第7話 - アポ

 壺には丸い形をした灰色の玉が6つ入っていた。


 「ピーピー!」


 そのうちの一つを一口で食べたアポは上機嫌になったがその姿を横で見ているサルバは固まっていた。


 「えっ?モンスターは普通にモンスターの肉とか魚を食べるのではないのか。。?中には人間を食べる奴らもいるんだぞ?神獣だからか?聞いたこともないよー!レガーの結晶を食べるなんて。。ガレアを使えるモンスターは少ないからこの周辺じゃなかなか居なくておそらくそれはお父さんが売るために置いといたやつだよ!」


 ガレアを使えるモンスターの死体からはレガーの結晶を得ることができるが、オーパーツの制作や研究目的に使われることはあるものの加工には特殊な技術がいるため食べれるものではないことからサルバは驚きを隠せなかった。


 「ピー」


 「満足したのか!とりあえずよかったよ。中々高い餌台だなアポ!よし!ご飯の準備だ。メッタを狩にいこう。燻製もつくらなければ、今夜遅くにはここを去るぞ」


 メッタは猪の姿に似ているが、ツノが一本角のモンスターだ。知能は低くこの山地帯では比較的数があるため良く狩っていた。肉は少し硬いがそのままでも腐りにくいのが特徴だ。


 「よし!いくか!」


 アポが食べ終わったのを見てサルバは玄関に向かった。


 「ピ?」


 「あー、このままいくのか気になるのか?大丈夫だよメッタは3匹いても1人で狩れるし!あと俺武器持ってないんだよねお父さんはデッカい剣持ってたけど危ないとかうるさくてさー、ない方が普通危ないと思うけど。。だから素手に慣れちゃった」


 「ピ。。ピッ!」


 「心配ありがとね!いこう!」


 サルバが走り出した。昨日の一連のことが起きた場所の反対方向に向かっている。無意識のなのか意識しているのか行きたくないのだろう。


 「アポ、ここからは静かに痕跡を探さないといけないから鳴いたりしちゃだめだよ!」


 「ピ!」


 地面をゆっくり見ながらサルバが前にゆっくり進んでいく。木についた毛を確認しながら前方を確認する姿は様になっている。


 「いた、アポ後ろに来て」


 前にはサルバと同じ高さで横には2メートルくらいになる大きさのメッタが気持ちよさそうに木に体を擦り付けていた。


 「これは運がいい、アポはここにいてね。油断している時に急所の角をへし折れば大丈夫だから」

 

 硬そうな一本角をへし折ることは普通の人にはできない。昔からオハンが割り箸を割るように割っている姿を子供から見ていたサルバにはへし折ることが当たり前になっている。しかし、父の真似をして手でへし折ろうとして怪我をして折ることが出来なかったため、足を鍛えて蹴ってへし折ることができるようになってからはよく1人でも狩っていた。


 もちろん早く走ってジャンプをして鍛えたからって普通の人は一緒できるもんじゃない。オハンから受け継いだ才能と稀なる身体能力を持っているがオハンからは弱いと言われ続けていたので自分の強さを客観的に見ることができていないのだろう。


 サルバはジャンプして頭上の木に登り、木の上からメッタが体を擦っている木へ移動していった。

 

 (よし、ここくらいでいいだろう)


 メッタには気づかれてない。


 「っしゃー!悪く思わないでね!!」


 垂直に降りたサルバは蹴りの体制で体を捻りながら正確にツノを捉えた。


 カッキーン。


 ツノが地面に落ちて、メッタが弱った顔でその場に座り込んだ。


 「ピー!!!!」


 「どうだ、見てたか?お父さんにも見せたことないよ、すごいだろ!こーやってツノを折るとメッタは動けなくなってゆっくり力が抜けて死んでいくらしい。この方法が鮮度も最も高いんだよ!よし、しばらく待ってから移動するよ」


 サルバならいつでもメッタを運べるがまだ力があるうちに運ぶと暴れて緊張して肉質が落ちることもある。ツノを切ってその場でゆっくり死ぬのを待って運ぶのが1番いい方法だ。約1時間程度でメッタは死ぬ。


 「ピピー!」


 「そんなに探してもレガー結晶はもってないよ!メッタは一直線に突っ込むことしかできなくてガレアは使えないからねー、味が美味しいだけ!」


 「ピ!」


 違うと言いたいようにアポが体を左右に振った。


 「ポ!」

 

 アポが鳴くとメッタの足ものと下に薄紫のポータルが出てきた。


 「え、あの時のポータルだよね!あの場所に繋がってるのか?」


 焦って体を突っ込んだサルバだったが中には真っ白な空間しかなかった。10坪程度の正方形の部屋だ。


 「あいつはいないのか。。アポここは何だ?昨日あいつがいた空間をアポが作ったと言っていたがそれと比べたらここは小さすぎる気が。。」


 「ピッ!」


 アポが怒ったように体当たりをしてきた。


 「痛っ!ごめん!でもこんな空間を創ることができたんだね!空間を創るってこれって。。そんなガレアを使うモンスターは聞いたこともないな」


 そういうとサルバは外に出た。


 「入った場所と同じ場所に出てくるのか?それともアポがいる場所に出てくるのか。。?どっちにせよ遠いところに移動するとかは無理そうだね。。あ!野宿はしなくてよさそう!ちょうどいい!」


 「ピッ」


 アポは不満げな表情でメッタを指差した。


 「あ!1時間も待たなくてもここに入れればいいのか!アポ最高だよ!すごいじゃないか!」


 「ピッピッピピッピー!」


 見たか小僧。とでも言いたいようにアポは誇らしげな表情と仕草をしていた。


 「よし!いーれちゃおっと」


 両手でメッタの頭を押してメッタをポータルに押し込んだ。500kgを超えるモンスターをいかにも簡単に入れていた。


 「帰るぞー!!」


 家の前の前に戻ったサルバは水道がある場所に移動して、アポといた。


 「ポー!」


 ポータルが開き、中に入ってメッタを外に出した。そして包丁を取り出してその場で捌き始めていく。


 「これだけはちゃんとやり方教えてくれたんだよね。。ガレアか武器の使い方教えろっつうの」


 サルバは昔この場所ではじめてオハンがメッタを捌いでるのを見た時を思い出していた。

 

 「サルバ!この山に住んでるこいつらは欠かせない食料だ。でもそのままは食べれない。だがらちゃんと見ておけ!食べやすいように肉を捌くぞ」


 「こんなことして痛くないのかな」


 「もう死んでいるから大丈夫だ。生きていくということは山から取ってきた野菜もこのメッタを食べて生きていくことも何かを犠牲にして生きていくんだ。これは食べることだけではなくていろんな場面で共通してくる」


 この家や近くの山や川。様々な場所に父との思い出が溶け込んでいる。サルバは父が言っていたことが少しずつ理解できていた。こんなことを思い出しながら作業をしていたらあっという間に作業が完了していた。


 「よし!終わったよ!あとは朝ごはん分を除いて燻製にしよう。メッタは生でも3日は保存ができて食べれるって言っていたけど燻製をすると3週間は持つんだ!もっと時間かかると思ったのにアポのおかげだよ」


 「ピー!」


 サルバは森からとってあった葉っぱにメッタの肉を包み燻製の準備を終えたあと、朝ごはんを作り食べた。今まで気づかなかったけど料理の腕は父に似てとてもいいとは言えなかった。


 

■□■□■

<世界観情報> *この時点公開可能なものに限る


①レガーの結晶:ガレアを使える一部のモンスターたちの体からとれる結晶のこと。ガレアの格&フェノメナの格と同じく灰色→紫色まで存在しているとされており色によってレガーの質&含有量が異なる。


②得意ガレア:生まれつきや家系によって、扱えるレガーの総量があるようにレガーにも特徴があることから使うガレアにも個性がある。一般的には『火・水・土・風・雷・光・闇」という『7式』と「強化型」と呼ばれる『武:マーシャル』がある。

 それらに属さない特異レガーがあり『未分類:アンカテ』と言われている。オハンの重力やアラクネの腐食などがここに該当する。ガレアの格の時はオハンの重力は念動力程度の力、アラクネの腐食は毒程度の力。


③フェノメナの個性:得意ガレアからフェノメナの格へ個性を維持したまま強化されているものもあるが、基本個性の制限がなくなる新しい能力がプラスで発動されることが多い。水のガレアから召喚士になることも未知のフェノメナを得ることもあり。属性に縛られないことが多々ある。

 


 

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