第3話 - 自由に笑える世界

「やっと。。会えたのか」


「何?!これが喋ってるのか?いや、どこだ?」


 頭の中に響くはっきりした声は目の前に石板ではないと否定したくなるほど鮮明に聞こえている。父の声とは違い優しく響く、包まれそうな説得力のあるトーンの声にサルバは自分も知らないうちに警戒が少しずつ解かれていた。


「これ?このような姿では仕方がないか。。そうだな。。500年近くこの場所にいたんだ。誰も来ないこの場所でいつか来るべき今日を待っていたよ」


「500年。。。?よくわからないけど、そもそもここはどこで、お前は誰だ!何で石が喋れるの。。?あとあの黒くて丸くて弱そうなのもなんだ!?」


 初めての理解できない光景にも関わらず普通に会話を続けることができたのはサルバが偏見がないこともあったが、以前オハンから限られた人たちのみが持つ不思議な力『フェノメナ』と『ガレア』を扱う人々のことを教えてもらっていたからでもあった。特別な力をもつ何かはこの世界には多い。しかし、目の前のこれはさらにそれを超越している存在で別の力であるとサルバはなぜか感覚でわかっていた。


「あの黒いのとは。。アポのことか。アポは私が550年前に旅へ出た時についてきてくれた優しく強い子だ」


「小さいし。。手足なのに羽もないのに飛び回って、でも水の中で俺を連れて移動できる能力のモンスターはお父さんの本でも見たことないよ!すごいよ!すっっごい弱そうなのに!」


「そうだな。私が創造したモンスターだからこの子は特別だよ。今の世界だと"神獣"というだろう」


「創造?神獣!?自分のこと神って言っているの?光の神以外は500年前人間を滅ぼそうとしたけど今の王たちが止めて世界を平和に戻した。だからあいつらが偉くて他の人から自由を奪って許されるんだろ?。。お前が本当に神なら悪いやつで世界を捨ててここにずっといたってことか!?悪そうな感じはしないけどね!」


「名前は?」


「サルバ!」


「いい名前だ。サルバ。。君はこの世界をどれほど知っている?君が知っていることは正解でもあり不正解でもある。ただ一つ言えることは今の君の心のどこかで強い好奇心と怒りと違和感や理不尽。。それを感じている。だからこそ君はここで私と会えたのだ」


 続けて石板が話し続けた。やはり頭の中で直接語りかけるような心地いい声だ。


「君がこの湖に来てくれたのは3年ほど前からだろう。君が叫んでいた声は聞いていたよ。私はここを出ることができない。さっきやっと近づいてくれた君が去りそうで焦って声をかけてしまった。おそらくここも安全ではなくなった。アポは500年前にここの空間を作ってつい最近起きたから力はほとんどない。そして、君を迎えに行ってくれたんだ。もうほとんど力はないだろう。。君が3年前からいつもここで叫んでいたこと君は覚えているか?」


 サルバはオハンと喧嘩をしたら必ずここにきて愚痴を叫んでいた。そのときによく"この世界はおかしい!自由がないのはおかしい!生まれる場所で人生が決まるのか!!みんなが『自由に笑える世界』を創ってやる!"と叫んでいたのだ。


「覚えてるさ。。いつかお父さんに言ってこの島を出たらやりたいことをやるんだ。やると決めたからやる!この島のことも。。平等じゃない扱いを受ける人たちも。。王のことも貴族も。。ただ生まれただけで 生きる世界が決まっている。。」


 サルバの声は震えていた。


「自由に行動することもできないし、強い者の前で自由に笑うこともできない。。500年前お前たち神が人間を滅ぼそうとしたから今の王たちに封じられたんだろ?今の王族や貴族は自分たちが神になっているよ。自分たちだけ幸せなら他の人はどうだっていいのか?俺がこんな世界は壊して世界をもっと自由にしてみんなが笑える場所にする!」


 石板は少し黙った後に話を続けた。


「あまりにも大きすぎて突拍子のない話だと笑われるだろう。自分が何を言っているのかそれがどれだけ難しいことで無謀なことかわからないからだろう。君の命は1つしかない」


「それでもいいさ!言ったろ!やると言ったらやる。手段は後から考えるんだ!こんな世界はおかしいだろ!みんな本当はわかってるはずだ!」


 真っ直ぐな目でサルバは話した。世界で最も劣悪な環境で父の過保護を受けている少年が大きすぎる話をする。500年間確立された不均等で差別も差別と思われない今の世界では王は偉い、貴族は凄いは常識であり世界そのものだ。


 その"常識"を壊して新しい世界を創ると言うのだから相手にもされないはずだが、この少年は本気の目で話している。オハンならきっと流される話だがこの石板は聞いてくれる。この状況がサルバの心の底の本音を引き出したのかも知れない。


「私はドーヨ、かつては創造神と言われた。世界は平和に暮らしていて王も貴族もいなかった。しかし。。その平和が人間を変えたのだろう。1人1人の人間の思考は独自に成長し続け、私でもわからないことが増えていった。平和と平等は少し力がある者、知識がある者からすると心地が悪かったのだろう。自分が特別と思うからだ。その結果、人間を信じすぎた神は裏切られ、力を奪われた。そんな話だ。」


「そんな昔の話をされてもわからないけど。。でもお前がいい神なら早く出て今の世界を見て治してほしい。」


「そうしたいけど今の私にそれはできない。裏切られた時に力を盗られているから、、でもその真っ直ぐな考えで自由を追及する君ならその夢を叶えることもできるだろう」


 一瞬、創造神ドーヨは3秒程話すのを止め、再び話し出した。


 「誰かが私の力に干渉してきたようだ。ない力を絞ったせいで長くは持たない。。。しかし、干渉できる者が近くいるとは。。。君はもうここには長くいられない。。すぐに騒ぎになるだろう。 聞いて欲しい。私は550年前人間を知るために旅に出た。そのとき私の力を"時間"自然"光"闇"の神格に分けて世界の調律をしていた。その4人の神に仕えていたが今の4家の王族と言われる子たちの始祖だ。その子たちが裏切り、4人の神から力を持って行ってしまった。その結果で私は戻れずにこの状況だ。。サルバ、その4つの力...4つの魂球(こんきゅう)を見つけて欲しい。そしたら500年前の世界に、いや。。君が考える自由な世界を創造しよう。」


 サルバは現実味のない話になぜか説得されていた。ドーヨなんていう神の名前はオハンの部屋にある本では目にしたこともない名前だ。しかし、不思議なことに目の前の石板の声は嘘ではない真実を語っているとサルバにはわかった。


「わかった。この理不尽な世界をぶっ壊して、自由で笑える世界を創る!言われなくてもやるつもりだったよ!やると言ったらやる!」


■□■□■

<世界観情報> *この時点公開可能なものに限る


①ガレア :この世界の”魔法”をさす言葉。体質で得意不得意がある。

     ガレアを使うための力をレガーという。(この世界の魔力)

     レガーの量は基本的に生まれた時に決まっているとされる。


②フェノメナ:ガレアを使える内10%以下の選ばれた人だけが使うことができる力。

       現象や概念が力として具現化されるガレアの上位の力。

       (ex.痛い。小さい。寒い。熱い。重い。など)


       または、得意ガレア能力がフェノメナの格になった時に

       固有の能力として進化することもある。  

       (ex.火のガレアに特化→フェノメナ:溶岩&フェノメナ:白炎)        


       フェノメナの格になり能力を使用しているときは目の色が変わる。

        (灰→赤→黄→緑→青→紫で強さが異なる)

     


③ 四神:

1- 時間の神:プーネ ー 人間に裏切られた怒りでモンスターを作った。


2- 自然の神:アーギ ー 人間に渡さないために幻塔を作って、神器を封印した。


3 - 光の神:ラーマ ー  人間を許すと聖力を残し、宗教団体(聖教団)から500年あまり崇拝されている。現世界では唯一神とされている。教団は世界中で影響力を持つ。


4 - 闇の神:グーテ ー 人間に裏切られたとき最も悲しんでいたとされている。詳しい内容は知られていない。

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