第97話Here There&Everywhere

今日は土曜日、


女神の誕生日当日である。



彼女の話では仕事が早く終わり


21時には自由が丘の


立花のアパートに着けそうだ、


との事だった。



立花は朝から誕生日会の


準備をしており


いつ女神がココに来ても


大丈夫なようにしてある。



誕生日ケ-キと女神の大好きな


ピザ-ラのカレーモントレ-


そして誕生日プレゼント


全てを用意して



主賓が来るのを待ち構えていた。



毎度の事だが


マネージャーさんには


親戚の家に


泊まりに行く事にしているが



その内、バレそうな


気がしてきており


立花も気がき、ではない。



だが、もう一つ女神がビックリする


サプライズを立花は準備していた。



若い男女、2人が会えば


必然的にそうなる。



それを考えての立花の


準備でもあった。



『ピンポ-ン』



主賓が到着したようだ。



慣れた手つきで女神がドアを開けて


立花のアパートに入ってくる。



『いらっしゃい』


立花が、そう言ったのと同時に


女神が、玄関に立って


部屋を見た瞬間



『わ〜、おっきい』


『買ったんですか?』


急いで靴を脱いだ女神が


部屋に上がり込んで



立花が腰掛けている


ベッドを眺めながら


嬉しそうな表情を浮かべている。



『2人で寝るには


狭かっただろう?』


そう言ってベッドの布団を


ポンポンと軽く叩いた。



今までのシングルベッドではなく


セミダブルベットが部屋に


新しく設置されていたのだ。



『もう、エッチします?』


女神は立花に確認をしてきた。



すると立花は


『誕生会はしないのか?』と


ケ-キを指差しながら、


笑っている。



自分で言った事が


恥ずかしくなって


赤くなった顔の女神が


『誕生会が、先ですよね?』と


言いながら床に座った。



狭いテ-ブルの上には


箱に入ったケ-キと


女神の好きなピザが置かれている。



ケ-キを箱から出すと


生クリ-ムで


デコレーションされた


ホ-ルケ-キが登場



HAPPYBIRTHDAYと


書かれたチョコの


プレ-トが載る


イチゴのショ-トケ-キが


4つ合体したほどの大きさだ。



『わ〜い』


女神が目を輝かせて


喜んでいる。



『アタシの家って誕生日でも


ケ-キが出なかったので』


『本当に嬉しいです』


そう言った女神に



『昨日も宴会場で誕生日会の


ケ-キがあっただろう?』と


立花が言うと



『あれはテレビカメラも入っていたし


あくまで、お仕事じゃないですか』



『これは立花さんが準備してくれた』


『アタシの為だけのイベントなんで


全く違います』と


嬉しそうに違いを説明してくる。



『喜んで頂けたなら光栄です』


そう言った立花も


嬉しそうだ。



『喜んで貰っているなら


誕生日プレゼントも』


『先に渡しちゃおうか?』と言って


小さな手提げ袋を女神に


手渡した。



『何ですか、これ?』


『開けても良いんですか?』と


立花に尋ねると



『どうぞ開けてください』と


立花が許可する。



すぐに彼女は中身を確認した。



『え?これって


アップルウォッチですか?』と


笑顔で聞く女神に



『俺も女神もiPhoneだから


お揃いにして』


『色々と便利機能を追加しようと


思ってさ?』と言って



立花は自分の分の


アップルウォッチを


同時に買った事を示すように


もう一つ手提げ袋を


女神に見せた。



『お揃いですか?』


女神が目を輝かせて


聞いている。



『お揃いとまでは言えないけど


ペアウォッチ的にしたくてさ?』と


立花が説明を始めた。



アップルウォッチは


便利な機能が多いが


それと同時に


自分専用として


カスタムし易く


オリジナリティを


出すのにも最高だ。



時計本体をキズや汚れから


守るカバーは色も豊富で


世界中の会社から


発売されており


デザインは数十万種類とも


言われている。



時計のバンドも材質は


金属、革、布、ラバー、


プラスチックと


種類も豊富で



カバーとの組み合わせで


パターンは無限大と言われている。



『今回はカバーとバンドの


デザインはお揃いにして』


『色違いになるように


女神はピンク、俺は黒にして』



『誰にも知られずに


ペアウォッチにしてみました』



そう立花が自慢げに説明をしたが


女神はノ-リアクションだ。



あれ?


気に入らなかった?



心配した立花が女神の顔を


覗き込むと


今まで見た中で1番


目を輝かせている。



嬉しさと感動で


言葉に詰まっているようだ。



『アタシ、密かに憧れていたのが


恋人とペアリングを付ける事


だったんです』



『離れていても、繋がっている』


『少女マンガで読んで


アタシも恋人が出来たら』


『いつか、何かでお揃いに


したいなって思っていたんです』



『でも立花さんに言って


重いな、って


思われるかな?って』


『心配で言えなかったんですけど』



『立花さんはアタシが


何も言わなくても


夢を叶えてくれるんですね』と


目を閉じて



感慨深い表情で女神が


感動を立花に伝えてきた。



その話を聞いた立花は


照れながら


『アップルウォッチなら


本当に離れていても


繋がるからね』と


頭をかきながら


返事をする。



iPhone同士で


位置情報を共有にすると


『探す』と言うアプリで


相手の場所が分かるが



アップルウォッチだと


その位置デ-タ-が


小さな画面にも


飛んでくるのだ。



誰か別の人といる時も


スマホをカバンから取り出して


画面をわざわざ見ていると


相手に失礼な時もあるが



時間を確認するフリをして


アップルウォッチを操作すれば


小さな画面で分かるのだ。



そうすれば会社に


まだ居るとか


電車に乗って


帰っている途中とか



相手が待ち合わせに


遅くなっても


現在いる場所が確認出来る。



iPhoneの遠隔確認は


他にも出来て


電話やメール、LINEも


アップルウォッチに


通知されるので



毎回毎回、iPhoneを


確認しなくても


タイムリーに


相手からの連絡が分かる。



他にも部屋の何処かに


スマホを置きっぱなしに


してしまい



何処にあるのか


分からなくなった時に


朝忙しい時でも



アップルウォッチで


探索すると


iPhoneが鳴って


何処にあるのか


すぐに分かるのだ。



立花に、こういった機能の


説明を聞いた女神は


『アタシの為に


考えられたような


機能ばかりで


嬉しいです』



『一生、大事に使います』と言って


立花に抱きついたのであった。



『生まれてきて今日が


1番嬉しい誕生日で』



『本当に立花さんの彼女になれて


幸せです』



立花の胸に顔を沈めた彼女は


抱きつく手のチカラを


更に強くしながら


そう言った。



予想以上に喜んでいる姿に


立花も嬉しくなり


『今の俺達に必要な


アイテムだと思って


買ってきました』



女神の髪を撫でながら


立花が彼女に話し



『アタシも、そう思います』


女神も同調した時に



『女神、どうする?』


『お誕生日会が、


まだ始まってないよ』と


立花が言うと



パッと立花から離れて


『そうでした』と


女神がメインがある事を


思い出す。



ケ-キがあるのでピザは


少なめにする事にして


食事をしながら


立花がアップルウォッチの


更なる機能を説明する。



その中で女神が1番驚いたのは


生理周期を記録してくれる


機能だと言う。



歌って踊る女性アイドルにとって


月に一度訪れる生理は


重要な事だと言う。



症状が重い子は、お腹が痛くなったり


激しいダンスで


ショ-ツで固定した


ナプキンがズレてしまうので



タンポンとの二重防御で


ステ-ジを迎えないと


いけないので


生理の日の把握は大事だと


女神は力説した。



『それに、エッチするのにも


分かったてた方が良いですし』と


下を向きながら


伝えてくる。



その言動が意外だった立花は


『今日も来てから


すぐにエッチをしたがったり』



『もしかして女神は


前回でエッチが大好きに


なっちゃったの?』と


笑いながら聞くと



耳を真っ赤にした


女神は黙って頷いた。



『そうなんだ』


素直に答えた女神に


立花が近づき耳元で



『今日も来るまで


エッチが楽しみだったんだろ?』と


意地悪に聞くと



『だって、毎日会えないだもん』と


言って立花に抱きついてきた。



『ベッドに上がろうか?』


立花に聞かれた女神は


小さく頷き


ベッドに乗った。



仰向けに寝た女神に


立花が覆い被さり


彼女の目を見つめながら



『俺も会えるのを


楽しみにしていたよ』と


言ってキスをすると



ウットリとした表情の彼女は


自分から立花の舌を求めて


溶けていくように


抱きあったのである。



一回戦が終わった後


首までタオルケットを


被った女神が


『すごく幸せだな』と


言いながら


横でタバコを吸っている


立花を見つめながら


呟いていた。



彼女の、その言葉に


気付いた立花は


『1カ月前、女神の誕生日まで


待って欲しい、って』


『言った話を覚えている?』と


聞くと



『はい、覚えています』と


女神が答える。



すると立花は


深く深呼吸をした後に



『女神が20才になる2年後に


俺の奥さんになって欲しい』


『どうかな?』と


彼女に聞くと



『はい、奥さんにして下さい』と


女神が即答してきた。



アイドルが結婚する時は


引退する時



それを分かっていながら


女神の回答には


迷いが全くなかった



『20才で奥さんになる事や


アイドルを辞める事に


未練はないの?』と


頼んでいた張本人だが


女神の答えに驚いた立花が


そう質問すると



『成れるなら、今すぐにでも


奥さんに成りたいんですけど』



『契約やグループの事を考えると


やはり、すぐにはムリなので』


『2年先はアタシも考えていた


理想の卒業のタイミングです』



『アイドルへの未練は


この先、どうなるか?


分からないですけど』



『アイドルが達成したいと


思うような夢は全部』


『立花さんに叶えて貰ったので


引退しても悔いは


残らないと思います』



『元々が、北海道の家族に


家を買ってあげたい』


『その1番の近道が


アイドルで成功する事だと


思っていたから』



『お家をプレゼント出来たら


今度はアタシの幸せも


考えたいと思い始めました』



そう言った女神の言葉に


『アタシの幸せ?』と


立花が聞くと



『誰の目も気にせずに


普通に立花さんと


デ-トが毎日出来る生活です』と


女神が力説をしてくる。



『今だって、気をつければ


何とかなっているだろう?』と


立花が返すと



『泊まりでUSJに行ったり


ランドとシ-を連続で


遊ぶ事は絶対にムリです』



『手を繋いで近所の


公園に遊びに行くだけでも


良いんです』



『女の子が好きな人と


普通に出来る事がしたいと


思い始めています』



そう言って笑顔で


立花を見つめている。



『サラリーマンの奥さんだと


贅沢は出来ないぞ?』


立花が意地悪な笑みを浮かべて


彼女に聞くと



『立花さんが横にいてくれたら


貧乏でも我慢出来ます』


『このアパートで2人で


楽しく過ごすのは


贅沢になりますか?』と


女神が逆に質問をしてきたので



『俺も女神がいれば


ボロアパートでも満足です』


そう言って女神にキスをする。



好きな人が


横にいてくれたら


場所は何処であっても


幸せだと思っている2人は


愛を確かめ合うように


何度も抱き合っていたのであった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ネットゲームの相棒がトップアイドルだった案件 ヘリオス @fwkv3005

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ