【短編】第二王女と逆行従者~俺はあなたを愛しています~

ニート大帝

俺はあなたを愛しています

ザーザー


雨が降っている。その雨が俺の黒い髪を濡らし、更に漆黒にしていた。


「もっと話せば・・・いや、今更後悔しても遅いか・・・」


【アリー・グリストン】。墓にはその名前が刻まれていた。彼女はグリストン王国の第二王女であった。その彼女がわずか20歳という年齢でこの世を去った。


「王女が死んだのに、誰も墓参りに来ないなんて・・・ひどすぎる・・・」


彼女が死んだのはつい先日。王女が死んだというのに、この国は通常通りの日常を過ごしている。彼女の死を悼むどころか、葬儀すらなかった。墓すらいらないのではと一部で言われていたが、流石に王族だったので墓だけは用意された。


「しかもこんな奥地に・・・」


しかし、その墓も王族が代々入る墓ではなく、市街地の更に奥地にある共同墓地にひっそりと建てられていた。


「俺になにかできただろうか・・・」


俺は天を見上げる。その目に雨があたり、頬を垂れていた。そして俺はその墓の前で跪いた。


「俺、パトール・セグリッドはアリーを愛しておりました。いまさら遅いですが、あなたのような悲劇を繰り返さないために俺は旅に出ます。そして呪いを解く方法を考えます」


俺はアリーの墓に近い、各国を旅することにした。


■■


 あの墓での近いから、50年以上の歳月が経った。俺は今、ドラゴンと相対している。


ドーン!


俺は一撃でドラゴンを葬った。


「いやー流石ですなぁ! 魔法王のパトール・セグリッド様! あのドラゴンを一撃で倒すとは! お陰で都市の住人が救われました!」


小太りの男が俺を称えている。名前は忘れたが、この都市の市長をしているらしい。


「いや、気にするな。この程度のこと、造作もない」


俺は市長を一瞥し、この場から去ろうとする。


「お待ち下さい! パトール様! ぜひ、都市を挙げてお祝いをするので、ご出席してください!」


市長に俺は呼び止められたが、俺は無視して飛行魔法を使い、その場を去る。この手のことは何度もあった。その度に祝い事やらなんやらとあったが、俺は何一つ楽しめなかった。理由は簡単、俺の中に未だに呪いのようにある後悔のためであった。


フォン!


俺は自分の住んでいる森に着いた。目の前には扉が完全にしまっていた。俺は扉に近づき、手をかざす。


ゴゴー!


扉に魔法陣が出現し、開く。俺は中に入り、再び扉を閉じる。そして俺は奥に置いてあるソファーに座った。


(呪いを解ける魔法が完成してから、俺は何のために生きているのだろう)


俺はどんな異常状態も呪いも解くことができる、聖魔法を編み出した。実験と称して病を持つ人々を直したが、全員見事に回復した。それから俺は生きる目的を失っていた。


(このまま何もせず、一人で死ぬか。アリーみたいに・・・)


そう思っていた中、ふと机をみると書物が出しっぱなしになっていた。


(あれは確か・・・逆行魔法・・・)


俺がこの50年の歳月をかけて創ったもう一つの魔法。いや、実験をしていないため、作れているかどうかは分からなかった。


(もう一度、アリーに会いたくて時間を逆行する魔法を構築したんだっけな・・・死ぬ前に試してみるか)


俺は立ち上がり、書物に書かれた魔法を実行した。


ブオーン!


俺の足元に巨大な魔法陣が出現する。辺りが紫色の光りに包まれる。


(この感じは暴発か・・・まぁ、いい最後だろう・・・)


俺は直感的にこの魔法は失敗すると思った。そして俺は目を瞑った。


ドゴーン!


そして、そのまま大爆発をした。


■■


(俺は死んだのか・・・いや、ベッドの上?)


意識が戻ると天井が見えた。どうやら俺は治療院にいるようだった。


(そうか、俺は生き残ってしまったのか・・・洞窟の爆発に気づいた人が俺を運んだのかな)


俺は身体を起こそうとした。しかし、自由に動かすことができなかった。


(どうゆうことだ? 手足の感覚はあるのに、上手く動かせない・・・)


俺が不思議に思っていると、身体を拾い上げられる感覚になった。


(俺を抱きかかえた! 老人とはいえ、大人だぞ!)


俺が驚いていると、俺の顔を覗き込んだ人物がいた。


(!? まさか!)


俺は更に驚いた。覗き込んだ人物は俺の母親そっくりだったからだ。


(母さん! いや、母さんは何十年も前に死んだはず。いや、そもそも若い・・・!)


俺は一つの仮説を立てた。


(まさか! 逆行魔法が成功して、俺は赤ん坊まで逆行したのか!)


現状を整理するとその可能性が高かった。そして、あれから13年の時が経った。どうやら俺の魔法は成功していたようだった。俺はグリストンの義務教育である初等学園を卒業した。初等学園を卒業したら俺達は各自、自分の進路を選択する。騎士学校に行く者、魔法学園に行く者、弟子入りをする者、様々であった。


「パトール。お前どうするんだ? 魔法得意だっただろ? 魔法学園に行くのか?」


友人の一人が俺に質問してきた。


「あぁ。俺はーーー」


俺の答えは決まっていた。


■■


「珍しいな! 初等学園からそのまま、王宮使いの従者になるなんて!」


ガタイがいい男、グリンド・ガハールが俺の背中をたたきながら話してくる。


「なにか事情でもあるのか?」


グリンドさんは先程とは裏腹に俺を心配した目をしてくれた。


「いや、別になんでも無いですよ。俺は早く働きたかったんで」


俺はグリンドさんにそう答えた。逆行前の人生では王宮の従者になる前に魔法学園に通っていた。しかし、父さんが倒れたことによって、17歳の時にお金を稼ぐため、働きに出た。今度は最初から従者を志願した。


「まぁなんでもいいや! 見習いはしばらく教育だ。俺が担当するからよろしくな!」


グリンドさんは再び笑顔になり、俺の背中をバシバシ叩いてきた。


「よろしくお願いします」


俺はグリンドさんに頭を下げた。


■■


 グリンドさんの教育から数ヶ月が経った。意外にもグリンドはスパルタだった。俺は逆行する前の人生でグリンドさんとは別の人だったが、教育を受けていたのですんなり終わらせることができた。


「お前筋がいいな! これならもう配属してもいいな!」


部屋でグリンドさんは笑顔で俺の背中をパシパシ叩きながら褒めてくれた。


「さて、今人手の足りない場所は・・・」


グリンドさんは机に向かい、資料を確認した。


「それならお願いしたいところがあります!」


俺はグリンドさんに要望を伝えた。


「・・・本気か?」


「本気です!」


グリンドさんは驚いていた。


「俺は第二王女の従者になります!」


俺はグリンドさんに宣言した。


「一応、理由を訊いていいか?」


グリンドさんは真剣な目で俺に問い詰めてきた。


「グリンドさんは王女アリー様を可愛そうだと思わないのですか。俺はそう思います。俺は彼女の従者になり、彼女を支えたいです!」


グリンドさんは困った顔で悩んでいる。


「しかし、うーん・・・可愛そうだからって理由だとーーー」


「俺はアリー様を愛しています!」


俺の言葉にグリンドさんは目を開き、驚いていた。俺は言葉を続けた。


「ひと目見たときからアリー様をお慕いしております。その気持に嘘はありません!」


俺はまっすぐにグリンドさんを見た。俺の真剣な表情に折れたのか、グリンドさんはため息を付き、椅子に座った。


「わかった。俺の方から上に伝えておく。優秀なやつだから任せてみようってな。あと、さっきの聞かなかったことにしてやる。何か裏があるんじゃないかと疑うやつがいるからな」


グリンドさんは笑顔で俺を見た。そして、俺は翌日から第二王女の従者として配属された。


■■


「ここが第二王女の部屋だ。第二王女についてはもう知っているな」


俺は従者長と呼ばれる人について行き、第二王女の部屋の前に来た。


「はい。アリー様は呪いを受けており、身体も不自由であると聞いております」


俺は従者長にそう答えた。


「ならばよい。では、後は自分でなんとかしなさい」


従者長はそのままこちらを一瞥し、自分の持ち場へ戻って行った。俺は息を吐き、ドアにノックをした。


「本日よりアリー様の従者となりました、パトール・セグリッドです! 入室してもよろしいでしょうか!」


「・・・どうぞ」


ドア越しに弱々しい声が聞こえた。


「失礼します!」


俺はドアノブに手をかけ、ゆっくり入室した。


「!」


そこにはベッドで上体だけを起き上がらせてこちらを見ているアリー様がいた。綺麗な金髪ロングの髪が、開いた窓の風によってなびいている。その様子は一枚の絵画のようであった。


「・・・どうして私なんかに? 私の顔は化け物みたいよ」


アリー様が虚ろな目で質問をした。アリー様の顔は右半分が火傷のようにただれていた。


「はい! 私はアリー様をお慕いしております! そのため、図々しくはありますが、あなたの従者になることを志願しました。どんなこともお申し付けください!」


俺は跪き、そう答えた。


「じゃあ・・・こっちに来て、私の手を握ってくれる?」


「喜んで!」


俺は立ち上がり、アリー様のベッドへと向かった。そして横に立ち、アリー様の手を取った。


(これは・・・なんて酷い・・・)


アリー様の身体には黒い不気味な模様があった。逆行する前魔法を極めた俺には分かった。かなりの怨念が込められた呪いだと。しかも呪われた姿を見たひとは


(これは今の俺の魔力量の聖魔法だとだめだ。せめて後2年魔力の成長をさせないと恐らく解けない)


俺はその事実に気づき、俺は悔しくなり、アリー様の手を思わずおでこにくっつけてしまった。


「・・・え?」


アリー様から驚きの声が聞こえたので、俺はすぐに手を離した。


「申し訳ございません! アリー様!」


俺はすぐに頭を下げ、謝った。顔を上げると、未だにアリー様は驚いた表情をしていた。


「あなたは私が怖くないの?」


アリー様が弱々しい声で尋ねてきた。


「先程も申した通り、私はアリー様をお慕いしております。怖いなどという感情は一切ございません」


その言葉に嘘はなかった。確かに逆行前の俺なら嫌悪感を抱いたかもしれない。しかし、今の俺は逆行したおかげで、魔法に関する知識をかなり持っている。そのため、魔法や呪いに対して耐性を得ることもできた。恐怖など持つはずがなかった。


「!!!」


俺の言葉にアリー様は顔を赤くしたように思えた。


「俺が従者で構いませんか?」


俺は笑顔でアリー様に申し出た。


「・・・うん。よろしく・・・」


アリー様は俺を従者と認めてくださった。


■■


「アリー様! お食事を運んで参りました!」


「ありがとう! パトール!」


俺が従者となって1ヶ月が経過した。最初はなかなか心を開いてくれなかったアリー様もだんだんと俺に打ち解けてくれた。心なしか笑顔も増えた気がする。


「ねぇ、パトール。お外に行くことってできるかしら?」


アリー様は窓を見ながら俺にそう伝えてきた。


「そうですね! お勉強ばかりでは疲れますからね! 一緒にお庭に行きましょう!」


俺はこの1ヶ月、アリー様に勉強を教えていた。アリー様の呪いのため、初等学院どころか家庭教師すらつけられなかったため、俺が教えていた。アリー様は飲み込みが早く、1ヶ月でおおよその教養を身につけた。


「ありがとう。パトール」


俺達は王宮の庭へと出かけた。


「今日は天気がいいですね!」


俺はアリー様の手を取りながら一緒に歩いていた。アリー様は呪いのため、足取りがおぼつかないため、俺が補助をしている。


「うん! 私生まれてからほとんど部屋に籠もりっきりだったから、こうして外に出るのは嬉しいわ!」


アリー様は笑顔で俺に伝えてきてくれた。俺達は庭を散策しながら、太陽の光りを浴びていた。


「ねぇ。あれって・・・」


「アリー様よ・・・噂以上ね・・・」


「うわっ! こっち見たわよ!」


庭を散歩していると近くのメイドからそんな声が聞こえる。しかし、その声は好意的なものではなかった。


「・・・パトール、戻りましょう」


先程まで笑顔だったアリー様の顔は一気に暗いものとなった。俺はアリー様の指示通り、部屋に戻った。


「アリー様、申し訳ございません・・・」


俺はアリー様に謝った。こうなることを失念していた。俺は自分の浅はかさに憤慨していた。


「パトールが謝ることはないわ。こうなることはわかっていたもの」


アリー様は俺のいる方とは反対の方を向いて横になった。


「今日はもう疲れたから、パトールもお休みにしていいわよ」


俺は指示に従い、部屋を出ようとした。ドアの前に立つと、ベッドからすすり泣く声が聞こえた。俺はそれを聞こえないふりをして部屋から出た。


■■


「よっ! パトール! 元気しているか!」


王宮の廊下でグリンドさんに会った。


「えぇまぁ。ぼちぼちです」


俺の答えを聴いたグリンドさんは俺を王都に連れ出してくれた。


「ここは俺がよく来る飯屋なんだ! 奢ってやる!」


俺はグリンドさんの奢りでご飯を食べた。


「なんかあったのか?」


ご飯を食べながらグリンドさんは俺に質問してきた。俺は今日、庭であったことを伝えた。


「・・・パトールには悪いが、それが普通の反応だと思うぞ。1ヶ月もまともに接していられるお前がすごいんだ」


グリンドさんから語られる言葉は俺の旨を突き刺した。確かに分かっていたことだが、実際に遭遇すると辛いものがある。


「パトール、俺が言えた義理じゃないが、アリー様についてやれ。アリー様にはお前が必要だ」


「当たり前です! どんなことがあっても俺だけはアリー様の味方になります!」


俺はグリンドさんにそう誓い、飯屋を後にした。


「アリー様! パトールです! 入室します!」


俺はアリー様の部屋の扉をノックして、入室した。


「パトールどうしたの?」


アリー様はベッドで上体だけを起こしていた。ただ左目が赤かったので、恐らく俺が来る直前まで泣いていたのだろう。


「アリー様。私を信じていただけますか?」


俺の言葉にアリー様は疑問の表情を浮かべる。


「あと2年。2年でアリー様を開放できます。俺の言葉を信じて待ってくれますか?」


俺はアリー様の世話をしながら魔力の増幅に努めていた。俺の感覚ではあと2年ほどあれば、アリー様の呪いと解けるほどの魔力量になる。


「どうして、そんな事言うの?」


アリー様は疑問の表情を浮かべる。


「アリー様に希望を持ってほしいからです。今のあなたは正直、もう死んでもいいという思いが伝わってきます。私はアリー様に死んでほしくない!」


俺の最後の言葉は逆行する前の人生から思っていたことなので、少し語気が強くなってしまった。


「2年待てばいいの?」


アリー様がまっすぐ俺を見つめてそう行った。俺は頷いた。


「パトール。私はあなたを信じるわ」


アリー様の目に俺は強い意志を感じた。


■■


 あれから2年経ち、俺は15歳になった。


(魔力量もだいぶ上がった。これならアリー様の呪いも解けるはず!)


俺はアリー様の部屋の前に行った。ノックをして、入室の確認をする。


「アリー様。よろしいでしょうか?」


アリー様はこの2年間ほとんど部屋から出なかった。体調も2年前より悪くなることが多くなった。


「パトール! 今日は調子いいから大丈夫よ!」


アリー様は笑顔で俺を見た。俺はアリー様のベッドに近づいた。


「・・・ねぇパトール。私も長くないかもしれないって・・・」


アリー様からそう告げられた。俺はその言葉を聞き、つばを飲み込む。


(アリー様が亡くなられたのは18歳のとき、もうあと3年しか本当なら生きられない・・・)


俺はその事実を受け止める。そして、俺は元気の無いアリー様に話しかけた。


「アリー様。覚えていらっしゃいますか? 2年前、必ずあなたを開放すると伝えました。今日はそれを実行したいと思います」


俺の言葉にアリー様は驚きの表情をした。


「あれは私を慰めるものではなかったの!?」


アリー様は冗談だと思われていたらしい。


「冗談ではありません。今からアリー様にある魔法をかけます。しかし、申し訳ありませんが、それで確実に治るかはやってみないとわかりません」


そう、分からないのだ。魔力量は問題ないと思っている。逆行する前の人生でもある程度の病や呪いを解く事ができた。しかし、アリー様の呪いに通じるかはぶっつけ本番だった。


「・・・いいわ、やってみて。私はパトールを信じているわ」


アリー様は笑顔で俺にそう言った。


「では行きます!」


俺は聖魔法を発動した。アリー様のベッド全体に金色の魔法陣が出現する。


(今の俺の魔力を全て注ぎ込む!)


俺はその魔法陣に全て、逆行する前の人生、逆行してから人生全てをかけた。


ブワァン!


部屋が金色に光った。


(やばい・・・意識が・・・)


魔力がまだ足りなかったのだろうか、意識が途切れそうになる。


(くそ・・・)


俺は意識をなくした。


■■


(ここは王宮の廊下?)


俺は何故か王宮の廊下に立っていた。


ガタ!


誰かが後ろの方で倒れた音が聴こえたので振り返った。


(アリー様!)


アリー様が倒れていた。俺はすぐに駆け寄る。しかし抱きかかえようとすると、その手がアリー様の身体をすり抜けた。


(これは一体?)


俺は疑問に思う。アリー様をよく見ると、俺の知っているアリー様より少し大人びていた。


「私は負けない! 絶対に!」


それは独り言だったが、強い意志を感じた。俺はこの光景に見覚えが合った。


(もしかして・・・)


俺は廊下の曲がり角まで行く。そして見つけた。


(やっぱり・・・)


俺がアリー様の様子を見ていた。


(これは俺の逆行する前の記憶だ)


俺がアリー様を愛した理由であった。あの頃俺は、アリー様のことなんて知らなかった。たまたまアリー様の部屋があるところまで来て、アリー様が一人で不自由そうな身体を動かしている場面を見た。


「あのー。大丈夫ですか?」


当時の俺がアリー様に話しかけた。そして、振り向いたアリー様を見て、絶句していた。


(そうだった。最初は俺も他のみんなと同じ反応だったっけ)


今となっては憤慨ものだが、当時は仕方なかった。俺はそのままその場を去っていった。


ブォン!


場面が転換した。そして、同じようにアリー様が一人で壁を使いながら歩いていた。俺は同じように廊下の曲がり角に向かった。


(俺はあのあともアリー様のことが気になって仕事の合間を使って見に来たんだっけ・・・)


当時の俺はあの後、同僚たちにアリー様の存在を聞かされた。その境遇を聞いて不憫に思った俺はまたしても見に来ていた。


(それから俺は何度も合間を見て、様子を見に来たんだよな・・・)


当時の俺は健気に頑張るアリー様の様子を何度も見ているうちに愛おしくなってしまった。今思えば、俺だけそうゆう感情になったのは俺が人よりも魔法に対しての耐性が強かったことが原因だろう。


(そうして俺は次に呪いを解く方法がないか調べたんだっけな)


結局その方法はなく、俺が開発するしかなかった。


ブォン!


再び場面が転換した。俺がアリー様の墓の前で泣いていた。


(アリー様・・・今度はあなたを救えただろうか・・・)


俺はそう考えていると意識が遠のいてきた。


■■


「―ル! パトール!」


アリー様の声が聴こえ、俺は目を覚ました。


「アリー様・・・!」


俺はその顔を見て驚愕した。その顔には火傷のようなただれはなく、綺麗で可愛らしい顔があった。


「良かった! パトール! 何度呼んでも目覚めなかったから、私はてっきり・・・」


ガバッ!


アリー様は俺に抱きついてきた。


「アリー様! ちょっと!」


俺は状況が読み込めなかった。慌てて俺はアリー様の方を押して、離した。そして俺は更に驚愕した。全員の黒い模様がなくなっていたからだ。


「パトール! ありがとう! 呪いが解けたようだわ!」


アリー様は喜びながら俺にそう伝えてきた。その姿を見て俺は涙を流した。


(そうか・・・成功したんだ・・・)


俺の長年の夢であったことが二度目の人生でようやく叶った。これ以上ない喜びだった。


「パトール・・・」


俺の涙を見て、アリー様が心配そうに見る。


「やっと・・・俺の夢が叶いました・・・」


俺は感極まりながらアリー様に伝えた。


「パトールどうしてそんなに・・・」


アリー様は疑問の表情で俺に尋ねてきた。俺の答えは決まっていた。


「私はあなたを愛しているからです!」


俺の言葉にアリー様は顔を赤くした。


「ありがとう! パトール!」


そして、満面の笑みで俺にお礼を述べてくれた。


(あぁ! 俺は本当に成し遂げだんだ!)


その顔は俺が最も見たかった笑顔だった。


(あなたを愛して本当に良かった!)


それから俺達は幸せに暮らした。


おわり

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【短編】第二王女と逆行従者~俺はあなたを愛しています~ ニート大帝 @hikikomori_king

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