草稿から来る短文

AdoreLioGilleti

草稿から来る短文

001


格率に背いたことをしてしまい、行為の基準を道徳から引き離される。世界中のどんな言葉からも、理解に遠く、品格のないところに、この行為を知られなくてはならない。

…あるいは恋に落ちたとしても、私はひとりでにそのように思惟するはずだ。きっとそれが負け犬の人生ってものなんだろう。



003


「確かに」と私が言った。

「健康な身体の奥底にある鋼のような忍耐ですね… それに従えば、不自由にも、他人の支配するままに任せることができるのかもしれません。きっとその通りでしょう」

「業界は健康な身体と厳しい忍耐を必要としているらしい、ということが私にも段々判ってきました。何せ、多くの人が君はよく頑張っている、と語りかけてくるものですから」


「ある本質的な面を理解されないまま、導かれるというのは、こちらにとっては途方もないことです。

まずいかに心身が頑丈だと言ってみせても、過ぎるほどの頑丈さを運命のように背負わされてることに、屈辱を覚えない日はありませんから」



005


祈りのおかげで美しく保たれる心もある、と人は思う。

つまり真実なんてくだらないと判っている。だがわざと軽蔑感のままに、この世の生活を操作したりもしない。またあまりまっすぐに希望を抱くことはできない。…なら、それをか弱い奴だというのは、間違いないことだろう。

それでも祈りというのは、でたらめではない。あれはむしろ、それほどまでに清んだ心なのだ。清んでいるから、色々な煩悶が渾然一体とならないまま、透明の中にそれぞれが切なげに発せれているのだ。あるいは祈らない私は、祈らない私の中にまた、そのささやかな潔さの証左ということを見て欲しいと思うのかもしれない。


「真実がくだらないほど、祈りは美しくなるかもしれない。このくだらなさってものを笑い飛ばせたら、どれだけいいだろうかと。誰かとそんな風に思うのだ」


祈りほど、美しいなどと思えないでいい。くだらない真実も、祈りに照らしてしまいたい。その気持ちを私は知らないわけじゃない。

つまり大切に生きるべきなんだよ。たとえどのように複雑に顕れても、決して交換の効かないと直観できる、そのような真実を。



006


『いつだって何かが思いやりから始まるなら… まさに平常心で、鮮やかに笑えるかどうかが重要だ。もし他が前に進めても、自分がどこにも居なかったとしたら? それはお前が踏み潰されてしまっているのかもしれない。そうだとしたら、少し心配するのだから』


『あくまでも平常心で、鮮やかに笑えるというのが、思いやりの花だろう?』



007


人は他のために、花を渡せばいい。それが善い。おのずから花となって、踏まれる必要がどこにあるのか。そうも思った。

しかし花となりたければどうしよう…。大概私の人生も、そういう点に極まっている。

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