閉鎖世界編

プロローグ

 Side 羽崎 トウマ


 =朝?・1日目・大阪日本橋?=


 自分は奇妙な場所にいた。

 眼前には大阪日本橋のオタロードが広がっている。

 時間帯は店が開店する前の9時代ぐらいだ。 


 この時間帯の日本橋は活気がなく、ホームレスの姿が見えるぐらいだ。

 あとはグッズ目当てに、熱心に列待機している人とか。


 そんな人間の姿すら見えない。


 静かすぎる。


 よく見れば車も散乱しているゴミも無い。

 せいぜい落書きがあるぐらいだ。


 ホラームービーとかを連想させるような状況だ。

 これがホラームービーなら何処かから化け物が獲物である自分を狙っているだろう。


 それよりも気になる事は——


(どうして自分が通っていた中学校とか、住んでる自宅とか、近所のショッピングモールとかあるんだよ)


 大阪日本橋と自分の住んでるI市はかなり離れている。

 金額で言うなら電車で500円近くの距離はある筈だ。

 なのにI市にある自分の家があるわ、ショッピングモールがあるわ、さらには中学時代に通っていた、T市のT中学校もあるわと言うカオス具合だ。


 もうこの空間は自分が何かしらの形で深く関わっていると言っているようなものだ。

 

 

(それはともかくこれからどうするかだけど——正直中学校にはあまり近づきたくないな……)


 状況が状況なのもあるが、イヤな思い出が多すぎる。

 あまり他人のせいにしたくない主義だが、自分の人生の歯車がぶっ壊れたのは間違いなく中学時代のイジメが関わっているからだ。


 夢でも時たまイジメてきた人間をボコボコにするイヤな夢を見る時がある。

 逆を言えばそれだけ心の奥底では殺したいと今でも思っているのだろう。


 最近は「イジメられたのは自分も悪かった」と言い聞かせてもう考えないようにした矢先にこれである。


(今頃あいつら何しているんだか……)


 世の中は不条理だ。

 過去にイジメをしたからと言って、大人になってから天罰が下ることなんてのは稀だろう。

 実際、悲惨な末路を辿った被害者の傍らでいじめの加害者がノウノウと生きて悪事を犯すなんてのも珍しくもない。


 考えるだけ無駄である。今更どうしようもない。


 今はそれよりもこの謎空間の脱出方法だ。


 眼前には何時の間にか派手なマゼンタ―からの髪の毛の女の子がいた。

 背丈からして女子中学生、それも中学入りたて。

 どっかの制服を身に纏っている。

 

 段々と近づいてきた。

 髪の両サイドにヘアピンをつけていて、ヘアカットに失敗したのかちょっと変にオデコを出している。

 それ以外は普通の女学生だ。


「あの——私、野木 はるな! ラヴァニア中学2年生です!」

 

 これが野木 はるなとの出会いだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る