第十二話 その言い繕いはどうかと思う。
「
いきなり背後の木陰から大声で名前を呼ばれて、
声でわかった。
(
百合の花束を抱えた
(バレたら斬首なの、忘れてない?)
豪族に無礼、騙す行為は不敬の罪。ただの
本日非番である源は、ただでも大きい目を、さらに見開いて、後ろを振り返った。
焦った表情の
「みなもとーっても心配してます、
下手な言い繕いに、
(まったく、なんて慌てっぷりだよ。
とは言え、面白がってる場合ではない。
「こいつはオレの部下です。」
(むはは。面白ぇ。)
(?)
* * *
確かめるのは、怖い。
まともに、
この、
普通なら、さっと目を
豪族の娘らしい、しゃんと背が伸びた、気位の高さが伝わる表情だが、
やはり、昨日、
(どうして。何故。どうして、そのように、忌避の目で見ない?
何故、普通の顔で、オレのことが見れる?)
訊きたい。
知りたい。
どうしても、二人で話をしたい。
「あたくしを昨日、運んでくれた兵士ね。心配をかけました。
父から褒美があるでしょうが、あたくしからも何か褒美をとらせましょう。何か望みはありますか?」
「文字を教えてください!」
* * *
(食べ物とかちょっとしたお宝とかじゃー無いのかい!)
とつっこんだ。
「え……?」
と、戸惑って首をかしげた。
源は考える。
文字を教える。それは、
だから源は、
「そう、ぜひ、お願いします。
本来は
文字が書けないと、昇進ができません。」
嘘である。だって文字書けない
「もちろん、
交渉事は、人懐こい笑顔も重要である。にっこり笑って
「真比登さまがそこまでおっしゃるなら……。」
と
「ありがとうございます!」
ぱちぱち、
(良かったな、
(もしかしたら、恋したのかなぁ? おっかないけど、綺麗な
さっき、文字を教えてほしい、と
(いや、首、かかってるんだけどね。なんだこの状況。わけわからん。)
それを思うと、あはは、と乾いた笑い声を発しそうになるが、
* * *
「名前は?」
なぜか、兵士は少し間を置いてから、
「か、
と言った。春日部真比登さまが、なぜかまた、ぶっ、と吹く。
(この人、笑いやすい人なのかもしれない。笑いのツボが良くわからないわ。)
「よろしい。韓国源。では、今から、短い時間ですが、書を見せてあげましょう。ついておいで。」
「えっ、今から……?」
「今からです。あたくしは、今日できる事を明日にまわしません。」
(ここは
そのまま、軍監殿に別れの挨拶をし、医務室に戻り、
(ああ、
兵士は、悲しそうな顔をして、目線を下にさげた。ちょっと可哀想である。
「
(めっ。)
軽く叱ると、
「はい……。失礼しました。
と、百合の花束を持ったまま、礼の姿勢を膝でとった。
* * *
───やっぱり、
と後悔が胸をかすめた。
しかしすぐに、
「
と
兵士が、
(
「はい……。失礼しました。
女官が
(
そう決意する
* * *
(あ、軍監殿に、あたくしは婚姻する気はない、と念押しするのを忘れた……。)
と気がつく。そして、先程、軍監殿に耳元で
「───この花束は、
なぜ、あの人は、あのような事を言ったのだろう?
* * *
著者より。
次話、登場人物一覧には、最後に、小話があるから、読んでいってね!
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