得意げに話す。


「それは月の雨と言って満月の日に降るもんなんだ。普段は壊れやすくてもろいから粉になったのをガラスや灯りを灯すライトの反射、アクセサリーなんかに加工される事が多いが繊細に扱えばこの月の雨粒は割れずに3日も光り続ける。夜市を開くのに必要な灯りなんだぜ。」


下を見下ろすと

月の雨粒を慎重に回収しようとしている人物や

キラキラ光る粉にはしゃぐ子供たち

その奥には街灯が明るく光り屋台が見える。



「ねね!その夜市ってあれのこと?屋台が沢山並んでて楽しそう!!」


騒がしい音や声に身体が前のめりになる。

かげさんが言っていた月の雨粒を入れた灯りが沢山並んでいてすごく綺麗だ。

その先に見えた景色は夏によく見る屋台と

よく似ているようで少し形が違う様々な形をした屋台が迷路のように沢山並んでおり賑やかな場所が広がっていた。


「ああ、その夜市だ。満月の日から3日間やってるぜ!後で行ってみるか?結凪ゆいなの世界よりも変わった奴らが沢山いるから面白いはずさ!普段は食べられない美味いものや珍しい物も沢山売ってるからな!!俺様が案内してやるよ!!!」


「やったー!!!早く行ってみたいな!」


「まずは守り神のとこに行ってその変わった服も何とかしてからだがな!」


「そんなにこの服って変なのかな…?

かげさん早く行こ!!!

スピードアップ!!ってあれなんだろ…?うっ、く、苦しい…」


賑わっている人だかりの中、紫色のなにかの果実だろうか結晶の様に光っているのが見え目で追ってしまう。

その果実を持つ黒いマントを被った怪しい人物と目が合ったのかそれとも人物の胸元に光る物に共鳴したのか

急に胸のあたりと額が同時に熱く感じ苦しくなり熱を感じている部分に模様が浮かび上がる。


「おい!突然どうした!!?おい!大丈夫か!?」

突然苦しみ出した結凪ゆいなは話すこともできる状態ではないようだ。


「しっかり掴まっておけよ!すぐ連れてってやるからな!!」


急ぎ守り神の住む屋敷に向かった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鳥居の先に見つけた世界 桜もち @sakuramochichi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ