第十一話 百合の花束
白、黄色、桃色。色とりどりの百合の花束を抱え、爽やかな笑顔を顔にうかべた春日部真比登さまに、医務室を連れ出されてしまった。
(困ったわ……。いつものように、縁談をその場で断りそびれてしまった。昨日、襲撃があったせいで……。)
故郷に帰り、教養をまわりに教えながら、一人静かに過ごすか、寺に入り、尼として余生を過ごすか。
それが、
十六歳から十八歳の女が、適齢期なのだ。
二十歳を越えると、年増と見られる。
二十三歳の
父親の威光をかざして、無理やり、縁談を組む事はできる。
でも、
「あのような年増。」
と、ひっそりと陰口を叩かれている事であろう。
(父上は勘違いをなさっている。
あたくしは婚姻相手を見つけてほしくて、
どうしてわかってくださらないの……。)
父上は、ひっそりと陰口をたたかれている事を、おそらく承知で、
(……あたくしを婚姻させて、この
婚姻した
やっと会えたのに、父上は、さっさと
父上と一緒にいたい。
婚姻なんて、したくない。
もう、ほとんど婚期は逃がしているのだ。
いつか、父上が黄泉の
今までわざと、縁談相手を怒らせ、その場で縁談を断ってきたが、この軍監殿の態度には、調子を狂わされてしまう。
昨日、助けてもらった恩もある。
(でも、あたくしは、婚姻する気はないのよ。わかってもらわないと……。)
そう思う
もう、つつじの盛りは過ぎている。
「
心配です。」
福耳の真比登さまはそう元気に言って、腕に持っていた百合の花束を、
美しい花束は、嬉しい。
気遣いも、嬉しい。
優しい、良い人なのだ、と思う。
「はい、もう大丈夫です。お気遣い、心に染みましてございます。
昨日は助けていただきまして、あらためて、感謝申し上げます。」
(縁談を断わるにも、感謝の気持ちはきちんと伝えておかないと……。)
「それなら、良かったです。
オレたち兵士は、この
にっこり笑いながら、真比登さまが言う。
すると、真比登さまが、笑みを深くして、すっと
「えっ?!」
───耳元に、ささやく。
* * *
(……それは、
本来なら、そこにいるのは
いや、違う、
いやいや、そうじゃない。
オレが
その事を知ったら、
オレは、
そうすれば、後になって、
傷つけたくないのに─────。
「
心配です。」
(あ、あ、あんの野郎ー! 何を色気づきやがって……。)
(オレは、昨日、怖い目にあって憔悴してるであろう
源は背が高く、可愛らしい顔立ちをしている。武芸も、強さは
学もあるのだし、家柄は
……家柄でいえば、
「えっ?!」
耳元に、口を寄せる。
(それ以上は許さん!!)
「
つい
↓挿絵です。
https://kakuyomu.jp/users/moonpost18/news/16817330669048957353
* * *
著者より言い訳。
女性の結婚年齢への意識が、どうしても早婚です。
奈良時代ゆえ、この年齢設定が動かせません。
私としては、女性は何歳になっても美しいと思っております。
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