第21話 思いついたおもちゃを作る
突然ですけど、異世界で転生したらだいたいの人が娯楽に飢えるのではないでしょうか?
現代日本ではスマホが普及したことにより、動画や小説、アプリゲームといった娯楽が誰でも手軽に楽しめますわ。
しかし、私のように時代背景が中世ヨーロッパくらいの異世界であると娯楽なんてお酒を飲むことや性行為、年に数回くらい行われる祭りくらいなものでしょう。場合によっては罪人の処刑なんかも娯楽にしているかもしれません。
まぁ、そもそも裕福な家庭でないと農作業に追われて娯楽を楽しむ時間さえ無いのかもしれませんが。だからこそ、数少ない娯楽を楽しみにして日々を生きているのでしょう。
と、脱線しましたわ。というわけで最初に言った通り、私が言いたいのはよくアニメなんかで異世界に転生した主人公は絶対娯楽に飢えると思うのです。
現に私は飢えてますわ!
そりゃあ、私にとって錬金術というかものづくりをすることはいつまでやっても飽きることは無いですけど、たまにはなんか別のこともしたいんですわ!
しかし、そうは言っても娯楽らしい娯楽が無いこの世界。
「だったら作るしかないでしょう!」
ということで作りますわ。
ちなみに、ここでオセロや将棋、カルタやトランプなんかを思い浮かべた人~?
もしそんな人がいれば‥‥‥甘い! 甘いですわ! 浅はかとしか言いようがありませんわね。
確かにこれらは異世界転生者が作る娯楽の御用達のようなものですけど、そんな誰かの二番煎じ、三番煎じでいいんですの?
馬鹿にするわけじゃないですけど、こんな簡単なもの誰だって作れますわ。
私は職人家系の元で生きていた錬金術の王女ですわ。
ならば作って見せます! 誰もできないような、新たな異世界娯楽を!
■■
「それで作ったのがこれってことかい?」
「そうですわ!」
水洗トイレを公開した大部屋にて、お父様、アレクお兄さま、カイルお兄さまを呼んだ私は、さっそく作ったものを紹介します。
そこにあるのは、ちょうど人一人が入れるくらいの大きさの箱。
三人はそれぞれを触ったりするけれど、よくわからないのか首を捻っています。まぁ、そうでしょうね。現代日本ならばともかく、どれもこの世界では馴染みのないものですし。
「う~む、正直見ただけではどう遊ぶのかわからんな。アリシア、説明してくれるか?」
「もちろんですわ! それではさっそく紹介しましょう」
そう言って、私は箱型のおもちゃを指し示します。
「これはそう、名付けるなら『王さま危機一髪』ですわ!」
「王さま危機一髪‥‥‥?」
「‥‥‥なんだか嫌な予感がするよ」
「それで、どうするんだ?」
「今から説明します。これは推奨人数三人からのおもちゃですわ。まずは王さま役としてお父様はこの中に入って座ってくださいな」
「わ、わかったが‥‥‥これ、大丈夫なんだよな?」
「大丈夫ですわ。お父様は一度やったことあります」
「やったことある‥‥‥だと?」
とても不安そうにしながらも、お父様は私の指示通り箱の中に入ってそこに座ります。するとちょうど首から上が箱から出ている状態になりました。
「——っ!? このイスって‥‥‥」
「王さま役はそのまま後は時が来るまで待つだけですわ」
「ちょ、ちょっと待ってくれアリシア! な、なに!? 開かない!?」
箱は入ったら内側からは開かないようになってますもの。
「続いて私たちプレイヤー側ですわ。といっても難しいことではなく、順番に箱の側面にたくさんついているボタンを一つ、好きなところを押していくだけですわ。まずは私から‥‥‥ポチッとな」
——プシュゥゥゥゥ!
「あ、アリシア! なんか音がしてる! 音がしてるぞ!」
「空気が少し溜まっただけですわ。次はアレクお兄さま、どうぞ」
「おう! 俺はここだ!」
——プシュゥゥゥゥ!
「何も起きないが?」
「アレクお兄さまもハズレですわね。次はカイルお兄さまですわ」
「それはいいけど、お父様が泣きそうになってるよ‥‥‥じゃあここで」
——プシュゥゥゥゥ!
「お、おいアリシア、本当に大丈夫なんだよね? パパ、信じていいんだよね?」
「大丈夫ですわお父様! 今は座してその時を待つだけですわ!」
「その時が怖いんだよ!」
もうっ、大袈裟ですわね。時が来たらちょっと飛ぶだけですのに。
そうしてお父様の泣き言を聞きながらも私たち三人はボタンを押していきます。
ポチポチとボタンを押していく度に空気が溜まる音がして、その度にビクビクと震えるお父様。う~ん、なんだかちょっと癖になりそうですわ。
それからそれぞれ三周目が終わって四週目に入り、私が押し終わって次にアレクお兄さまがボタンを押した、その時でした。
——カチッ! ボオォォォオオオォォッ!!
「のわぁぁぁああぁあああぁっ!?」
空気が溜まるのとは違う音がした瞬間、勢いよく箱から射出され天に舞うお父様。それはいつか見た時と同じ光景。
「お父様! 華麗に着地ですわっ!」
「——あべぎゃッ!」
「あぁ‥‥‥」
しかし私の声援虚しく、いつかと同じようにお父様はお尻を突き上げて顔面から床に激突してしまいました。
まぁ、初めてですしいきなりは難しかったのかもしれませんね。
「と、まぁ、こんな感じでプレイヤーがボタンを押すことで箱の中の装置に空気が溜まっていき、毎回ランダムに変わる当たりの発射ボタンを押すと中の人が圧縮された空気砲によって飛び出すのですわ。さっきの場合だと、当たりを引いたアレクお兄さまの勝ちですわね。もし仮にお父様が着地に成功していた場合はお父様の勝ちになりますわ。どうですか? お父様がドラゴンブレスウォシュレットをくらったあの日、思いついたパーティーグッツですわ!」
「「‥‥‥いやいやいやいやっ!!」」
私がまとめの説明をした途端、手と頭を横に振るお兄さまたち。
「こんなのパーティーで使えないって! 見てよほら! 父上起き上がってこなくなっちゃったから!」
「アリシアが作るものは毎回ぶっ飛んでやがるなぁ‥‥‥」
「もうっ、お父様、早く立ってください! 次のゲームをやりますわよ!」
「やらないよ!?」「やらないぞ!?」
「えぇ‥‥‥?」
結局、私の作った王さま危機一髪は、危険だということでこれ以降遊ばれることなく‥‥‥。
しかし、あとでお母様に見つかった結果、私がやらかした時に罰を与える道具として使われることになってしまいました。
くっ‥‥‥! なんてことに!
転生王女の錬金術 ~スキルを授かったらなぜか前世の記憶を思い出したので、錬金術を使ったものづくりチートで最強の国にしようと思います~ しゅん @shunki04040430
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