工藤 怜治の物語

*本作品はPIXIVに掲載した作品(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16049905)を改稿した物です。


Side 羽崎 トウマ


「人様に迷惑かけんじゃねーよ」


「く、くどうれいじ・・・・・・」


 工藤 怜治。


 大阪日本橋で恐れられる存在。


 とにかくケンカがデタラメに強く、その筋の人間ですら関わろうとしない。

 今日も人様に絡んでいたオタク狩りをノシたところだった。


 だけどそんな彼も悩み多き高校生。


 とあるラノベ作家のアドバイスで最近は肉体関係のお仕事につこうかなとか、勉強に力を入れてみたり、せっかく大阪日本橋にいるんだから趣味に力を入れてみようと考えた。



 そうして行き着いたのがネクプラバトルだった。



 Side 工藤 怜治


(ネクプラって色々あるんだな・・・・・・)


 玩具屋で悩む。

 ネクプラと言っても様々。


 どれがいいのか全く分からない。

 そんな時にふと知り合いが目に入った。


「羽﨑さん」


「あ、工藤君。珍しいところで会ったね」


 羽崎 トウマさん。

 長身で中年太り気味で最近は趣味だけでなくダイエットにも力を入れてるらしい。


 本人曰く「学生時代の感覚で食生活続けていたら大人で苦労する」だそうで俺は(大人も大変なんだな)と思った。


「実はネクプラ作ってバトルしてみようと思いまして」


「バトルか・・・・・・ネクプラ作るだけならいいんだけどバトルとなると・・・・・・気軽にならいいのか?」


「難しいですか?」


「この土地のバトルしてる人ってプロモデラーに片足突っ込んでる人とかもいるからね。とてもハイレベルだよ」


「その割りにはけっこう勝ち星挙げてるって聞きますけど――もしかして羽﨑さんプロモデラーの方でしたか?」


「バトルシステムの関係とかかな?」


「?」


 そこからネクプラバトルについて学んだ。

 とにかく説明書通りに作ったネクプラでは常連さん相手のバトルには通用しない。

 だが、いいネクプラ作るのは素人の自分でも大変なのは分かる。

 

「出来ればSDとかジェム系のキット、後初代ガンネクのキットで練習するのがいい。工藤君の場合ゴッドネクスとか似合いそうだけど――」


「ゴッドネクス? 神のネクス?」


「格闘戦に特化したガンネクだね。バトル漫画みたいな必殺技とかも持ってる」


 と、解説を聞いて工藤君はこう言いました。


「ネクプラってスター○ォーズみたいなの考えてたけどそう言うのもあるんですね」  

 

「一般人の考えるガンネクってそんな感じなんだってちょっと今驚いたところだよ」


「すいません。ガンネクってあまり見たことないもんでして・・・・・・エ〇ァとかも多少見たことあるぐらいで。エ〇ァもガンネクなんですか?」


「はあ・・・・・・まあそう言うのが普通なのか・・・・・・」


「?」


 この時の俺はワケが分からず首を捻る。

 羽崎さんの苦笑と言葉の意味を理解するのはまだ先の話だった。



 悩んだ末にゴッドネクスと普通のガンネクス(HGの新しい奴)を購入。

 HGの二つのキット分の値段を見て(服並みの値段なんだな)とか思ったりした。


 まず最初に普通のガンネクスを組み立てる。


 取り扱い説明書を見ながらランナー順にパーツを組み込む作業に苦戦したり慣れないシール貼りに苦しめられたり、オマケにパーツの付け忘れでパーツを外す羽目になったりとか色々な苦労を経験した。


 休憩を入れながらネットでネクプラを検索して出来映えを見てみると凄いとしか言いようがない作品だらけでした。


(ネクプラベースとか飾られてる奴とかもみたけど皆凄いんだな・・・・・・)


 あそこまで夢中になれる。

 一生懸命になれる。

 モデラーと呼ばれる人達の凄さや拘り。


 人生ケンカ屋状態の俺はなんだか羨ましい物を感じた。

 


 様々な苦労を重ねてHGのガンネクスが完成した。


 しかしランナーの切り残しやらが気になったり、思うような出来にならず、正直不満だった。

 どうしてこんなに作れないんだろうと言う感じで悩み、俺はある事を思いついた。


「ガンプラ作るところ見させてくれませんか?」


「は?」


 と、羽﨑 トウマさんにお願いすることにした。

 とりあえず日本橋の喫茶店でHGの自分が作ったガンプラを見せることにした。


「自分はプロじゃないからあまり上手く言えないけど、自分が手を加えるならゲート処理とか、部分塗装とか、墨入れ、仕上げのスプレーぐらいが限界かな? どれも時間が掛かるし、自分のゲート処理や墨入れは独特だから参考にならないかも」


「いえ・・・・・・」


 そして男二人でネット喫茶を借り、俺は羽崎さんのガンプラを制作する過程を眺める。

 作るキットはガンネクスAGEと言う作品に出て来るジェリスタ。最初は大雑把に組み立て。

 そして見たかったゲート処理や墨入れを見ていくことになります。


「ゲート処理のやり方は切り残しをニッパーで切って爪で擦るとか、ヤスリで削るとか色々あるけど、自分は模型用のデザインナイフで削ってヤスリで整える過激なやり方かな。自分でやっといてなんだけどお薦めできないね」


「ふむ――」


「ここからの作業はある意味お好みだ。部分塗装するか全体塗装するかは好みだ――で、墨入れは水性のペンで慎重にやっていくんだけど、水性の筆ペン仕様の奴を使って大胆に入れて――んでティッシュで拭き取っていくと上手い感じに残る」


「ああ、そう言うのもあるんですね」


「仕上げのスプレーについてはHGに恋する二人って言う漫画に描いてある通り、周囲の迷惑などを考えて、晴れた日にする事がポイントだ。なのでまた場所を変えて仕上げだね。つや消しとか光沢、半光沢とかあるけどそれはお好みだ。ウェザリングとかのワザとプラモデルを汚す手法とかもそうだね」


「そこまでするのか・・・・・・」


「これでもまだ足りないぐらい。合わせ目消しとか――あとはプロの人はキットのプロポーショーンとかで足の長さとかを延長したり、短くしたり、肩の位置を調節したりとかするからね・・・・・・」

   

「女が足やウエストのの長さとか太さとか体重を気にするようなもんか・・・・・・」


「それをネクプラ相手にやるんだよ」


「凄い世界ですね」


 そこまでする情熱が凄い。

 自分にはとてもない物だ。

 

 同時にこう言う世界もあるのかと感心した。


  

 ネクプラの改良作業を経てついにガンプラベースで初バトル。

 別の意味で、そして悪い意味で有名人である俺は遠巻きに眺められていた。


 初バトルの相手は羽﨑 トウマさんのザスと言う機体だった。

 俺にとってザス=一つ目の典型的なやられメカと言う印象だったが――


(作る人間が凄いとこうまで違うのか!)


 羽崎さんの作り手としての実力はプロモデラーと呼ばれる人達には及ばないかも知れないが、素人目で見てもかなりの出来映えだった。

 そしてネクプラバトルではそれは機体性能として反映される。

 操縦技術と相俟ってとんでもない強敵として立ちはだかってきた。


 今、自分が操縦しているガンネクスも対戦相手当人からの改良がなかったら、例え手加減されていたとしてもとっくに勝負はついていただろう。


(おもしれぇ・・・・・・)


 ずっとケンカ負け無しの彼にとって初めての感覚。

 そして知らず知らずのウチに求道者的な一面が芽生えていました。



 バトルには負けましたが、ネクプラバトルを続けたい。


 そんな気持ちが湧いてました。


(初めてかもな。勝負事で負けてこんな清々しい気持ちになるのは)


 と、考えながら帰路につきます。



 Side 羽崎 トウマ


 そして少しばかりの時は経ち――


 ネクプラベースでは工藤 怜治のゴッドネクスが暴れ回っている。


 まだまだ作りは荒いですが、操縦技術や制作技術ともに大幅な進歩を遂げている。


 それを見て自分も戦いに参加。

 使用する機体はアデリア。

 ガンネクAGEに登場する水色の量産型MS。  


 墨入れ、ゲート処理、合わせ目消し、仕上げのコート処理。

 自分はどこまでこのガンプラの出来映えを高める事が出来るのか?

 それを追求して追求して――辿り着いた一作。


 そんな本気のガンネクを観て何かを感じ取ったのか工藤 怜治は言った。


「あの時の続きと行こうか!!」


「ああ!」    

   

 歳も十歳以上離れた自分と工藤が、ネクプラバトルを通じて本気でぶつかり合う。

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