第四十一話 上司が軍議をすっぽかし新妻のところに行くので困ってます。
「
今日の真比登は、返り血を浴びていない。
平城京の命令で、
それが、
六千人が冬ごもりできる兵糧。
一日で運びこみは終わらない。
先日、蝦夷に、その長く伸び切った兵糧を運ぶ船を、水上で急襲されたのだ。
幸い、七割の兵糧は無事に
事態を重く見た真比登が、自ら警護を志願した。
真比登が目を光らせた今日は、蝦夷に襲われる事なく、
警護は終わり、これから軍議に出よう、というところで、真比登のこの発言だ。
「冗談じゃない!
「そう言うなよ〜。こういう時のための
「バカ言わないでください!」
「なんとか、上手く言っておいてくれよ。」
「今日は小競り合いもなかったんです。皆、真比登がピンピンしてるの、知ってますよ!」
「ええと……、腹痛! 急な腹痛! 医務室行かなきゃ。あとは頼んだぞ……。」
ぴゅーっ。
真比登は逃げた。
「あっ、コラ───!!」
真比登は、右手に弓を持ったまま、すたこらと逃げ去った。
「はあ……。」
とため息をつき、鼻の付け根を揉んだ。
近くにいた
「真比登も新婚だからな。」
「
「おっかないけど
「うべなうべな。」
「怖い
「うべうべな!」
と無責任な言葉を
(くっそ、人ごとだと思って!)
と
「うべなうべなッ!」
腹立ちまぎれに、
すぐいつもの穏やかな顔になり、一人、軍議の場に向けて歩きだすのだった。
* * *
真比登は、医務室に急ぐ。
昨日、佐久良売さまは元気がなかった。朧月夜や、幻想的な桜を思わせる美貌を曇らせ、憂いの表情でうつむく事が多かった。
仲の良い
せりだしたお腹に
やっと
「真比登さま。佐久良売お姉さまを、
と真比登を、思いのこもった目で見た。
「はい。おまかせください。」
真比登は
寺麻呂さまが力強い笑顔で、
「死なないさ。」
と
佐久良売さまが、
「
と声をかけると、
「お姉さま……! あたくし、お姉さまを、お父さまを置いていきたくない!」
「バカおっしゃい。あなたはお腹の
「お姉さま……。」
姉妹は抱き合って泣いた。
一昨日、
* * *
「佐久良売さま!」
右手に弓を持った真比登は医務室についた。
医師の手伝いをしていた佐久良売さまが、
「真比登? 早いわね?」
と驚く。
「はい、今日は、佐久良売さまをお連れしたいところがありまして。一緒に来てください。」
「あら……、まだ医師の手伝いが終わってないから……。」
「駄目です。連れてっちゃいます。」
真比登は、つかつか、と
「あっ! 真比登!」
佐久良売さまの驚きの声は、女官たちの、
キャ──────ッ!
という声にかき消される。
ひときわ大きい声をだした、お付きの女官、
「
と真比登が微笑むと、
「わかりました!」
と頷く。
「え? 馬? え?」
と目を
「強引なのも素敵ぃ───!」
という大きな声が医務室に響いた。
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