4 after【New 8】ノエルVS騎士団長令息ガイル(後編)
「負けたぁああああああ!! ノエル、チート使ったのに負けたぁああ!」
ノエルとガイルの試合が終わった。
結果は僅差でガイルの勝利。
ノエルは地面に這いつくばって、「うぉぉぉ」と叫んで悔しがっている。
「チート、役に立たない……。女神さま、無能……」
「そういうこと言わないの」
ノエルをたしなめながら、勝利の余韻に浸るガイルにも、やや引き気味な視線を送る。
「あんたも大人げないわねぇ。4歳相手に全力勝負って」
「いや、ノエルの実力は本物だ。中途半端な手加減はむしろ非礼に当たる」
「あ、そう……」
「またやろうぜ、ノエル」
「おう。次は負けない、くびをあらって待っていろ」
「勇ましいなお前、気に入った」
再戦を誓い合い、がしっと握手をする二人。
年の差と種族差を越えた友情がしっかりと育まれていたようで、なんだか微笑ましい。
ノエルを連れてきてよかったわ。
そういえば――と、私はふと思い出したことをガイルに尋ねた。
「ねぇ、ガイル。ソフィは元気にしてる?」
ソフィ・ネール侯爵令嬢は、私の友人。そしてガイルの婚約者だ。
ソフィはかつて『ミレーユの取り巻き令嬢A』であり、そしてゲームのガイル・ルートでは悪役令嬢だった。
でも今のソフィはすてきな女性で、私の親友のひとりでもある。
ソフィとガイルは学園入学前から婚約者だったが、最初は疎遠な関係だった。
ガイルが更生して以来、互いに歩み寄る姿勢を見せて、今では仲良しカップルだ。
私が『お見合いの世話焼きおばさん』的な役割を買って出て、ふたりの仲を取り持ってあげたのも懐かしい思い出である。
「ソフィか? もちろん元気だよ。ミレーユに会いたがってたから、今度顔見せてやってくれ」
「ええ。ちょうど再来週、学生時代の仲良し4人組でお茶会をすることになったの! ソフィに会うのが今から楽しみで!」
私の声は、自然と弾んでいた。
「ガイル。仕事が忙しくても、ちゃんとソフィのこと気遣ってあげなきゃだめよ。あんたはいろいろ雑だから、ソフィを寂しがらせないように。ソフィはしっかり者に見えて、意外と甘えん坊なんだから。女性をリードするのは王国紳士の嗜みですからね!」
「……うるせぇな、お前は俺の母親かよ。いちいち言われなくても分かってるって」
「ならいいけど」
肩をすくめて私が笑うと、ガイルもつられて笑っていた。
「さて。せっかくだから私も、帰る前にちょっとだけ練習していこうかしら。数ヶ月ぶりだからかなり鈍ってると思うけれど」
「お前もともと下手くそだからなー」
「ヘタでも楽しくやればいいのよ」
私がいそいそと自主練を始めるのを、ガイルはベンチに腰掛けて眺めていた。
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(ノエル視点)
ミレーぅがペタンクの練習してるのを、ノエルはベンチに座って応援してた。
となりには、さっき戦ったガイルも座ってる。
……むぅ?
ガイルが、やたら熱心にミレーぅのことを見ている。
なんか気になったから、ノエルはこいつのココロを読むことにした。
じぃ――。
……………………がーんっ!
「お、お前、ミレーぅに片思い!?」
ガイルが『ミレーユ、お前のことが好きだった』って思ってるの聞こえちゃって、ノエルはドン引きした。
これはやばい。
すきゃんだるだ。
ミラぅドに
「は? 何言ってんだよ、お前」
ガイルがちょっと顔を赤くして、眉毛の間にしわを寄せた。
ガイルのやつ、意外とおちついている。
「俺はミレーユのことは、何とも思ってない。……不良だった俺を叩き直してくれた恩はあるけど、それだけだ。そもそも俺には婚約者がいる。ったく、ガキのくせにマセた勘違いするなっての」
ガイルのココロの声、ふたたび聞こえてきた。
〝……鋭いガキだな。終わった初恋の思い出に浸るくらい、俺の勝手じゃねえか。こじらせたりしねぇよ。俺はルヴェイユ家の跡取りだし、今はソフィが誰より大事だ〟
と、言ってた。
……むぅ。
ミラぅドに
でもガイル、『終わった』って言ってたし。
ガイルが
ぽん。と、ガイルの背中を叩いてノエルは言った。
「ふっ。ノエルだけのヒミツにしてやる」
「ヘンなガキだな、お前」
ニンゲンっていろいろ複雑なんだなぁ。って、ノエルは思った。
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