第二十二話 御勝という男、其の一。
「
「ようこそ、ここに座ってください。」
「おう、誰か美味い
と、皆歓迎してくれる。
そんな派手な呼び方は、
「
と言うのだが、
「なーに言ってるんですか! あなたは
「
「
「うべなうべな!(そうだそうだ。)」
と、どこの団に行っても、皆、
「おまえら、必ず、オレの命令を聞けよ。
オレの声を、良く覚えておけ。
いつ、どんな状況でも、オレの声がしたら、すぐに従え。
そしたら、オレがお前らを無駄死にさせない。
兵役があけたら、家族のもとへ無事に帰してやる。
わかったな。」
そう、力強く微笑みつつ、八百人ほどいる団の、はしに届くように、大きな声で、
わあ。
という拍手でその言葉はむかえられ、
数日前。
「
と兵士の一人が言うので、
「ほらよ。無理に扱うなよ。筋を痛めるからな。」
と手渡す。兵士は両手で、一つの
「おーっ! 重てえな!」
と嬉しそうな声をあげる。
「オレも、オレも!」
「おい、貸せよ!」
「はっ、お前に持ちあげられるかよ!」
「ははは……。」
と、皆もりあがり、兵士たちの間を
「
とお願いをしてきた。
「いいぜ。誰か弓矢を用意できるか?
射てみろ。」
「良いんですか?! オレが!」
「オレも!」
用意の良い兵士が二人、名乗りをあげる。
「二人、同時に射ろ。」
ほおーっ。
と、皆からどよめきが起こる。
これは兵士達の良い気晴らし。見世物だと、
「真剣に、狙え。当たって血がでても、怒らねえよ。」
と、わざとあおる言葉を口にする。
今は、夕餉の時間なので、
皆、ワクワクと期待に目を輝かせて、自分を見つめているのを、
「号令はオレが。弓矢構え!」
と、さっと宣言する。
兵士二人は、無駄のない動きで弓矢をつがえ、
「───射て!」
声にあわせて、びゅっ、と夜空に矢が飛んだ。ぶん、と重量のある大岩が二つ、弾むように動き。
カッ。
カッ!
と、二つの矢を難なく弾いた。
緩やかに
わあ───!
と割れるような拍手がおこる。
遠くで、ぎゃっ、と流れ矢に悲鳴があがった気がするが、まあ、むくつけき野郎どもの巣だ。誰も気にしない。
「すげえや!」
「
「
と、皆大喜びだ。
(良く出来ました。)
と言いたげな笑顔で
(当然でしょ。)
との思いをこめて、
ここまでは、良くある光景。
ただ、この日の
「くはッ、おまえらァ、矢をはたき落としただけで、そんなにすごいかよ?!」
若い
二十二、三歳の、郷の
中肉中背、太い眉、ギラギラ光る目、口にはニヤニヤと人を見下す笑みを貼り付けている。
「なあ、そうだろ?
オレは
にやっと笑いながら言った若い
「わっ!」
「これ!
三十代半ばの
「離せよ、叔父さん!」
「オレは決めたぜ。これでも、叔父さんを追い落として、大毅の座をもらうのは、悪いと気が引けていたんだ。だからオレはその上の、
不敵に笑い、さきほど弓をひいた兵士二人のほうを向き、
「おい! おまえ、オレにも同じく、弓矢を同時に二矢、射てみろ!」
と命令し、す、と叔父や
「射てやれ。」
と投げやりに言った。
自信をみなぎらせた
(珍しい。二刀使いとは、初めて見た。)
「さっ、来ぉ───い!」
ひゅう……、目にも止まらぬ速さで、二刀が
手並みは鮮やか。
派手で、人目を引く。
おー。
と兵士たちは声をもらし、
「……
ともらした。
その後は、
「チッ……、あの生意気な
ともらしたが、
「はは、
と言ったら、
「
と𠮟られた。
「ああ、わかってるよ。
と
あのようなやっかみなど、
とはいえ、そのように
↓挿絵です。
https://kakuyomu.jp/users/moonpost18/news/16817330669050150793
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