あなたの色

「風、めっちゃ冷たいね」


 前を歩く君の奇麗な髪が、ほのかに輝いて流れていく。君が今日、僕を連れ出してくれたから見れた『色』。あなたの色で僕を見る。これが僕の『色』なんだ。過去も今も、全部を肯定できる気がした。


「ありがとう。君のおかげで、僕は    」


 僕は振り返った君に向かって、精一杯の笑顔を見せる。


「なんだよ。そのぎこちない笑顔は」


 君は、少しおかしそうに笑った。


「ところでさ..................さっき電車に乗ってた時、ちゃんとお礼をするって」


 君はただ僕を見ていた。君を背にしたそこにあるものよりも、きみの、あなたの『色』に目を奪われる。


「あなたのことを、教えてよ。その腕の傷も、長い髪も、過去のことも、全部、全部」


 君が困ったみたいな表情をして微笑むから、君を傷つけてしまわないか怖くなる、何かを言うのが怖くなる。でも大丈夫だ、きっと。


「君が保つ、その笑顔に混ざったそれを僕にも分けてほしい。どんな君でも、僕は好きだから」


 君がそうしてくれたように、僕もそうするだけだ。


 指先が冷たい風に煽られて、感覚がなくなっていく。さっき言ったことが、なんだか小恥ずかしくなってきた。


「ぷっあはははははは」


 君のその口火を切る笑い声に、なんだかこっちまでよくわからなくなる。


「ありがと。そう言ってくれて、とってもうれしい。だからさ............まずは君とかって私のことを言うのをやめてよ。せっかくだからあだ名でさ、君が決めていいから」




 青がうねっている音は五月蠅いはずなのに、僕には目の前にある『色』しか感じなかった。



「私はね、虹色が好きなんだ。知らなかったでしょ。私の色は無限大なんだから!



 そう機嫌よく話始める君には、僕の想像を超える『色』がまだあるんだろう。





 


 

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あなたの色で、僕をみる 鮎川伸元 @ayukawanobutika

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