真比登。


 あなたを愛子夫いとこせとしてから。


 一度だけ、あなたの愛を裏切ろうとした事があったわ。


 許してね。


 もう二度と、一人で死のうなんて、思わない。


 桃生柵もむのふのきの戰は、終わったわ。


 あたくしをさらい、真比登に誅殺ちゅうさつ(処刑)された虫麻呂の妄執もうしゅうも。


 桃生柵もむのふのきに何年もずっとこびりついていた、朝獦あさかりさまの妄執も。


 真比登まひとの腕のなかにいるあたくしには、届かない。


 あたくしは、真比登に守られている。


 この世のどんな堅牢けんろうよろいより、厚い守り。


 真比登。


 傍にいてくれて、ありがとう。


 あたくしを愛してくれて、ありがとう。


 愛してるわ、真比登。


 あたくしの愛子夫いとこせ


 出会えて、良かった。


 家族すべて、えやみで失ったあなたに、あたくしが、新しい家族をあげる───。









    *   *   *




序破急じょはきゅうについて】



 雅楽ががく・舞楽で、楽曲を構成する三区分。

 最初の「序」は、ゆるやかで無拍子。

 中間の「破」は、ゆるやかな拍子。

 最後の「急」は、速い拍子。


 物事の、初めと中と終わり、の意味もあります。



   

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