第5話「打ち明けて——」

 Side 羽崎 トウマ


 =昼過ぎ・自宅(?)リビング内=


 シリアスな空気がなくなり、次第に恥ずかしくなった。

 たぶん自分は今、とても顔を真っ赤にしている。

 皆そうだ。

 ウサリンでさえも恥ずかしそうにしている。


「あの——羽崎さん、私のことは野木さんじゃなくて、はるなって呼び捨てでも——」


「じゃあ私もまどかで——」


 野木さんに続いて桜さんもそう提案する。

 ウサリンは「ウサリンはウサリンでいいリン」と言っている。


「その代わり、羽崎さんのことトウマって呼び捨てでいいですか?」


「私もそう呼んでいいですか?」


「ウサリンもそう呼びたいリン」


 野木さん、桜さん、ウサリンの3人がそう言ってきた。


「分かった——その、はるな、まどか、ウサリン?」

 

 と、照れながら俺は言った。


「はあ——本当にこんなところ警察に見られたら通報もんだぞ……」


「もうトウマってばそう言う事ばっかり気にして——」


 野木さん改め、はるながそう言った。


「まあ、それが普通の反応なのかも」

 

 桜さん改め、まどかもそう言う。


「さて、これからどうします? オッサンの暴露会でも続ける? それとも探索パートに入る?」


 と、俺は話を続ける。


「トウマって楽しい思い出ないの?」


「楽しい思い出な——まあ、あるっちゃあるが——」


 どうやらはるなさんはオジさんの過去の暴露会がご所望らしい。

 

「例えば大阪日本橋——まあ話していく内に脱出の手掛かりが見つかるかも知れないし、いいか」


 リビングのガラスから見える大阪日本橋の風景を見ながらそう自分を納得させた。

 心なしか日本橋が明るくなっている気がする。


「そうリン、無駄じゃないリン」


「うん。ウサリンの言う通りだね。私もトウマの過去聞きたいな」


 ウサリンの一言にまどかは楽しそうに尋ねてきた。


「基本大阪日本橋には一人で行ってるんだけど、遂先日まではプラモを専用の機器に通してプラモを通して戦わせるネクプラバトルとかやってました」


「ネクプラバトル?」


「ガンネクって奴のプラモデルを戦わせるの?」


 まどかは疑問符を浮かべ、はるなが質問した。


「うん。最近はあまり作ってないけど、ネクプラのプラモデルとかも沢山作ってました。その御陰で室内が子供部屋おじさん状態です」


「子供部屋おじさん……」


「あとトウマさん、自虐癖ありますね……」


 はるなとまどかは苦笑した。


「まあどちらにしろ褒められた部屋じゃないですね——あと、昔はラノベとかも購入してたけど、最近は電子書籍が普及して——よほどの物じゃない限りは近所の本屋さんで購入するかな?」


「あの、ラノベってなんですか?」


「僕も疑問に思ったリン」


 と、まどかとウサリンが質問した。

 ここではるなさんが意外そうな顔をする。


「ラノベ知らないんだ?」


「一応聞いた事はあるかなってレベルかな?」


 はるなの問いにまどかが困ったような顔をする。

 俺はと言うと(ラノベの一般人の認知度ってこんなモンだよな)とか思った。

 ニートから脱却して社会に出て驚いた事だが、一般人のラノベの認知度はそんなに高くない。(今はどうだか知らないが……)


 同僚に将来の夢はラノベ作家になりますとか言ったら何故か芥川なんちゃらとかそう言う高尚な物を目指している作家さんと誤解された事もあったのも懐かしい話だ。


「ラノベと言うのは——まあ定義にもよるが中学生並みの読み易い文章で構成された、挿絵とかイラストとか沢山ある本みたいな認識でいいと思うよ」


 この説明の仕方も何かしらの不備があるかも知れないが考え込むとキリがないのでこの説明で良いんだと自分自身に言い聞かせる。


「で、自分は夢としてそんなラノベ作家を目指しているんだけど——中々なれないんだよね——」


「て事は書いている作品はあるんですか?」


 まどかがそう言ってくる。


「うん。短編と言うか掌編? は幾つかあるね。基本はヒーロー物を中心に物語を書いてます」


「ヒーローが好きなんですか?」


「はい」


「どんなヒーローが好きなんですか?」


「そりゃ——ライドセイバーとかメタルヒーローにウルトマイトとか——」


「その話、もっと詳しく聞きたい」


 一度、話を聞いているはるながそう言ってきた。


「ライドセイバーとかの話?」


「うん、一押しとかあるの?」


 はるなに言われて考え込む。


「一押しあげるとキリがないけど、今回の事件絡みで言うとライドセイバーディセイドとかウルトマイトゼロとか——並行世界を移動できるヒーローとかが頭に思い浮かぶな。戦隊ヒーローだとゼンカイV(ファイブ)が思い浮かぶな——アレも並行世界題材にしてるし」


「ヒーローの事詳しいリンね」


 と、ウサリンに褒められた。


「ど、どうも——まあ近くに大阪日本橋ありますし、玩具屋みながら解説でもいいかな?」


「あ、それいいな」


「じゃあ行こうか」


 はるなとまどかはノリ気だ。

 ウサリンも「僕もついていくリン」とついてくるようだ。

 リビングで解説してばっかだし、それにどの道、日本橋の探索は避けられないのでこの機会に丁度いいと思った。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る