#2 線路
振り返ると歩道には、点々と紅葉が落ちていた。
11月も半ば、どうやらちょうど季節のようだ。風が冷たく、街路樹がさわさわと枝を揺らしている。雌株が多いのだろうか、落ちた実の匂いがずっと鼻にまとわりついてきた。
わたしは券売機に一万円札を立て続けに押し込んだ。
「結構かかるなあ、京都まで」
高校生の財布には大きな痛手だが仕方がない。鈍行で行って日帰りできない方が困るのだ。
あかりと約束した紅葉を見に行く。
今朝思い立って、新幹線の停車駅まで足を延ばした。
学校のことは今日はもう知らない。
自由席車両はまあまあ空いていた。
三人がけの窓際を陣取り、ずっしりと重いリュックを膝に乗せる。赤い葉がスカートの上にはらりと落ちた。
ペットボトルに少し口をつけると、甘酸っぱい味がじんわりと喉に染みていく。新製品の文字に踊らされて買ったけど微妙だ。ちょっとだけ風邪薬みたいな味がする。
背もたれにもたれかかり、目を閉じた。
去年京都に行ったときは、隣の席にあかりがいた。何を喋ったか覚えてないけど、楽しくて楽しくて2時間があっという間だった。
その時は紅葉の季節ではなく、既に夏の日差しが鴨川を焼いていた。
東京よりじわりと湿度が高い気がするのは川べりだからだろうか。
『京都といえば紅葉だよね。一面まっかになってるのが見たい』
『修学旅行、秋だったらよかったのに』
また今度行かなきゃね、卒業したらかな?ときゃらきゃら笑いあって、わたしたちは6月の京都を後にしたのだった。
龍田姫エクスカーション ひかみ @haurvatat36
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