幻想怪奇歌集

幻想怪奇歌集

ひとつの命ふた瘤の駱駝に乗せて三家系の王族来たれり


頭頂より旅立つ気球は吊り上げよ赤い動脈青い静脈


鬼の持つ金棒チョコのピーナツで殴られできた瘤もピーナツ


薄墨の風吹きつける子ら雷に選ばれたなら天国に行け


瞬けという命令形を使わないからこの夏こそは瞬けアイス


かき氷、負けるなこっちはパピ氷、むめも氷とやゆよ氷


カニ歩きうっかり蟹を踏んだ子は反復横飛び五年の刑です


ウーパールーパーの覆面をした強盗団だったから公開処刑で皆が笑った


雷と滝に打たれて蘇生せし獏のひり出す銀の弾丸


ピアノカラ声ガスルとの声がするその声もまたぴあのカラスルヨ


くろがねの秋の風鈴から舌を抜き無音なり冬遠からじ


マッチ一本パパのもの冬きたりなば私の心は火事のもと 


降る雪の調整ダイヤル消えてなお天にまします我らの降雪機


お年玉百年まとめて請求す姪の理想は北への密使


眠れない夜にすあまを引っ張れば伸びてたちまち地球を包む


盥という文字の顔した叔母さんら夢の額縁模様となりぬ


瓶底の一錠だけは知っているこの歌の最終読者のその命日


イヒヒ姫とニタ郎サンバに合わせて呪文ふた筋のひとり言

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