エピローグ「それはまるで夢のように」
Side 羽崎 トウマ
=朝・トウマの自室=
あれから皆で、過去の自分の手を引っ張ってアレコレと遊び倒した。
一緒にゲームしたり、楽しく談笑したり。
俺はまるで自分の子供が出来たように感じた。
そうして気が付いた時には自分の部屋で目を覚ました。
まるでサンタクロースのクリスマスプレゼントのようにあの世界でみた映画のDVDや皆で撮った写真などが置かれていた。
そして手紙も——
☆
これを観ていると言う時は無事にあの世界から脱出できたと言う事だと思います。
僕が元凶だったのかどうか、今ではもう知りようもありませんが謝らせてください。
ご迷惑をお掛けしてごめんなさい。
皆と仲良くなれて嬉しかったです。
未来の自分へ。
正直に言うと未来の自分はこうなるのかと絶望しました。
でも希望もありました。
自分の事だから当たり前だからなのかも知れませんが、まるで親のように、教師のように、兄たちよりも兄らしく、接してくれてありがとう。
そして夢を諦めずに頑張り続けてくれていて嬉しかったです。
現実は辛い事だらけだけど、頑張ってみようと思います。
それとダイエット頑張ってください。
それではこの辺で失礼します。
過去の羽崎 トウマでした。
☆
そこまで読み終えてプレゼントの整理して出かける準備をする。
今の自分はうつ病で休職中。
ハメの外し過ぎはよくないが、家に閉じこもったままと言うのもよくない。
急に大阪日本橋に行きたくなった。
☆
=昼・大阪日本橋=
ただただ大阪日本橋を散策する。
大阪日本橋は時たま物騒な事が起きたりするけれども、良い事もある。
何も起こらない退屈な時だってある。
(久しぶりにプラモデル買おうかな?)
などと思い、プラモデルを購入する。
リハビリのつもりなので簡単なキットを選択した。
ちょっと心が上向いたせいか、あれもしたい、これもしたいと考えだしてしまう。
うつ病でよくある波だ。
調子がいい時もあれば悪い時も出て来る。
避けられない宿命である。
もう一生治らず、この病気と上手く共生していかないといけないのかもしれない。
その事よりも俺は小説の事を考える。
自分はプロではないがこの道何十年のアマチュアだ。
例え世界経済が、日本の国内景気がどうなろうと自分の夢みた小説のために文字を打ち続けるだろう。
叶わない夢を見るのはやめなさいと周囲は言う。
それはある意味では正しい。
特に周囲に迷惑を掛けてまで見る夢ほど性質が悪いものはない。
逆に夢を見ず、ひたすらに現実を見て生きなさいと言うのはどうだろう。
勉強していい学校、いい大学卒業して、いい職業に就職して、定年まで働いて老後を過ごし、マイホームやマイカーを持って、結婚して子供をつくり、孫が産まれ死んでいく。
一見すると素晴らしい人生に聞こえる。
個人の、父方か母方か、あるいは両方の夢を犠牲にしている点に目を瞑れば。
だからと言って夢を持つだけではいけない。
夢を持つと言うのは自分の人生に責任と覚悟をおわせることだ。
中学時代から漫画の専門学校に通った自分はそれがなかった。
なまじ中学時代の辛い経験をしてるから、適当な努力と言う名の免罪符を持っていたから。
そんな夢、失敗して当然だ。
今にして思うと、仮に夢が叶って漫画家の夢が叶ったとしても挫折して絶望しただろう。
夢を叶えても人生は続くのだ。
例え夢が叶ったとしても、辛い事はたくさんある。
たった一つの不運や間違いで自分が築いた栄光や栄華は崩れ去る時もある。
だがそれでも俺はあえて言いたい。
夢を本気で目指せる人になって欲しいと。
夢を見て、夢の現実を見て、どう頑張れば、どう努力すれば夢を叶うのか、それを実行できる自分になりなさいと。
それができて初めて夢の一歩が踏み出せるんだと。
中学時代の自分、高校時代の自分、専門学生時代の自分、その後の数年間のニートだった自分にはその一歩が踏み出せなかった。
今はどうなのかは分からない。
俺の気持ちも頑張りも、漫画か、あるいは小説の形で誰かに見られて、「ああ、そんな物語もあったね」と忘れ去られる物でしかないのか。
それでも歩み続けよう。
あの世界で出会った過去の自分とピュアリア達との約束だから。
閉鎖世界編END
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます