隣の悪の女幹部その2

 Side 羽崎 トウマ


 =昼・大阪日本橋=


 唐突だがミストレスさんとデートすることになった。

 本人曰く敵情視察するために街を案内して欲しいとの事だがデートだよねこれ……


 場所は大阪日本橋。


 まあ自分にとっては行き慣れた場所である。

 なんなら地元の住み慣れた町より詳しい。


 女慣れしているのなら、もっと洒落た場所に案内出来るかもしれんいがこれが精一杯だ。


 そして肝心のミストレスさんはと言うと、ライドセイバー(男児向けヒーロー)映画で興奮して、現在玩具屋巡りの真っ最中。

 デートは大成功である。

 美人で爆乳の美女がはしゃいでるもんだから周囲の目を引くわ引くわ。


 切り裂きジャック事件の影響で警察の姿がよく見かけられるがそれでも人通りが多い。


 中には女体化した切り裂きジャックのグッズを売り出す商魂逞しい店もあった。


「ところでトウマ、切り裂きジャックとはなんなの?」


 ふと街中を歩いていると唐突にそんな事を尋ねる。


「19世紀のロンドンを騒がせた殺人鬼の名前さ」


「どんな奴だったか分かる?」


「正体は分からない。ただ女性だけを狙った犯行で話題になった」


「捕まってないの?」


「現代科学が発展した今でも分からなくて、それに手掛かりとなる証拠品や記録も第2次大戦時に焼失したらしい」


「19世紀のロンドンはどんな町だったの? シャーロック・ホームズと言う名探偵がいるのは知ってるけど」


「まだ車がそんなに普及してなくて、馬車とかが主な交通機関だった。あと、シャーロック・ホームズはコナン・ドイルと言うミステリー作家の創作上の人物だぞ」


「そうだったの——」


 ショックを受けた様子だ。

 何か夢を壊したようで悪い気持ちになる。


「だけどモデルになった人物はいるかも知れないよ」


「そうなのか……しかし地球の人間は何と言うか娯楽に力を費やし過ぎてるわね」


「日本以外の国はどうかは知らないけど誤解だと思う」

 

 日本はサブカルチャー大国なのは認めよう。

 だけど地球を代表した国となると疑問符を浮かばざるおえない。


「私は様々な星を観てきたわ。戦争でボロボロになった星もあれば科学力がとても発展した星もある。トウマの言う通り日本だけなのかも知れないがまだ落ち着きがあるわね」


「落ち着きね……」


 比較対象がよく分からないがその言葉に納得するしかないかなとか思った。


「話変わりますけど——ヒーロー、本当にいるんですかね?」


 キョロキョロと周囲を見回す。

 エンジェリアや悪の女幹部、本物のアニメの世界の住民だったピュアリアと出会ったしたのだ。

 ならヒーローがいたとしても不思議ではないだろう。


「調べによればディフェンダーと言う組織がいるらしいわ。アメコミに出て来るような世界平和を保つための組織らしいわね」


「アメコミみたいな世界平和の組織ねぇ」


「そう言えばアメコミはどうしてヒーロー物が多いのかしら?」


 と話題を振って来た。


「一応ヒーロー物以外もあるらしいけど、アメコミで日本でも話題にってなるとヒーロー物になってるんだと思う」


「そうなの——」


 実はアメリカにはアメコミに出て来るようなヒーローとかいたりするんだろうか。

 世の中と言うのは意外と謎が多い。

 

「本当にヒーローの事が好きなのね」


「うん——」


「だけど私、悪の女幹部だけど——」


「具体的に何か悪さしてるの?」


「それはその、秘密と言うか何と言うか——」


「はあ……」


 顔を赤くして照れくさそうに視線を下に向けるミストレス。

 一体地球で何をしてるんだこの人は。


「だけど羽崎さんには驚かされるわ。ヒーローや悪の組織とも知り合いだったなんて」


「え?」


「谷村君や藤崎君、闇乃君——それにダーク・スターズのヤミノ博士とか——」


「え~~?」


 谷村君や藤崎君の名前が出てきたのが驚いた。

 闇乃君もそうだ。

 そしてヤミノ博士もだ。


「ヤミノ博士も本物なんですか?」


「ええ」 


「……うーん?」


「なんでそんな疑問形なの?」


「いや、悪の組織と言う割にはイメージと違うなぁって……ミストレスさんもそうだけど、何かこう世の中を震撼させるような大事件を起こすような人には見えなくて」


「わ、私これでも侵略者です!」


「そ、そう?」


「そうです!」


 そうにはとても見えないんだけどな。

 ミストレスさんもヤミノ博士も。

 パチンコ通いのヒモなレッドに出て来る悪の組織路線なのかな?

 ヒーローとの対決はするけどガチの悪事はNOな路線の?

 それならちょっと納得かも? などと考えたり。


「うん。ミストレスさん今のままでいいか」


「え?」

 

 何かまた顔を真っ赤にして驚いた様子をみせる。

 なんか誤解されちゃったかな?

 

「見つけた——アークゾネスの女幹部、ミストレス」

 

 女の子の声が後ろからした。

 振り向くとそこには三人の少女がいる。

 

「どちら様で——お知り合い?」


「ええ、まあ。何時も邪魔にならない場所で対決しているヒーローです」


「あれが?」


 よく三人を観察する。

 赤い髪の毛のポニーテールの女の子。

 青い髪の毛のロングヘア―の女の子。

 黄色い髪の毛のツインテールの女の子。

 全員スタイル抜群で胸(爆乳)もある。

 カジュアルな衣装を着て大阪日本橋の町に溶け込んでいた。

 

「「「変身!!」」」

 

 そして三人は変身。

 ドエロいピッチリスーツ、しかも白いベーススーツに各色対応のレオタードを重ね着した外観の赤、青、黄のスーパー戦隊が現れた。

 町のど真ん中で変身して言い訳どうすんだ?

 

『スターレッド!』


『スターブルー!』


『スターイエロー!』


『『『三人揃ってスターレンジャー!』』』


 決めポーズと名乗りまで決めている。

 取り合えず聞かないといけない事があった。


「その恰好恥ずかしくない?」


 三人戦隊はずっこけた。

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