大阪日本橋・羽崎 トウマ物語
MrR
トウマの一日
*本作品はピクシヴで投稿されたやつ(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16006862)を改稿したものです。ご注意ください。
Side 羽﨑 トウマ
プラモバトル。
またの名をネクプラバトル。
丸いマスコット系スキャナーマシンにプラモを通して映像で映し出された立体フィールドで戦う新興競技。
女性モデラーの参加者も多く女子高生からネット配信者な大人まで様々。
中には現役アイドルまでいる。
雨宮 ユキナもそんな女性モデラーの一人。
華奢で小柄な女子高一年生。
長い髪の毛で片目を隠して中学生にも見える容姿をしている。
まるで童話に出て来るような可愛らしく、愛くるしい女の子がスキャナマシンにプラモを設置してプラモバトルに興じていた。
戦場は宇宙空間。
使用する機体はガンネクス・ダブルオーセイバー。
ガンネクス00劇場版に出てきたガンネクスで性能は数多く存在するガンネク(ガンネクスの略称)作品の中でも数多く飛び抜けている。
しかしこれはネクプラバトル。
プラモの出来映えがそのまま性能に直結する。
雨宮 ユキナは操縦技術も制作技術も未熟であり、本領が発揮できていない。
そもそもダブルオーセイバー事態が上級者向けの機体であり、ソードビットなど上手く使いこなせないでいた。
自分が使うのはガンネクAGEに出て来る量産型MSアデリア。
水色のヤレラメカっぽい外観。
プラモの出来映えは合わせ目消しやトップコートの吹き掛けをしておらず、墨入れも部分的ですがゲート処理などは丹念にやっているつもりだ。
またアデリアと言うガンネクも初心者向けと言うのもあり、手軽に出来映えを高めることが出来るのも幸いして性能の上昇補正の恩恵を大幅に受けてダブルオーセイバーと互角以上に渡り合えている。
先に語った通り、雨宮 ユキナの腕前やモデラーとしての腕前の未熟さもあるが、これがネクプラバトルの恐ろしいところだ。
ルールは残機制の三機制マッチ。
さきに三回撃破されたら負けのルールですが既に二回とも雨宮 ユキナは落とされており、後がない状況。
ヤケクソでガンネク00系の機体の特徴でもある機体の出力を三倍化させるストリームを使いますが使いこなせずに場外ペナルティを食らったり、直線的な動きになったところを狙われて――具体的には距離を離されて真っ直ぐに近付いたらそこを狙われてアデリアの武器であるドリルライフル(ビームライフルの一種)の直撃を受けて落とされた。
「トウマ強い・・・・・・勝てない」
そしてバトルが終わり、少女――雨宮 ユキナはムスッとした表情で言ってきた。
「だから機体選びなよ――混んでるから次な」
「うーん」
ネクプラバトルが出来るネクプラベースは何時も混んでる。
競技人口が急速に加速して追いついていない状況だ。
この大阪日本橋でもすでに二番館が存在してフル稼働中。
中にはネクプラバトルシステムを導入する店や個人で購入する人まで出る状況だ。
この大阪日本橋のネクプラベースでも順番待ちで整理券購入システムやら係員やらを導入して捌いている状況が続いている。
なので順番交代。
三十代のオッサンである自分と十五歳の少女は台を離れていく。
☆
三十代のオッサン、自分——羽﨑 トウマと十五歳の少女、雨宮 ユキナの二人の出会いはネクプラだった。
雨宮 ユキナが子供達を庇うようにネクプラバトルでガラの悪い兄ちゃん達に絡まれていて、トウマは勇気を振り絞り助っ人としてネクプラバトルに参戦。
あわや警察沙汰の緊迫した状況だったが、周囲には大人の係員だけでなく自衛官やら本職の刑事やらケンカ師もいてどうにかなった。
それからなつかれるようになった。
今は玩具屋でバトルで使うユキナのネクプラについて考えていた。
「やっぱりSDがいいと思うんだけどな・・・・・・HGならジェム系とかそう言うのが良いと思うんだけど」
「AGEーフルエックスとかはダメ?」
「うーん・・・・・・操縦難しそうな機体はちょっとな」
などとコアな会話をしている。
トウマも最初はダブルオーセイバーの出来映えを上げて性能を高めようとしたが、今のユキナの腕前では性能が高くなると操縦が難しくなって戦闘どころではなくなる可能性もあったので却下した。
なので使いやすい機体をお薦めしようとしましたが、ユキナは強いけど使い難い機体をチョイスします。
(いっそ鉄血系でもチョイスするか?)
などと考えていた。
その時でした。
「アナタですね。最近ユキナに付き纏っているのは」
「えーとどちら様? この子のご学友の方でしょうか?」
背後からやや小柄ながらセミロングの茶髪の意志の強そうな気高い瞳。
そしてアスリート系の引き締まった体付きの制服姿の女の子が現れたのは。
「私は柊 ハツネです。ユキナもこんな人につきまとっちゃダメでしょう」
「私もう15歳だよ」
「それでもです。普通なら警察案件ですよこれ?」
「そんなの知らない」
などと二人は言い合う。
「アナタも何か言ってあげてください」
「言ってはいるんだけどね・・・・・・」
絵面的な問題もあるので俺は何度か遠ざけたようとしたが、雨宮 ユキナは童話のヒロインのような背格好に反して中々頭が回る子で「変質者として通報します」などと脅迫してきたり、自分の容姿を自覚しているのか「そんなに私のこときらい?」などと可愛らしいお姫様のようにキラキラさせて訴えてきたりを巧妙に使い分けてくる。
もうそんなやり取りを何度も繰り返しているウチに俺の心は折れた。
「ネクプラバトルなら私がしてあげるから――」
スマホを弄くりながらユキナはハツネにこう言った。
「じゃあこの人にネクプラバトルで勝ったら聞いてあげる」
「言いましたね。ソレでアナタも文句ありませんね」
「ああうん」
有無を言わさぬハツネの迫力に俺は後退りし、
「手加減してワザと負けたら通報します」
と、ユキナも逃げ道を塞いでくる。
こうしてユキナを懸けたネクプラバトルが強制的に始まるのだった。
どうしてこうなった。
☆
「で? えーと、柊さん? 流石にもうちょっと時間を掛けた方がいいのでは?」
模型作りと言うのは時間が掛けます。
本気で作るとなると、出来映えを追求するとなると一体作るのに、二、三日どころか一週間以上、一ヶ月ぐらいは普通に潰れる。
平行して操縦技術を磨くとなると二週間でも短いぐらです。
にも関わらず僅か翌日でした。
プラモに親しんだ人ならそれがどれだけ無謀な行為なのか分かることでしょう。
「大丈夫です! やれます!」
「えいえいおー二人とも頑張って――」
「え、えー」
戦場は市街地。
ルールは五分間マッチでどれだけ相手を撃墜したかの回数を競うルール。
柊 ハツネの相手の機体はHGのストライダールージュ。
ストライダーパックなどの組み替えで機体の特性が大幅に上がり、またPD装甲によりビーム兵器以外の実体弾が効き辛いと言う特性を持ちます。
今回は機動性重視のエールストライダー。
出来映えの面は説明書を見ながら素組で頑張って作って完成させてそのまま満足したんだろうなと言う感じの出来です。
より具体的に言うと合わせ目消しはともかくゲート処理が甘く墨入れもしてません。
「そんなネクプラで大丈夫なの? ハンデのつもり?」
「いや、出来映えの面なら最強のガンプラを作った」
トウマの言葉に嘘偽りはないがどうしても不満を持たれました。
トウマのキットは型は古い平成半ばのSDのネクキャノン。
頭身も最新の型とは違い約二頭身。
遠目から見れば弱そうに見えて仕方ありません。
ですがユキナはそのネクキャノンを見て気づいたのか「ハツネ、本気でやった方がいい」とアドバイスを送ります。
☆
「う、嘘!?」
ストライダールージュがSDのネクキャノンのビームライフルの直撃を受けて撃墜。
既に十回落とされています。
散々な状況で逆に罪悪感を感じるレベルだ。
だがヘタに手を抜いてユキナに通報されるのも恐い。
俺が使用しているネクキャノンは素人目から見ても高い出来映えのネクキャノンだ。
ネクプラ作りと言うのは本当に不思議な物で時折、自分でも信じられないような出来映えのガンプラが出来上がる時がある。
自分の使うSDのネクキャノンはその一つ。
パテ埋めや合わせ目消しなどはしてないが、ゲート処理、墨入れ、部分塗装、トップコート仕上げ(光沢)などをしている自慢の一品。
その性能はSDのネクキャノンとは思えない程で――しかもまだ伸び代があると言う恐るべきものだった。
地上をとても砲撃戦MSとは思えない程の速度で駆け回り、機動戦闘用装備のストライダールージュを機動性で圧倒。
戦いはコールドゲームのまま終わった。
二戦目は何故か「ハンディキャップマッチ」となり、当初の目的も忘れてハツネ(ストライダールージュ)とユキナ(ダブルオーセイバー)がタッグを組んで勝負を挑んできた。
俺は完全に悪者状態で居心地が悪くなり、目尻から涙を流しながらも戦い続けました。
ちなみに俺の完封で終わりました。
☆
俺は逃げ込むように馴染みのたこ焼き屋に逃げ込みました。
浪速姉妹と言う名の売れた看板娘二人が経営している屋台です。
浪速姉妹の姉、藤波 リカ。
茶色い髪の毛を逆立てていて男勝りな長身の美女。
ケンカがめっぽう強い事が有名で男っぽいファッションに身を包んでたこ焼きを焼いている。
妹の青葉 サキさんは今回は不在。
ちなみに二人に血の繋がりは無いが、仲の良い姉妹として知られている。
藤波 リカさんは愛想良く、羽﨑 トウマに「ダイエット中とちゃうんか?」とか「さっきのネクプラバトルほんまお疲れ様やな」と言ってきます。
俺は屋台が用意したベンチにたこ焼きを手にして座りました。
「大変だった・・・・・・つか疲れた。あの様子だとまた挑んでくるパターンだこれ」
「まあ気持ちは分かるな。ウチも勝ち逃げされるのはイヤやもん」
「そだね」
「私もネクプラバトルはじめてみよかな? 女性がやると動画配信で広告収入とか凄いんやろ?」
「金のためならなんでもしますね」
そう言うと藤波 リカさんは大笑いしてこう言いました。
「世の中、なんだかんだで金や。金稼ぐのに必死になってなにが悪いんよ。まあそのための筋は通さなしっぺ返し食らうけどな」
「その歳でその境地に辿り着けて羨ましいと思うよ」
「なんや? 新手の口説き文句か?」
「いや、本音ですよ。あと彼女はたぶんつくれないし、できないと思うから」
「枯れてんな、オッサン」
「まあな・・・・・・」
正直、俺にとってネクプラ作りやネクプラバトルは現実逃避の手段だ。
それになんだかんだ言って雨宮 ユキナとの関わりがそんなに悪い物ではなく、続けたいとも思っていた。
大人と言うのは少年時代などと違い、人間関係がどうしても複雑になったりとか孤立しやすい年代だ。
特に三十代にもなると社会的に孤立するケースもあるそうだ。
だからか雨宮 ユキナなどとの繋がりが断たれるのが何時か終わる物だとしてもそれが終わることに俺は恐怖心のような物を感じていた。
「どうしてこうなっちまったんだろうな・・・・・・」
「こんな筈じゃなかったってか?」
「ああ。夢なんかとっとと捨てちまえばよかったのに・・・・・・なんて思っちまうよ」
「なんになりたいんや?」
「ラノベ作家」
「そうか。叶うといいな」
「ああ」
涙を流しながら冷めたたこ焼きを頬張った。
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