◆◆登場人物一覧・あらすじ◆◆

 ・春日部かすかべの 真比登まひと

(28歳)

 主人公。軍監ぐんげん。(副将軍の次にエライ。)

 建怒たけび朱雀すざくの二つ名有り。

 愛馬、麁駒あらこま

 武器は流星錘りゅうせいすいを使う。

 伯団はくのだんを率いている。

 左頬に疱瘡もがさ

 十二歳で家族を疫病で失う。


 ・長尾連ながおのむらじの 佐久良売さくらめ

(23歳)

 ヒロイン。切れ長の目の美女。さきの采女うねめ。怒ると大蛇のごとく怖い。


 ・都々自売つつじめ

(18歳)

 佐久良売さくらめ同母妹いろも。姉に似て美女。すでに結婚している。


 ・長尾連ながおのむらじの 佐土麻呂さとまろ

 父ちゃん。桃生柵もむのふのき領主。豪族(少領しょうりょう)。


 ・韓国からくにの みなもと

(18歳)

 福耳。背が高くイケメンで教養もあり、武芸もイケる。爽やか。伯団はくのだん鎮兵ちんぺい

 真比登まひとを慕っている。


 ・五百足いおたり

(21歳)

 チョビ髭。擬大毅ぎたいき真比登まひとの副官)。穏やかな性格。真比登まひとの良き友。


 ・熊手くまて

(28歳)

 大毅たいき軍監ぐんげんの次にエライ。

 大柄で四角い顔で目がちっちゃい。


 ・嶋成しまなり

(21歳)

 伯団はくのだん鎮兵ちんぺい鷲鼻わしばな




 ・若大根売わかおおねめ

(17歳)

 佐久良売さくらめ付きの女官。縦方向に大きな目、ソバカス有りのカワイ子ちゃん。


 ・塩売しおめ

(18歳)

 都々自売つつじめ付きの女官。都々自売つつじめ乳姉妹ちのえも。落ち着いている。


上毛野君かみつけののきみの 大川おおかわ

(24歳)

 副将軍。はちすの花のような微笑みを浮かべる、現実離れした美しさの男。この登場人物一覧のなかで一番、長身。

 ちなみに、大豪族であり、上野国かみつけのくにの大領たいりょうの息子。


 ・三虎みとら

(24歳)

 大川の従者。いつもムスッと不機嫌そうな顔をしている。長身。しかし……みなもとには負けるッ!




 真比登まひとの亡くなった家族。

 ・母刀自、宇奈伎売うなぎめ

 ・父、真麻呂ままろ

 ・兄、真名足まなたり(享年17歳)

 ・姉、大真須売おおますめ(享年16歳)

 ・同母妹いろも小真須売こますめ(享年10歳)




 ◆あらすじ◆


 奈良時代。

 桃生柵もむのふのきが戰場になり、采女うねめであった佐久良売さくらめは、故郷に帰ってくる。

 父親の側にいたい彼女は、父親が次々連れてくるお見合い相手に、我儘な条件をつける。

 婚姻なんかしたくないのである。


 父親は、美貌の副将軍に縁談を持ち込みたかったが、娘が出した条件に合わないので、泣く泣く諦める。

 代わりに、誰か良いお見合い相手をよこせ、とせまる。


 美貌の副将軍は、妻帯していない真比登まひとにぴったりの縁談だと、真比登まひとに縁談を受けさせる。拒否権はない。

 大川自身は疱瘡もがさが気にならないので、良い縁談だと信じて。


 真比登まひと疱瘡もがさのせいで、すっかり女性不信。女性とろくに会話もできない。

 なのに、怖いと評判の佐久良売さくらめと縁談させられる事になり、パニック状態。

 どうせ縁談してもその場で断られるだろうから、と、みなもとを身代わりに立てる。


 縁談中、蝦夷が夜襲。

 真比登まひとは、さらわれた佐久良売さくらめを救出。

 疱瘡もがさを見ても、とくに反応しない佐久良売さくらめのことが、女性として急激に気になりはじめる。


 救出のごほうびに、佐久良売さくらめから書の手ほどき一回分をゲット。真比登まひと、ソワソワ。





 みなもと真比登まひとを慕っているが、佐久良売さくらめの耳元にそっと、

「───この花束は、嶋成しまなりからです。」

 とささやいたのは、何故か?

 それはまだ、謎である。


 




   *   *   *


 おまけ。





 夜。


 上毛野君かみつけののきみ大川おおかわは、一人で使う兵舎の部屋で、須恵器すえきつきに満たされた白湯さゆを飲んでいた。

 白湯には、陳皮ちんぴが香り付けとして入れられている。


長尾連ながおのむらじ郎女いらつめを、無事に蝦夷えみしから取り返せて、良かった。

 それはそうと、真比登まひとの縁談はどうなったんだろう?」


 側に控える三虎にたずねると、


「はい。長尾連ながおのむらじ郎女いらつめ蝦夷えみしから取り返したのは真比登まひとですが、あのおのこ、縁談は身代わりを立て、逃げました。」

「え……。」


 大川は須恵器すえきを取りこぼしそうになる。


「身代わり?」

「そうです。韓国からくにのみなもとという部下に、真比登まひとと名乗らせ、自分はお供として縁談に出席したとのことです。」

「ええー……。そんな事……、あり得るの?」

「事実です。なんとか、長尾連ながおのむらじの佐土麻呂さとまろさまには、今のところバレていないですが、バレたら……。」

「バレたら……?」

五百足いおたりから、自分と真比登まひとは責任をとって斬首を受け入れるから、オレと大川さまのところに化けて出てやる、との伝言です。」

「うおぇぇ……、まことか……。」


 大川が珍しい声をあげて、頭を抱える。


五百足いおたりから、真比登まひとおみなを苦手なのは筋金入りだ、舐めるな、この野郎。妻をめとらせたい心遣いはありがたいが、もっと慎重にやってくれ、この野郎。との伝言です。」

「三虎、それお前、本当に伝言か?」

「酒の席でしたから。」


 三虎はしれっと返す。主をいじめて楽しんだ従者は、顔を少し真面目にする。


「冗談はともかく、今回は、オレ達に配慮が足りなかったようです。」

「そうだな。もし、ばれたら、私からも佐土麻呂さまに謝罪をしよう。

 三虎、真比登まひとに適当なものを……。」

「はい。上野国かみつけのくにから届いたばかりの、あわと麦、あわせて一こく(約84kg)と、油壺を五壺、真比登まひとに届けるよう手配します。」

「よろしく頼む。」

「はい。……長尾連ながおのむらじ郎女いらつめは、怒ると大蛇のごとく怖いそうですよ。謝る時は、覚悟しておいてくださいね。」

「くおぁぁ……。」


 大川はとうとう机に突っ伏した。

 三虎は、はれぼったい目を、はっ、と見開き、


「大川さま、髪の艶が! 湯あがりに塗った油では、足りなかったようです。」


 と、すぐに椿油と櫛を用意し、丁寧に大川の髪をきはじめた。

 大川は顔をあげ、三虎にされるがまま、髪を梳かれながら、


「そんな怖いおみなと縁談にならなくて良かった。難隠人ななひとがいてくれて良かったぁぁ……!」


 と少し涙目になって言ったのである。





    ───完───





    *   *   *



 ※難隠人ななひとは大川の義理の息子です。



 以前頂戴した、ぽんにゃっぷ様からの、大川のファンアートにとびます。↓

https://kakuyomu.jp/users/moonpost18/news/16817330667018703186

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る