第八十一話  月下の恋人たち、続き。

 床より一段高くなった寝床、薄い布団の上に寝そべった大椿売おおつばきめは、身体中を優しく口づけしてもらい、うっとりした気分のまま、身体の上に嶋成しまなりを迎えた。

 

 嶋成は、静かにゆっくり、進むか進まないか、という速度で、進んだ。


 おみなの壺は、充分潤っているが、昨日、初めて使ったばかりの、使い慣れない身体の部分なので、痛い。

 でも、大椿売おおつばきめの胸は、愛の喜びで満ち溢れている。


(怖くない。恋うています。嶋成……。)

 

 嶋成は、優しく微笑んで、大椿売を見下ろしてくれている。

 見つめあっていると、とても幸せだ。

 大椿売も、自然と笑顔になる。


 快楽くわいらくの海に気持ちよく漂う。


(あら……?)


 そのうち、なんだか物足りない事に気がついた。

 昨日の嶋成は、もっとぶつかってきてくれた。

 今は、そっと入ってきて、おみなの壺の内側をねぶるように、回転しながら、ゆっくり抜いてゆく。

 それはそれで気持ち良く、大事にされてるのがわかって嬉しいのだが、繰り返されるうちに、られ(こすられ)たおみなの壺の内側が、


 ───もっと快楽くわいらくが欲しい。


 と、もどかしく、去ってゆく嶋成の角乃布久礼つののふくれを求めているのがわかる。


(あら? あら? 困ったわ。もっと激しくしてほしい、なんて恥ずかしくて言えないわ。どうしましょう……。)


 顔を赤くして困る大椿売の心のうちを、知ってか知らずか、笑顔の嶋成が、


「さあ、大椿売。」


 と、手をとり、大椿売を寝床から起こした。

 嶋成は寝床に腰掛け、


「足を開いて。」


 と、嶋成に背中を預ける形で、膝の上に座るように促される。


(足を開くのは恥ずかしいわ……。)


 と思いつつ、素直に足を大きく開き、嶋成に背中をくっつけ、ゆっくり、膝の上に座る。

 

「う……。」


(ああ、いまだに信じられない。嶋成が、愛するおのこが、あたしの未来のつまで、あたしは今こうやって、嶋成を受け入れているなんて!)


 おみなの壺がきつい。

 苦みのような痛みをよこす。

 でも、それがうつつあかしであり、大椿売は幸せを感じる。


「んう……っ!」


 尻が、嶋成の腿に触れた。

 根本まで、今、受け入れきったのだ。


「はあぁ……。」


 満足して、大椿売は天をあおぎ、ため息をついた。

 しばらくそのまま、じっとしていると、嶋成の手が両腰をつかんだ。


「さあ、大椿売……。」


 ゆっくりと、上に移動させられる。

 そしてまた、腿の上に導かれる。


「ああっ!」


 貫かれる。

 おみなの壺が脈動するかのように、えも言われぬをよこす。


 大椿売はもだえ、後ろに座る嶋成にすがるように、左腕を上に、嶋成の首にやる。


「あぁ、あぁ…………。」


 嶋成の手に導かれ、背中をそらし、身体を浮かせ、何度も、腿の上に腰を降ろす。

 に酔い、喜びに突き上げられながら、大椿売は、


(こっちの方が、良いんだわ。ちょっと激しいほうが……。)


 と悟った。

 やがて、嶋成の両手が脇腹をつたい、乳房の下にきた。乳房をすくうように手を固定する。

 大椿売の乳房が、身体の動きに伴い、上下に弾んでいるので、手の位置を固定していると、勝手に乳房の下が手に当り、弾み上り、また嶋成の手を打つのである。


「たはーっ!」


 肩のうしろで、嶋成が喜んでる声がした。

 嶋成の手は、しばらく乳房の下に打たれるのを楽しんだあと、左手は乳房を握り、揉みしだきはじめ、右手は下へ、下へと降りた。

 大椿売は、激しく動いてる最中だというのに、正確に、密やかな場所の、おみなの芯を、右手、人差し指がとらえた。


「ひあっ!」


 大椿売の女の壺は、大きなのなかで、角乃布久礼つののふくれを受け入れているのに、同時におみなの芯を絶妙な力加減で刺激されては。


「どうしてこんなに気持ち良いのぉぉぉ───?」


 全身が痙攣するような、強烈なのなかで、大椿売は、悲鳴のような声をあげた。




    *   *   *




 大椿売を可愛がる嶋成は、


(多分それは、オレがたくさん女遊びをしてきたからかもしれない……。)


 と思いつつ、そんな事は言えない。また張り手をされてしまう気がする。


 もっと控えめにさ寝をした方が良いのかもしれない、と頭でちらと思うが、愛するおみなを前に、どうすればを与えられるか知ってるのに、与えないでいる事なんて、できない。


 嶋成は重量感のある乳房を楽しみ、蜜に濡れた女の芯を優しく撫で、愛するおみなを刺し貫き、


「そういうものです! おのこは、おみなを、気持ち良く、するものです!」


 きっぱり言い切った。










 果てたあと、


「怖かったですか?」


 と心配しながら、大椿売に尋ねてみる。

 大椿売は、恥ずかしそうにふすま(掛け布団)をひきあげ、顔半分を隠し、目だけだした状態で、軽く頭を横にふり、


「いいえ……。」


 と、小さな声で言った。

 嶋成は、あまりの可愛らしさに、


「ふふ。」


 と自然に笑いがこみあげ、愛しいおみなの額に、唇を寄せた。


「一生を共にしましょう、大椿売。いくらでも、時間はあります。

 オレは、たくさん、大椿売とさ寝したい。

 また、何か思うことがあったら、正直に言ってください。

 二人で解決していきましょう。」

「はい!」


 大椿売は、衾から顔を完全にだし、花咲くような、満開の笑顔を見せてくれた。




   *   *   *




 兵舎にて。


 押し出し間戸まど(窓)からは、明るい月光が部屋に降り注ぐ。


 ちょび髭の五百足いおたりは、寝ワラの上に衣を広げた上で、愛しい妻、小鳥売ことりめを撫でさすり、ふっくらした柔らかい身体の感触を楽しんでいた。

 もう、さ寝をした後である。


「ふふ……。」


 むしろ(草であんだけ毛布)の下。

 小鳥売はさ寝の余韻にくすぐったそうに笑い、五百足いおたりの裸の胸に頬をすりつけた。


「今宵も素敵でした。あたしの愛子夫いとこせ。」

「それは何よりです。オレのいも。」


 小鳥売と五百足いおたりは、笑顔で見つめあう。

 落ち着いた五百足いおたりの笑顔には、優しさと、おみなを満足させたおのことしての自信がにじんでいる。


 五百足いおたりは小鳥売の肩に腕をまわし、手枕をしている小鳥売を抱き寄せた。


「小鳥売、良く聞いてくれ。

 戰が終わったら、真比登は鎮兵をやめ、桃生柵もむのふのきで暮らすつもりだ。」

「……多賀たがの屋敷はどうするんです?」

「荷物を取りにいったん帰るだろうが、いずれ屋敷は手放すだろう。

 ……真比登は、オレと小鳥売が望むなら、あの屋敷を譲ると言ってくれている。」


 小鳥売は驚き、目を、ぱちり、とまばたきした。

 だが、次に発した声は、慎重な声だった。


五百足いおたりは、どうしたいの? 真比登についていかないの?」

「…………。」


 五百足いおたりは考えこむ。


五百足いおたりが鎮兵を続けたいなら、多賀の屋敷を譲ってもらいましょう。

 真比登についていきたいなら、鎮兵をやめて、多賀の屋敷も手放せば良い。」

「……真比登についていくと、おそらく、ろくは下がるぞ。」

「かまわないわよ、そんなの!」


 小鳥売はからりと笑う。


「あたし達二人は、真比登に救われた。

 あたしは、真比登と別れて多賀で暮らすより、真比登について、ここ、桃生柵もむのふのきで新しい生活がしたいなあ。

 真比登を放っておけないよ。

 あたしはそう思うけど、五百足いおたりはどう?」


 五百足いおたりは、くすっと笑って、ぽんぽん、と小鳥売の頭を撫でた。


「そうだな。真比登を放っておけないな。オレも、真比登についていきたい。……じゃあ、戰が終結したら、鎮兵を辞めるか!」

「それで良いよ!」


 小鳥売は、愛子夫いとこせの大きな胸に飛び込み、背中に手をまわし、ぎゅーっと抱きしめた。

 額に、チョビ髭の、チョリチョリとした感触があたって、幸せを感じた。





   





 

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