第4話
翌日、私たちは指定の居酒屋入り口にて、犬走と合流した。彼は長崎空港に到着後、長崎駅最寄りのビジネスホテルにスーツケースを預け、私たちとの合流に向かっていた。現在、犬走が長崎県に到着して二時間経過したばかりだった。
伊吹と弥生は揃って、唇を尖らせていた。
「ちょっとアルソック、なして郊外にしたと? 大学や寮から比較的近いのはありがたいけど、もうちょっと、長崎らしかモンば見せんでよかと?」
「せっかく、また市内の居酒屋に行けると思ったとに」
「文句なら犬走さんに言って。メンバーが私たちだけならいつも通り、市内の飲食店ば選んだけん」
伊吹は紺のカジュアルなジャケットとベージュのチノパン、弥生は黒のワンピースの上に薄緑のコートを羽織っていた。
「ってか真波さん、今日の服はさすがにないわー。ジーンズにトレーナー、上着はいつもの薄グレーのパーカーって。トレードマークの派手めなイヤリングも付けてないなんて」
「それも犬走さんに文句言って。あ、あの人じゃない?」
私たちの目の前に、タクシーが一台止まった。
「お待たせしました。初めまして、犬走安紀彦です」
身長がほぼ同じの私と伊吹より顔半分ほど高い背、肩幅が広く胸板も厚そうな男性がタクシーから降りてきた。角刈りが良く似合う細目の男性から、意志の強さを感じ取った。
私たちもそれぞれ自己紹介し、最初に私が口を開いた。
「長崎駅からこちらまで遠かったでしょう。ご足労ありがとうございます」
「ええ、でもJRの駅員さんが親切でしてね。おかげで長崎駅から道ノ尾駅まで滞りなく乗れました。道ノ尾駅では、タクシーの運転手さんも親切でしたよ。長崎の名物ちゃんぽんはぜひ食べるようにってオススメしてくださいました」
私たちは、犬走が長崎駅から直接道ノ尾駅から離れた郊外までタクシーを利用したと思っていた。しかし彼は、四千円台のタクシー利用料金を千五百円以内に抑えたという。
「お待たせしてしまったので、すっかり体が冷えたでしょう。中に入って、ぜひ温かいものをいただきましょう」
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