第9話 週休2日から1日に

 ギルドハウスに着いた俺は次の日の朝、買い物に行く前にギルドに集合することを伝え家に帰って休んだ。


 次の日。俺は起きて待ち合わせの部屋ではなく、2階1番奥のリーダーの部屋に向かった。


 今、俺は椅子に座るギルマスと向かい合っている。早速、ギルマスが話を切り出す。


「昨日のメール見たわよ」


 俺は真剣な顔でこちらを見つめてくる昨日、家に帰ってからギルマスから昨日送ったメールの返信が届いた。


 メールには


『明日、私の部屋に来て』


 そう書かれているだけだった。だから、今、ここにいる。


「冬樹さんの面倒を見る代わりに仕事をしなくていいかってことよね?」


 俺は頷く。


「結論から言うと駄目」


「そう、ですか」


 やはり駄目か。ギルドの状況は良くない。最初からなんとなくわかっていた。


「あなたもわかってると思うけど、今のギルドの資金は足りていない。だから、あなたの時間を他に割きたくない」


 昨日の時点で了承が出ないのはわかっていた。諦めるか。


「そうですよね。わかりました。雪葉にもそう伝えておきます」


 俺がそう言うとギルマスは話を続ける。


「でも、無くせはしないけど、減らすくらいならいいわよ」


「は?」


 思わずそう声が漏れる。聞き間違いかと思いもう一度尋ねる。


「今なんて?」


「週3。それだけ働いてくれれば後は好きにしてもいいわ」


「まじで!?」


 聞き間違いじゃない。俺は身を乗り出してギルマスに尋ねる。


 週3。元々は週5。平日と土日に1日ずつ休みを入れてダンジョンに潜っていた。


 俺の体力的に2日は休まないと学業とダンジョンの両立ができなかった。それが週3だ。2日は雪葉に専念できるし、雪葉の教育であれば1日の休みで疲れも取れる筈だ、


「週3でいいんですか?」


「えぇ、でもその代わりちゃんと一人前になるように面倒を見て彼女を育てるのよ」


 当たり前だ。学校の後輩というのは納得いかないが、もうギルドの一員。学校外ではしっかり支えて上げたい。


「わかってます。雪葉はギルマスより優秀な魔法使いに育てますよ」


 俺はそう答えた。それを聞いたギルマスは


「私よりね。してみなさい。そうすれば、私たちも楽になるわ」


 そう言ってそっと微笑んだ。


 話を終えた俺は部屋から出て、待ち合わせの広い会議室に向かう。まだそこに雪葉の姿はなかった。俺はそのまま席に座り、ボーッとする。


 少し経って、雪葉部屋に入ってきて


「おはようございます」


 と挨拶をしてきた。俺はそれに軽く手を上げて


「おはよ」


 と返す。


 雪葉の服は昨日の初心者装備と違い私服で白いブラウスに赤いチェックのスカートというシンプルな服装だ。その格好は清楚な雰囲気の雪葉によく似合っている。その反面、頭にはキャスケットとそして眼鏡をかけている。その眼鏡は度が入っていない。伊達眼鏡だろう。しかし、よく似合っている。


 流石は学校のアイドル。眼鏡と帽子で顔が見にくいがそれでも美少女だってわかる。


 そんな雪葉を眺めていると


「あ、あの…」


 と声を漏らした。


「どうかしたか」


 と俺は聞く。すると雪葉は自分の袖やスカートをチェックするように眺めながら、


「どこか変なところありますか?」


 と聞いてくる。


「いや、ないよ。ただ可愛いなと思って」


 と俺は正直な感想を伝える。雪葉は俯いて顔を赤く染めて、少し嬉しそうにしている。


「ありがとうございます」


 そうお礼を言う。その姿がまた可愛い。

 ただ惚れることはない。雪葉はただのギルドメンバーだからな。


 俺は気を取り直すようにコホンと咳払いをして、話を始める。


「さて、これから杖を買いに行きたいんだけど、その前に一つ話さなきゃいけないことがある」


「なんですか?」


 突然の話に雪葉は心配そうにそう聞き返してくる。俺は少し間を開けて、今回の本題を切り出す。


「さっき、ギルマスと話したんだが、週3回ダンジョン探索すればあとの日は全て雪葉に同行していいって許可が出た」


 雪葉はそれを聞いて目を見開く。


「ほ、本当ですか!?」


 と確認してくるので俺は大きく頷く。すると、雪葉は嬉しそうに声を上げ


「蓮斗さんこれからよろしくお願いしますね!」


 そう言って頭を下げた。俺は雪葉に ああ、と頷く。


「それで、1日休みを入れて、週3日分雪葉の教育をしたいと思っているんだけど、都合の良い曜日はあるか?」


 と雪葉に尋ねる。


 すると雪葉は少し考えて


「水、金、土でお願いしてもいいですか?」


 提案してきた。

 土曜だけにしてくれたのは俺が休めるようにと気を遣ってくれたからか。


「わかった。じゃあ、水、金、土の3日間で雪葉の指導をする」


 そう答えると雪葉は嬉しそうに


「はい!」


 と返事をした。


「でも、今日は大丈夫なんです?」


「あぁ、午前中、雪葉の杖を買いに行って、午後からダンジョンに潜るから」



 そう答えると雪葉は不安そうな表情を浮かべた。


「蓮斗さんは大丈夫なんですか? 日曜日ですよ?」


 心配してくれるのはありがたいが俺は首を横にふる。


「金曜日も土曜日もそんなに動いてないから大丈夫な筈だ」


「わかりました。でも無理はしないでくださいね」


 と雪葉は安堵の表情を浮かべた。


「あぁ、わかってるよ」


 と俺は答える。


「じゃあ、早速杖を買いに行こうか」


「はい!」


 雪葉は元気よく返事をした。

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学校では普通の俺がダンジョンで助けた少女は学校のアイドルだった〜元最強ギルドの剣士はダンジョンでも学校でも充実した生活を送りたい〜 吹雪く吹雪 @hubuku_hubuki

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