おじさんと正義の戦隊レッド
Side 羽崎 トウマ
=スターレンジャーの家・リビング=
テーブルに座り、スターレンジャーのレッドと向き合う。
「相談?」
「はい。もっと強くなるためです」
「えーとそれは……ヒーローとして?」
「はい、ヒーローです」
「あの——聞く相手違うんじゃないかな?」
「そうでしょうか? ヒーロー物に詳しいトウマさんなら何かいい知恵が貰えると思ったんだけどな」
「それを言うなら他に適任者が——」
「いや~その、恥ずかしくて聞けなくて」
(何が恥ずかしいんだ……)
などと俺は思った。
宇宙の10代女子の感性は分からん。
「つってもヒーロー物の特訓って、思いつくのは昭和ヒーローみたいなのしか思い浮かばないんですけど」
「例えば?」
「えーと、クレーンから吊るされた巨大な鉄球に体当たりとか、ジープで追いかけまわしたりとか」
「あるんですね、そういうの?」
「まあ何の為にやるのかって言うのもあるけど——今迄の攻撃が通用しない怪人とかが現れた時にやるのがお約束だけど——」
色々と提案する一方で、ミストレスさん負けてばっかりらしいし、これ以上強くするとバランスが取れなくなるのでは? などと考えたりもした。
「今必要ないですけど、強くなるのには憧れるかな?」
「ブルーさんが言ってたアカデミー絡み?」
「はい。私達はアカデミーで、その落ち零れだったから——」
「なるほど、焦りか」
「ええ」
焦り。
分野は畑違いもいいところだが、十代の頃の人間は大概すぐに結果を求めてしまう。
無理もない。
若い期間と言うのは人生において短い期間だ。
それでいて、人生のターニングポーイントが多い期間でもあり、その後の人生の大部分が決まると言っていい。
外宇宙の住民でもそう言うのはあるようだ。
「正直アカデミーの事情とか詳しく知らないから、手っ取り早くどうこうとか、短期間のウチに劇的にとかは思いつきそうもない——」
アカデミーは正義の味方の育成学校でもあるらしい。
ただ頭がいいだけではダメなのだろう。
実力も必要と考えるべきか。
それに教育機関にいると言う事はある程度、短期間で相応の結果を出す必要がある。
自分は作家志望の人間であって、ヒーローでも教育者でもないのだ。
正直に言う。
「そうですか——」
「あっ、だからと言って日々の頑張りや努力は無駄じゃないと思うし——それにありがとうな、こんなオッサンの話し相手になってくれて」
「トウマさん……」
「まあ、でも。よかったよ。諦めなければ夢は叶うとか言わないけど、本当に諦めたて努力する事すらしなくなったら叶うもんも叶わないもんな」
「ええ」
「だけど努力は考えてするように——何度か夢を諦めた事がある人間からのアドバイスだ。まあ余計なお世話かもしれないけど」
「いえいえ、ありがとうございます」
「そ、そう——」
何が恥ずかしいだが顔を真っ赤にして返事をするレッドさん。
ブルーもイエローもそうだったけど純粋なんだなこの子たち。
その点がちょっと心配でもある。
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