第13話 : テンプレ = ミールキット論
創作上で話題になるのがテンプレについてです。
概ね否定的意見が多いようですが、読者側からすれば安心して読めるという利点もあるように思います。
筆者はテンプレについて否定的意見を持っていません。
テンプレの中に個性があるかどうか、それって盗作もどきじゃないかという意見はある程度理解できます。
それでもテンプレ的展開に持っていくまでの過程だとか、そこに出てくる小さなエピソードに自らのオリジナリティは出せます。
ストーリーの構成そのものをいきなり完全なオリジナルにするのは無理があると思っています(別話で記しますが、悲惨な失敗経験ありです)。
独り善がりの物ではなく、誰かに読んで貰うことを前提にするのならばラブコメやファンタジーのテンプレートはある種の完成形に近いのではないでしょうか。
数多の構成スタイルからそのパターンが生き残っていると言うことは読者がそれを選んでいるということでしょう。
例えばファンタジーの世界でいきなりチートやらスキルが与えられる展開を考えてみれば、主人公はこういう能力があるのね、それをどう生かすのかね、と読み手は想像します。
五里霧中ではなく、そこに安心感を持って読めます。
水戸黄門の印籠だって同じような物だと思えば理解頂けますか。
沢山の時間を掛けてテンプレではないアイディアの構成を考えることは素晴らしい脳トレですが、そこにエネルギーを使うならエピソードに知識や経験を投入した方が時間の節約になりますし、筆も進んで建設的だと思いませんか。
テンプレ展開にしろと言っているわけではありません。
ただ、一から展開を考えるのは非常に労力が要ります。
本作は書き慣れた作家様に向けて書いているわけではないので、これから作品を書いてみたいという方はテンプレ的展開にすることをつまらないと思わないで欲しいと言いたいのです。
私は以前書いた小説の中でクリスマスプレゼントをどうするか、これを必死で考えました。
PVが全く伸びない作品で、今は消してありますが様々なアイディアだけはそこに全力投球することにしたラブコメです。
で、思いついたのが「キッシングチーフ(kissingchief:私の造語)」というアイディアです。
似たようなことを考えている人がいないかをネットで探しましたが、多分どこにもない完全オリジナルだということで、それが分かった時はガッツポーズをするほど嬉しかったです。
どんな物かというと、ハンカチの並ぶ二辺に恋人同士のネームを刺繍するものです。
こうすれば折って入れられたポケット(あるいは鞄)の中でずっと(刺繍を通じて)キスをしていられるという品物です。
このアイディアはJR東京駅前にあるショッピングモールでハンカチにネームを入れるサービスがあるのを知って思いついたものです。
ネームとは自分だけの物なのか? というふとした疑問から考えつきました。
他人のネームが一緒にあったらどうなの? と。
もう一つ、これは何処かの作品で使おうと思っているのですが、今のところ使えそうな作品が思いつかないので取り置いているアイディアです。(ランキング一位記念の大盤振る舞いで公開します(笑))
クリスマスプレゼントに手袋を送ります。
少し厚手の革の物、それを相手にはめてもらうと違和感が……あれっと思って手を抜けばその薬指にはダイヤモンドの指輪が……そして、「僕の気持ちを受け取って」という言葉が。
随分洒落たプロポーズだと自分でも思いました。
実際には指輪が簡単に嵌まるわけもなく、現実にはあり得ない話ですが、小説ならば何でもアリです。
こういう小さなアイディアだって、自分なりのオリジナルです。
テンプレ展開の中でも個性は充分出せるのです。
テンプレを忌避するのではなく、時短であるとか、それを自分の中でどうアレンジして個性を出すかを考えてみる。時にはイベントに出てくる小物だけでもアイディアは生かせます。
テンプレは「ミールキット」だと思えば良いのです。
ミールキットに自分なりの味付けを加えてオリジナル感を出す。そう思えばテンプレもあながち悪くないと思えませんか。
固く考えずに、まずは構成を考えてみる。
それが誰かのアイディアに似ていたって気にしない。
個性は細部にだって宿らせられる。
そう思えば筆は動いていくものではないでしょうか。
◇◇◇◇◇◇
カクヨムコンが始まると「注目の作品」がトップページに表示されなくなるのですね。
「創作論・評論」は部門がないので、この作品が載ることもありません。
そうなると本作をフォロー頂いた方かランキングあたりから検索しないとこの作品には辿り着かないということになります。
カクヨムを使い始めて何年か経つので知らなかったでは済まされないのでしょうが、正直、「あ、マズいかも」と思いました。
(因みに本日めでたく(?)ランキング二位になりました。少しプレッシャーから解放されました。パチパチ)
ともあれ、本作はコンテスト期間中でも投稿を続けます。
引き続いてお読み頂ければ幸いです。
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