第70話 ハーレムエンド?

「ぐはっ! クソッ……≪隷属≫」


 リアと二人でアルフを攻撃し続け、魔法を使う素振りを見せたら、即座にリアを抱きしめる。

 アルフが攻撃魔法を使えない事は分かっているので、俺がリアを庇う事で隷属魔法を無効化し、効果が消えたところで、再び攻撃を再開していく。

 その結果、


「ぐあぁぁぁっ! 何故だ! 俺様がアルフ・バッテンで、邪神様のお力を取り込んだのに……」


 リアと同時に放った回し蹴りで、アルフが吹き飛び、その身体が消えていく。

 そこには、あの黒い何かも残っておらず、邪神の力を取り込んだアルフの思念体? みたいなものが消滅した際に、一緒に消えたようだ。

 TEでも魔王を倒した後に、この邪神みたいなものは残っていなかったので、結果的に倒し方は正解だったらしい。


「リア……ありがとう。リアが助けてくれなかったら、俺は今頃消滅していたよ」

「アルフィ様をお助けする事が出来て、本当に嬉しいです」


 リアに心の底から感謝していると、


「あれ? 私は一体……アルフ様。邪神はどうなったのですか?」

「イザベラ! それにヘレナやティナたちも!


 倒れていた女性たちが全員起き上がる。

 だが、アルフが消滅し、隷属魔法が変に作用したからなのだろうか。

 イザベラ、ヘレナ、ティナ、ユーリアの四人は、記憶があいまいなようで、混乱している。

 その中で……突然ヴィクトリアが頭を下げた。


「アルフ様。誠に申し訳ございません。私は一部始終を見ていたのに、恐怖で何も出来ませんでした」

「え? 何の話だ?」

「アルフ様が邪神に魔法を放った際、魔力が邪神に触れた為でしょう。邪神からアルフ様にとてつもなく暗い魔力が流れ込み……その直後、人が変わったように、アルフ様が邪悪な笑みを浮かべておりました」

「そ、そうなのか」

「はい。それを見て、私はアルフ様が邪神に身体を乗っ取られたのだと思い、イザベラ様達が邪神の命で倒れた際に、私も動きを真似て倒れて……も、申し訳ありません!」


 これは……そうか。この中でヴィクトリアだけは隷属状態じゃなかったのか。

 だから、アルフが指示を出しても、ヴィクトリアには効くはずもなかったという訳だ。


「いや、あの状況なら仕方がないだろう。それに、全員無事だったんだから、それで良いじゃないか」

「ですが……」

「そんな事より、皆体調などは大丈夫か? おかしいと思うような事はないか?」


 アルフと俺と、二重の隷属状態になっていた訳だし、変な事になっていないか心配したのだが、


「私は大丈夫です。というより、何か頭の中を覆っていた靄のような物が消えた感じがします」

「あ、それは私も! 何だったのでしょうか」

「うーん。じゃあ、ちょっと診てみようか。奴隷鑑定……あれ?」


 本来ならば、TEのステータス画面が表示され、状態などが表示されるはずなのだが、イザベラとヘレナに使ってみたのに、何も表示されない。

 というか、遠い所に居る奴隷確認魔法も発動せず……もしかしてアルフの意識と一緒に、この身体の中から外道魔法のスキルが一緒に出ていってしまったのだろうか。

 つまり俺は、もう外道魔法は使えず、かつイザベラたちも隷属状態から解放されているという事か?


「そうだ、イザベラ……いや、ここに居る殆どの者がそうなのだが、俺は俺の保身や利益の為、皆に隷属魔法を掛けて奴隷状態にしていたんだ。本当に申し訳ない」


 そう言って、深々と頭を下げる。

 特にイザベラは、俺ではなくアルフに隷属魔法を掛けられ、ほぼ誘拐されたようなものなので、本当に申し訳ないと思う。


「待ってください。奴隷状態……と言いながら、少なくとも私はそのような酷い扱いを受けた事はないですよ?」

「そうです。それに私は、アルフ様と一緒に居て幸せでしたよ? あのように、領民を平等に扱ってくださる領主様なんて、今まで見た事もありません」

「私もソニアを助けてもらったし、奴隷だなんて感じた事はないし……あと、未来の旦那様だし」


 イザベラ、ヘレナ、ティナがそれぞれ許してくれたのだが、一人……いや、一人を除いてピクンと身体を震わせる。


「アルフィ様。そちらの方が旦那様と申されておりましたが、どういう事でしょうか?」

「ティナ殿。アルフ様は私と結婚するのだが?」

「皆さん、落ち着いてください。ここは聖女である私がアルフ様と結婚すべきだと思います」


 いやあの、リアもイザベラもヘレナも、何を言っているんだ?


「アルフ様! 私はバッテン領とウースラ領をより強固な関係にするため、婚姻関係になった方が良いと考えています」

「アルフさん。世界を救ってくださった貴方と、種族と国を超えて友好を結ぶべきだと決めました。ドワーフの国の王族となってください。私の夫となって」


 あの、ヴィクトリアもユーリアも、話がぶっ飛びすぎていないか?


「アルフィ様! 私との結婚を賭けて、父と戦ってくださる約束をしておりましたよね? さぁ今すぐ行きましょう! すぐそこです!」

「リア!? 確かにお父さんと模擬戦をする約束はしたけど、結婚って何の話だ!?」

「獣人族の掟です! 花婿は花嫁の父親に戦って花嫁を勝ち取るんです! さぁ、父から私を勝ち取ってください! アルフィ様なら楽勝です!」


 リアが獣人族の身体能力で俺を抱きかかえ、村に向かってダッシュ……いやあの、リア!? 後ろからイザベラたちが凄い形相で追いかけてくるんだが……とりあえず、全員落ち着いて話し合おう!

 この状況は、TEでラスボス撃破までに複数の女性と親密度を上げ過ぎた、ハーレムエンド……別名クズ男エンドじゃないか! あれは一国の王子だからこそ許されるわけで、ただの一領主だと女難って言わないか?

 慕ってくれるのは嬉しいが……まずは全員冷静になってくれぇぇぇっ!

 俺は悪役領主だったはずなのに、世界を救い、外道魔法も使えなくなって、どういう訳かヒロインたちにも好かれて……いつの間にか主人公にクラスチェンジしていました。



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外道魔法の邪道使い。ゲームの世界に転生したら、嫌われキャラ第一位の裏ボスだった。外道魔法しか使えないけど、モブ生活を目指して人助けを続けていたら、悪役領主からハーレム主人公にクラスチェンジしていました 向原 行人 @parato

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