第6話 - 再出発
さらに6時間が経った。少しずつ薄暗くなってきている。必死にサルバを起こし続けたアポも疲れた様子でサルバに小さな声で鳴き続けていた。
「ん。。」
サルバが起きた。
「あ、ああ!!!」
目を開けたサルバは飛び上がるように起きてオハンの方向を見た。しかし、そこにあったのはかつての誰よりも強そうな父の姿ではなく無残な姿になっている父の姿であった。
「あ、、あ、、、ああぁぁ!!あ!!!!、俺が!!俺が!!俺が湖へ行ったからだ!目立つことをしてはいけなかった!自由に笑える世界を創れたってお父さんのいない世界で笑うことは俺にはできたい。。なんでこんなことになるんだよ、おい神!!聞いてるのか!!」
「ピ。。。」
「今すぐあいつを呼べ!神ならこうなることも知っていたんじゃないのか?ふざけるな!」
「ピ。。」
いくら叫んで喚いでも何も起きない。この小さな神獣は何もできない。神も現れない。ただ時間だけが過ぎていった。
「ピッ」
アポは血が固まったサルバ右手の指を舐めて、指輪を指すような行動をとった。
「。。魂球を集めたらまたあいつに会えると言っていたな。あいつと話すためには集めろってことをいいたいのか。。?」
「ピ!!」
サルバは涙を止めることができずその場で考え込んだ後に話した。
「。。。あいつが創造の神ならお父さんに会うこともできるのか?俺が創りたい自由な世界にお父さんがいないことは考えられない。世界を再創造できたとしても俺はお父さんと笑って住めればいい。。でもあの貴族。。!平気で自由を奪うやつらはすべてぶっ飛ばしてやる。さらにその上に立つものもだ。やっぱり今の世界は壊す。。!そして自由に笑える世界を維持してくれる仲間をつくってまた俺はここに戻ってお父さんと会う。誰にも邪魔されず不味いスープを飲みながら普通の日を笑って過ごす。。これが俺の自由に笑える世界だ!」
「ピ!」
サルバは自分が倒れた場所に置いてあったキルカーン家の花の家紋が刻印されたボタンを握りしてポケットに入れたあと血だらけのオハンを担いで家の方向に向かって歩き出した。
「どれだけの期間がかかるかわからないけど。。必ずここに帰ってくるよ。その時は父さんと笑っていっぱい話せるくらいの尽きない話とお父さんより強くなってくるから。。」
家に着いたサルバは家の横に穴を掘り、オハンの墓をつくった。墓なんてこれまで作ったこともなかったがドーム型の家に合わせてドーム型で土を淡々の盛りあげていった。そして父が狩りで使用していた無骨な大検を墓の前に立てた。はじめてつくるとは思えないほど立派なものに見える。
そして、サルバは家の前の川で血だらけになった体を流すために入った。すでに周りは暗くなっていたが1日で起きた出来事に整理ができなかった少年が入っている川には涙も一緒になり流れ続けていた。
そして最後になるかも知れない家での夜、オハンのベットの上に横たわりゆっくりと目を閉じた。
「ピピ」
朝が明けてサルバは不思議と目がすぐに覚め眠気もなかった。1人で起きることができたのはいつぶりかのわからないくらいだ。いや、アポが起こしてくれたのかもしれない。
「まずはやることを整理する!!」
「ピポ!!」
一晩で人生最大の悲しみを背負っていた11歳の少年は以前の真っ直ぐで自由を求めていた正義感の強い姿に戻っているように一見見えている。
簡単に身支度を終えたサルバは昨夜作った父のお墓の前でしばらく立ち止まって考え込んだ後部屋に戻って机の前に座った。
「よし。。。まずは。。。」
おはんの机でカリカリと紙に書き進めていく。
「できた!」
汚い字で書かれてあったのは3つ。
① 自由に笑える世界を創ってお父さんとまた会う。
② 強くなって王族と貴族をぶっ飛ばして今の世界を壊す。
③ 一緒に笑える仲間を集めて、お父さんに話し尽くせないくらい多くの面白い経験をする。
「よし!できたのか?でもやることはわかった!!このためにまずは強くなる。できるだけ強くなってあの水色髪の貴族野郎。。ぶっ飛ばしてやる!!強くなるぞ!」
「ピー!!!!」
沈黙が流れた。
「どうすれば強くなるんだ。いつも通りの山登りと周辺のモンスター狩りじゃ。。いつになってもあいつには届かないしお父さんよりも強くなれない。あの女のガレアで手も足も出なかった。。ガレア!まずはガレアを取得するか!でも使うことなんてないとお父さんは教えてくれなかったけど。。」
「ピピ。。ピ!」
またアポが指輪を指した。
「どうしたの?」
(大木の下でのことを体だけで説明している)
「あ!あいつ力を与えたといってたな!ありがとう!!よし、出ろ!力!!!!ん?神のーー力!!!!あん?神様の力!あ!優しいすごいかっこい神様の力!」
「ピッ」
アポが鼻で笑っていた。
「笑うなよー!こっちは必死だってのに。。そもそもレガーに覚醒してガレアを扱えないとその力ってやつもつかえないよな」
「ピピ!」
何かわかったようにアポがオハンの本棚の一番上に飛び、何かを取り出そうとしていた。
「何してんだよ。ここの段は届かないから椅子が必要だし!何よりお父さんに怒られるんだからねー」
沈黙が流れた。
「今は大丈夫か。いつかここの段の本も読ませてくれると言っていたんだけどもういいよね」
椅子をもってきて最上段の棚をみたが1冊の本が横たわって置いてあるだけだった。
「なんだこの棚はこんな古臭そうな本以外何もないじゃないか。。なんだろこの本は。。埃すごいし。。どれだけみてないんだよ。。」
本のタイトルは『万有引力:グラアクション』と書いてある。
本を手に取ってサルバは父の机に座って本を開けようとしたが開けられない。タイトルの下にはオレガノフ家と小さく掘られた文字があった。
これは本ではなく何らかのオーパーツであることは本の裏にある宝石で気付くことができたが、方法がすぐにわからなかったのでデスクの上に本を置いてしばらく睨んでいた。
「あ!わからないな。。まずご飯を食べてからやろう!」
「ピピ!」
「というか、アポ、お前は何を食べるんだよ。わからないことが多いな。。普通にご飯は食べるのか?肉?魚?野菜。。?」
「(体を横に振る)ピー!」
「え、じゃあ何を食べるんだよ!」
「(目をキョロキョロしながら)ピ!ピ!」
何かを見つけたように飛んでいったアポは台所の隅においてある小さな壺屋の上で止まった。
「この中にあるもはなんだっけ。。お父さんの壺だけどこれは」
そう言ってサルバは壺を開けた。
■□■□■
<世界観情報> *この時点公開可能なものに限る
①オーパーツ:不思議な力を持つ武器や装置や宝石、人為的に作ったものから誰が作ったのか得体の知れないものや未知のものまである。同じく塔で得られる神器には劣るとされているものの、次に強い威力をもつアイテムも多いため貴重とされる。
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