平安中期は貴族の時代。
雅やかな国風文化が花開き、藤原氏が栄華を極めた時代。
「望月の欠けたることもなしと思へば」の時代。
今年の大河ドラマ『光る君へ』の時代。
そんな時代の下、次代を担う武士階級が台頭しつつあった。
この作品は、兵(つわもの)の家に生まれ、あるいは育った女二人の、一夜の宴(うたげ)の物語。
時は長徳四年(九九八年)の秋。
源氏の棟梁である源頼光の末娘・桔梗(ききょう)は、京を離れ、摂津の国多田の荘を訪れる。
桔梗を迎えるのは、叔母の小萩。
同じ家に育った女二人の、女だけの、気さくな宴席が始まる。
並ぶのは、その地で取れたものばかり。
語られるのは、家の事、父や祖父ら家族の事、殿方(とのがた)の事。これからの事や過去の事。
そんな「女子会」。
でも、会話の端々に語られる、武士階級の曙動。
可憐な娘たちの暮らしの一コマを切り取りながら時代を描く、新鮮なスタイルの歴史小品。