第2話 縮小
T氏は小さくなってゆく。身体は日に日に縮んでいるのがわかる。きょうも洗濯物を干そうとベランダへでたが竿が高すぎて届かなかった。きのう本箱の上のダンボールを取ろうおもったが手を伸ばしたひょうしに転びそうになった。医者は高齢になると筋肉が無くなってきて背はどんどん丸くなってくるといった。身体が丸まった分だけ身体が小さくなる。治療法はないから日がたつにつれて縮む。いずれ消える運命にあることはたしかなのだ。どうしたんだろうか。
おかしいわ。さっきこのあたりにいたみたいだけどいないわね。でもどこかで声がするわ。
おーいここだここだ。おーい。大木のような足を見上げて叫んだ。もはやT氏が下からいっても聞こえないみたいだ。
丈夫になろうと思って飲んだくすりが丈夫になるどころかいまや身体全体が小さくなった。
T氏はむかしから常用していた強壮剤を飲んだことをくやんだ。
強壮剤のなかにホルモンバランスくずす成分が混入していたのだった。
(了)
掌編400字・散歩 柴田 康美 @x28wwscw
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。掌編400字・散歩の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。